お子さまが学校でいじめや事故の被害にあってしまったとき、実は、自動車保険や火災保険などに付帯されている「弁護士費用特約」を利用できる場合があります。
ただし、すべての学校トラブルが対象になるわけではありません。いじめや学校事故でも利用できるケースがある一方、保険会社や特約の内容によっては補償の対象外となることがあります。
本コラムでは、学校でのいじめや事故で弁護士費用特約が利用できるケース・利用できないケース、特約を使うための手順、弁護士に依頼するメリットまで、ベリーベスト法律事務所 学校問題専門チームの弁護士が解説します。
学校でのいじめや事故でも弁護士費用特約を利用できるケースがあります。ただし、補償の対象となるトラブルや利用条件は、保険会社や契約内容によって異なります。
本章では、弁護士費用特約の基本と、学校トラブルで利用できるケース・利用できないケースを紹介します。
弁護士費用特約とは、トラブルの解決を弁護士に依頼した際の法律相談費用や弁護士費用などを、保険会社が一定額まで補償してくれる特約です。
弁護士費用特約というと自動車保険の特約としてのイメージがあるかもしれません。しかし、商品によっては、学校でのいじめや事故が対象となるものがあります。
実際に、東京海上日動が販売する保険商品「超保険」では、令和4年(2022年)1月以降の契約から、弁護士費用特約の補償対象に「いじめや嫌がらせにより精神的苦痛を受けた場合」が追加されました。
この補償を受けるには、警察へ提出した被害届などにより被害の事実を客観的に証明できることが条件とされていますが、学校でのいじめについても、契約内容や事実確認の状況によっては弁護士費用特約を利用できる可能性があります。
学校トラブルで弁護士費用特約を利用できる可能性がある、具体的なケースは以下のとおりです。
弁護士が間に入ることで、加害者側との示談交渉、損害賠償請求などを法的な根拠に基づいて進めやすくなります。
たとえ学校で起きた問題であっても、すべてのケースで弁護士費用特約を利用できるわけではありません。
たとえば、次のような場合は補償の対象外となることがあります。
利用できるかどうかは、加入している保険の約款や補償内容によって異なります。「弁護士費用特約が付いているから使えるはず」と自己判断せず、不明な点は保険会社へ確認しておくと安心です。
前述の通り、学校トラブルに対応できる弁護士費用特約は、保険会社によって補償範囲や対象となる事故・トラブルが異なります。まずは保険証券や契約内容を確認し、学校でのいじめや事故が対象となるかをチェックしてみましょう。
主な保険会社の商品について、以下の一覧表にまとめました。
加入している保険と見比べながら参考にしてください。
【いじめ解決に向けた弁護士費用を補償する保険や特約】
| 保険会社・商品名 | 申し込み・付帯状況など | 補償対象 | 詳しい補償内容 |
|---|---|---|---|
| 総合保険(超保険)弁護士費用特約 東京海上日動「超保険」(弁護士費用特約 〈人格権型〉)など |
個人加入 ※既存保険の特約として付帯していることがある |
弁護士費用 | いじめや嫌がらせにより精神的苦痛を受けた場合の弁護士費用・法律相談費用を補償 補償限度額:300万円まで ※警察への被害届など、客観的な証明が必要 |
| 火災保険 一般弁護士費用特約 損保ジャパン「個人用火災総合保険」など |
弁護士費用 ※火災保険の弁護士費用特約は各社で適用範囲が異なるため要確認 |
日常生活で起こる被害事故や人格権侵害に関する紛争による弁護士用を補償 例:子どもが隣の席のクラスメートからいじめにあい、登校拒否の状態になり、精神的苦痛を受けた 弁護士費用:300万円まで 法律相談費用:10万円まで |
|
| 損保ジャパン 「THE カラダの保険」 |
個人加入 | 弁護士費用 | いじめや嫌がらせ、SNS上の誹謗中傷などの人格権侵害に関するトラブルによる弁護士費用を補償 弁護士費用:300万円まで 法律相談・書類作成費用:10万円まで ※警察や学校などへの届け出により、客観的な証明が必要 |
| 東京海上日動 弁護士費用等補償特約(人格権侵害等)+ トラブル対策費用補償特約 |
学校・PTA経由の団体保険 ※加入は任意のため要確認 |
弁護士費用 いじめや嫌がらせなどにより精神的苦痛を受けた場合の弁護士費用を補償(弁護士費用等補償特約) |
弁護士費用:1事故あたり300万円まで 対策費用(トラブル対策費用補償特約、防犯対策・転校・カウンセリング費用など):1事故あたり20万円まで(弁護士費用等補償特約とセットで契約) |
| イオンの子どもあんしん保険 | イオンカード会員限定の団体保険 | 弁護士費用 対策費用など |
