学校事故の弁護士コラム

特別支援学校での事故やケガにおける学校側の責任とは?

  • 学校事故
2024年04月22日
特別支援学校での事故やケガにおける学校側の責任とは?

学校で発生した事故について、被害者は学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

特別支援学校では、学校側において児童・生徒の特性に合わせた安全への配慮が求められます。学校側が配慮を怠ったと認められる事情があれば、損害賠償を請求できる可能性が高いです。適正な損害賠償を受けるためには、弁護士へのご相談をおすすめします。

本コラムでは、特別支援学校における事故について学校側が負う法的責任や、学校側の責任が認められた裁判例などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、学校事故について学校側が負う法的責任

一般に、学校でケガや死亡事故に遭った場合、被害者は学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

学校事故に関する損害賠償請求の法的根拠や相手方は、国公立学校と私立学校で異なります。

  1. (1)国公立学校における学校事故の法的責任

    国公立学校における学校事故については、教職員などの公務員に故意または過失が認められる場合に、学校の設置者である国または地方公共団体の国家賠償責任を追及できます(国家賠償法第1条第1項)。
    また、学校設備の設置・管理に瑕疵(かし)があった場合には、公務員の故意または過失の有無にかかわらず、設置者の国家賠償責任を追及可能です(同条第2項)。

    その一方で、学校事故について故意または過失が認められる教職員本人に対しては、不法行為等に基づく損害賠償を請求できません。国家賠償法の解釈上、被害者による公務員個人への責任追及は否定されているためです。

  2. (2)私立学校における学校事故の法的責任

    私立学校における学校事故については、教職員などの故意または過失による場合は使用者責任(民法第715条第1項)、工作物の設置・保存の瑕疵が原因である場合は工作物責任(民法第717条第1項)を、それぞれ学校の設置者(学校法人など)に対して請求できます

    また、学校事故について故意または過失がある教職員に対しても、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求が可能です。
    教職員個人と学校の設置者は、連帯して被害者の損害を賠償する義務を負います(民法第719条第1項)。

2、特別支援学校における事故の発生状況・学校側に求められる配慮

特別支援学校における事故についても、小学校・中学校・高等学校などにおける事故と同様に、被害者は学校側に対して損害賠償を請求できることがあります。
特に特別支援学校では、児童・生徒の特性に合わせた安全上の配慮が学校側に求められるため、もし事故が発生すれば学校側の責任を追及できる可能性が高いでしょう。

  1. (1)特別支援学校における事故の発生状況

    日本スポーツ振興センターが公表している資料によると、令和3年度(2021年度)の特別支援学校における死亡見舞金・障害見舞金・歯牙欠損見舞金の給付件数は、それぞれ以下のとおりでした。


    死亡見舞金 3件
    ※小学部1件、高等部2件
    害見舞金 7件
    ※小学部1件、中学部1件、高等部5件
    歯牙欠損見舞金 2件
    ※中学部2件

    参考:「学校生活における事故防止の留意点」p223(日本スポーツ振興センター)

    前年度比で死亡見舞金は1件増加、障害見舞金は4件増加となっており、特別支援学校における重大事故の発生件数が増えていることが分かります。

  2. (2)特別支援学校における事故防止について、学校側に求められる配慮

    特別支援学校に通う児童・生徒は、何らかの障害を有しているため、危険を回避する能力が低いこともあり、また、障害の内容や特性も個々に異なります。そのため学校側においては、事故を防止して安全を確保すべく、個々の児童・生徒の特性に合わせた配慮を行わなければなりません。

    障害のある児童・生徒には、以下のような特性が見られる場合があります。
    学校側は一人一人の児童・生徒の特性を踏まえたうえで、十分に安全確保の行動がとれるようにサポートすることが求められます

    (例)
    • 自分から意思を伝えることが難しい
    • 危険を適切に認知することが難しい
    • 臨機応変な対応が難しい
    • 日常生活における基本的な動作が困難
    • 発作や周期的な変調などがある
    • 情報や言葉の理解、コミュニケーションが苦手
    など