いじめ等の被害を解決するために必要な弁護士費用・法律相談費用を補償(弁護士費用等補償特約) 弁護士費用:1事故あたり300万円まで/対策費用(トラブル対策費用補償特約、防犯対策・転校・カウンセリング費用など):1事故あたり20万円まで(セット加入) |
| まごころ少額短期保険 「不登校?その前に保険」 |
個人申し込み(ウェブのみ) | 弁護士費用 カウンセリング費用 転校費用など |
いじめなどの不登校の相談や解決に要した弁護士費用の補償 弁護士費用:200万円まで 相談費用:10万円まで |
学校管理下で起きたケガや死亡事故などについては、医療費や見舞金などが給付される公的制度・保険があります。弁護士費用そのものを補償するものではありませんが、万が一に備え、知っておくとよいでしょう。
【学校事故】
| 保険会社・商品名 | 申し込み・付帯状況など | 補償対象 | 詳しい補償内容 |
|---|---|---|---|
| 独立行政法人 日本スポーツ振興センター(JSC) 災害共済給付制度 |
学校・団体経由で加入 ※加入は任意のため要確認 |
学校の管理下でのケガ・死亡など | 医療費、障害見舞金、死亡見舞金が支給 |
| 三井住友海上火災保険 レクリエーション傷害補償プラン |
学校・団体経由で加入 ※加入は任意のため要確認 |
学校行事・通学傷害(熱中症特約等)など | 死亡保険金、後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金が支給 |
なお、いずれも令和8年7月時点の情報です。最新の情報は、各サイトなどをご確認ください。
弁護士費用特約を利用するには、弁護士へ相談する前に確認すべき事項があります。
手続きを間違えると、補償を受けられなくなる可能性もあるため注意が必要です。ここでは、特約をスムーズに利用するための流れを3つのステップに分けてご紹介します。
最初に確認したいのは、ご自身やご家族が加入している保険に弁護士費用特約が付いているかどうかです。
保険証券や契約内容が記載された書類、保険会社のマイページなどを開き、「補償内容」「特約一覧」といった項目を確認しましょう。
「弁護士費用特約」「弁護士費用補償特約」「日常生活弁護士費用特約」などの名称が記載されていれば、利用できる可能性があります。
あわせて、次のような点もチェックしておくと安心です。
保険証券だけでは分からない場合は、保険会社や保険代理店へ問い合わせれば確認できます。
また、自分名義の保険だけでなく、同居している家族が契約している保険で利用できるケースもあるため、あわせて確認するとよいでしょう。
弁護士へ正式に相談・依頼する前に、保険会社へ弁護士費用特約を利用したいことを連絡します。
その際は、以下のポイントをメモしてから問い合わせするとスムーズに相談できるでしょう。
弁護士費用特約などを利用できる場合は、保険会社から、必要な手続きや提出書類について案内を受けられます。
なお、特約の内容によっては、弁護士へ依頼する前に保険会社の承認が必要な場合もあります。自己判断で進めるのではなく、まずは保険会社へ相談しておくと安心です。
弁護士へ相談する際は、弁護士費用特約を利用したいことを最初に伝えましょう。
保険会社への連絡方法や必要書類、費用の請求手続きなどについて案内を受けられるため、その後の手続きをスムーズに進めやすくなります。
また、学校トラブルでは、「学校との話し合いを優先したい」「まずは環境改善を求めたい」「慰謝料請求まで考えている」など、ご家庭によって希望する解決方法はさまざまです。
初回相談では、お子さまの状況や今後どのような解決を目指したいのかも、できるだけ詳しく伝えることをおすすめします。
弁護士が状況を整理したうえで、適切な対応方法を提案することが可能です。
学校でトラブルが起きた場合、「まずは学校に任せよう」と考える保護者の方も多いでしょう。
もちろん、学校が適切に対応してくれるケースもあります。しかし、対応が進まなかったり、学校と保護者の認識が食い違ったりすることも少なくありません。
そのようなときは、弁護士に今後の対応についてのアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。
弁護士費用特約を利用できる場合は、補償限度額の範囲内で法律相談費用や弁護士費用が保険会社から支払われるため、自己負担を抑えて相談や依頼がしやすくなります。
「費用が心配で相談をためらっていた」という方でも、特約を利用できれば早い段階で専門家のアドバイスを受けられるでしょう。
学校トラブルでは、初期対応がその後の解決に大きく影響することもあります。費用面の不安が軽減されることで、必要なタイミングで弁護士へ相談しやすくなる点は大きなメリットです。
保護者自身が学校や加害者側と話し合いを続けることは、大きな精神的負担になります。
何度も学校へ足を運んだり、感情的なやり取りになったりすると、お子さまを支えることにも影響が出かねません。
弁護士へ依頼すれば、学校や加害者側との交渉を任せることができます。対応の仕方は一律ではなく、弁護士が前面に立って交渉する場合もあれば、学校生活を継続しやすいよう、保護者の後方で交渉方法のアドバイスを行う形で進める場合もあります。
保護者の意向を踏まえながら必要な主張を整理し、法的な根拠に基づいて話し合いを進めるため、状況に応じた解決が期待できます。
いじめや事故によって損害が生じた場合には、学校や加害者側に対する慰謝料などの損害賠償請求を行う場合があります。
しかし、どのように損害賠償請求をするべきか、請求する金額はどうすればいいのか、判断に迷う場合も多いといえます。
弁護士は、法律、裁判例などの根拠に基づいて、適切な損害額を算定し、賠償請求を行うことができます。
学校トラブルへの対応が長引くと、保護者の負担が大きくなるものです。
学校との連絡や資料の整理、交渉などを保護者の方だけで続けていると、大きな負担により、泣き寝入りせざる得ないケースは少なくありません。
弁護士が対応をサポートすることで、保護者は交渉や法的な手続きを任せながら、お子さまの心のケアや日常生活のフォローに時間を使うことができます。
問題の解決だけでなく、お子さまが安心して学校生活を送れる環境を整えるためにも、保護者が冷静に対応できる状況をつくることは大切です。
学校でのいじめや事故は、時間がたつほど解決が難しくなることがあります。
「学校が対応してくれるはず」と様子を見ることも大切ですが、改善が見られない場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
学校問題についての知見が豊富な弁護士であれば、学校の対応に問題がないかを法的な観点から整理したうえで、状況に応じた対応方法を提案できます。学校への環境改善の申し入れを行うべきか、加害者側との交渉を進めるべきか、慰謝料請求が可能かなど、ひとつひとつ見通しを示しながらサポートできるのが強みです。
また、弁護士費用特約を利用できる場合は、費用面を過度に心配する必要はありません。まずは特約が利用できるかを確認し、できるだけ早い段階で相談することが、お子さまにとってより良い解決につながるでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、学校問題専門チームの弁護士がサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
参考
最後に、保護者の方から特によく寄せられる質問とその回答をご紹介します。利用前に気になるポイントを確認しておきましょう。
利用できる可能性があります。
加害者が特定できていなくても、学校への対応の求め方や事実確認の進め方について弁護士へ相談できる場合があります。ただし、補償の対象となるかは保険商品によって異なるため、事前に保険会社へ確認しましょう。
使える場合があります。
弁護士費用特約は、契約者本人だけでなく、配偶者や同居の親族、別居している未婚の子どもなども補償対象となる商品があります。保護者の自動車保険や火災保険に付帯されている特約が利用できるケースもあるため、一度契約内容を確認してみましょう。
ほとんどの商品が法律相談のみでも利用できます。
相談料が補償の対象となっていれば、「まずは話を聞いてみたい」という段階でも特約を利用できます。ただし、補償回数や上限額が定められていることがあるため、利用前に約款や保険証券で確認しておくとよいでしょう。
保険会社や商品によって異なりますが、多くの弁護士費用特約では、法律相談費用が10万円程度まで、弁護士費用は300万円程度まで補償されるケースが一般的です。
実際の補償額や対象となる費用は契約内容によって異なるため、保険証券や約款で確認してください。
加入している保険の内容によっては、PTA保険と個人で加入している保険のどちらも利用できる場合があります。
ただし、同じ費用について重複して請求することはできません。補償の範囲や支払い方法は保険会社ごとに異なるため、自己判断せず、それぞれの保険会社に問い合わせておくと、あとからのトラブルを防げます。
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
米澤 弘文
所属:東京弁護士会 登録番号:53503
学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。
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