3、特別支援学校における事故で、学校側の責任が認められた裁判例

特別支援学校で発生した事故について、学校側の責任が認められた裁判事例を2つ紹介します。


  1. (1)静岡地裁沼津支部令和3年5月26日判決

    特別支援学校中等部の男子生徒が、学校での歩行訓練中に意識を失って心肺停止となり、低酸素脳症を発症して遷延性意識障害等の後遺障害が生じた事案です。

    裁判所は、生徒が教室のマットに寝かせられた時点で、母親や養護教諭の呼び掛けなどに応答しなかったことを指摘しました。そのうえで、養護教諭において救急車を要請し、AEDを手配する義務があったこと、および養護教諭がその義務を怠った過失を認定しました。

    そして裁判所は、養護教諭が生徒に対して心肺蘇生法を実施し、AEDの使用を準備していれば、生徒には重大な後遺障害が残らなかった高度の蓋然(がいぜん)性があると判示し、学校側に対して7900万円余りの損害賠償を命じました

  2. (2)福岡高裁令和2年7月6日判決

    先天性の脳性まひを患っていた特別支援学校の生徒が、給食介助中の誤嚥(ごえん)によって窒息状態に陥り、低酸素脳症に由来する重篤な脳障害が残った事案です。

    裁判所は、看護師による医療的ケアを適切に実施していれば、生徒の誤嚥窒息を回避し得た蓋然性が高いと指摘しました。
    そのうえで、生徒の母に対して吸入を含む医療的ケアの必要性につき、適切な説明と情報提供を行わなかった学校側の過失を認定し、学校の設置者である市に対して総額3800万円余りの損害賠償を命じました

4、特別支援学校での事故やケガについては弁護士にご相談を

特別支援学校で発生した事故について、学校側への損害賠償を検討する場合には、弁護士へのご相談をおすすめします。

学校事故について、弁護士による主なサポートの内容は以下のとおりです。

① 事故原因の調査・証拠収集
学校側への働きかけや独自の調査などを通じて、学校事故の発生原因を調査し、損害賠償請求などに必要となる証拠を収集します。

② 損害賠償請求
損害賠償請求の手続きを、弁護士が全面的に代行します。
学校側との交渉や、訴訟などの法的手続きへの対応を弁護士に一任できるので、時間・労力・ストレスが大幅に軽減されます。また、弁護士が法的根拠に基づいた請求を行うことで、適正額の損害賠償を得られる可能性が高まります。

③ 再発防止策の協議
弁護士が学校側との間で再発防止策を協議し、事故調査委員会が設置されている場合には出席して意見を述べるなど、被害児童・生徒が安心して学校に復帰できるような環境の整備をサポートいたします。

④ 教育委員会への連絡
学校において適切な対応をしてもらえない場合には、状況に応じて教育委員会にも事故の状況を連絡し、必要な指導を求めます。

弁護士のサポートを受けることで、納得できる形で学校事故のトラブルを解決できる可能性が高まります。特別支援学校に通う子どもが学校で事故に遭ってしまった場合には、お早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

特別支援学校に通う児童・生徒について、学校側は学校生活における安全を確保するため、児童・生徒に合わせた配慮を行うことが求められます。

学校側が安全配慮義務を怠った結果、児童・生徒が事故に巻き込まれた場合、被害者やご家族は学校側に損害賠償を請求できる可能性があります
適正額の損害賠償を受けるためには、弁護士のサポートを受けることが効果的です。法的な根拠に基づく請求ができるほか、必要な手続き・対応を弁護士に一任できるため、被害者やご家族の負担は大幅に軽減されます。

ベリーベスト法律事務所は、学校事故に関するご相談を受け付けております。損害賠償請求や再発防止策の要請などを、経験豊富な弁護士がサポートいたします。特別支援学校における学校事故の損害賠償請求などについては、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-666-694
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL https://www.vbest.jp/
  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

学校事故のコラム

学校での問題・トラブルの
法律相談予約はこちら

無料
通話
0120-666-694
平日9:30〜21:00
土日祝9:30〜18:00
無料
通話
0120-666-694
平日9:30〜21:00 / 土日祝9:30〜18:00