いじめの弁護士コラム

いじめは刑法上の「犯罪」にあたる? いじめを受けた場合の対応方法

  • いじめ
2024年04月25日
いじめは刑法上の「犯罪」にあたる? いじめを受けた場合の対応方法

「いじめ」というと悪ふざけのようなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、いじめの内容によっては、刑法上の犯罪にあたる可能性もあります。

いじめを受けた子どもは、身体的にも精神的にも大きなダメージを受けますので、子どもがいじめの被害を受けている場合には早期に適切な対応をとる必要があります。

本コラムでは、刑法上の犯罪にあたる可能性のあるいじめの例、子どもがいじめを受けていることがわかった場合の対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、いじめは犯罪になる?

いじめは、刑法上の犯罪にあたることはあるのでしょうか。

  1. (1)いじめは刑法上の犯罪行為に該当する可能性もある

    学校は、子ども同士が共同で生活を送っていく場所ですので、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。その中でもいじめは、自殺者を出すなど大きな社会問題になっています。

    加害者は軽い気持ちでやっていたことでも、被害者は心に大きな傷を負ってしまいます。このようないじめは、道徳的・倫理的に問題がある行為にあたるのはもちろんのこと、いじめの内容によっては、刑法上の犯罪に該当する可能性もあります

  2. (2)いじめにより成立する可能性のある犯罪行為

    以下では、いじめにより成立する可能性のある代表的な犯罪行為と具体的ないじめ行為を紹介します。

    ① 暴行・傷害罪
    暴行罪とは、他人に暴行を加えた場合に成立する犯罪で(刑法208条)、傷害罪は、他人の身体を傷害した場合に成立する犯罪です(刑法204条)。
    たとえば、同級生の腹を繰り返し殴ったり、蹴ったりすれば暴行罪が成立し、顔を殴りあごの骨を折るといったケガを負わせた場合には傷害罪が成立します。

    ② 強要罪
    強要罪とは、暴行または脅迫を手段として、他人に義務のないことを行わせた場合に成立する犯罪です(刑法223条)。
    たとえば、断れば危害を加えると脅して、口に汚物を入れたり、お店から商品を万引きさせたりした場合には強要罪が成立します。

    ③ 恐喝罪
    恐喝罪とは、暴行または脅迫を手段として、他人に財物を交付させた場合に成立する犯罪です(刑法249条)。
    たとえば、暴行などを加えたうえで現金を巻き上げるという、いわゆる「カツアゲ」をした場合には恐喝罪が成立します。

    ④ 脅迫罪
    脅迫罪とは、生命・身体・自由・名誉・財産に対して、害を加える旨を告知して脅迫した場合に成立する犯罪です(刑法222条)。
    たとえば、「殴るぞ」、「恥ずかしい秘密をばらす」などと脅した場合には脅迫罪が成立します。

    ⑤ 名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪
    名誉毀損罪とは、不特定または多数人が認識できる状況で、他人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です(刑法230条)。たとえば、同級生が見ているところで「あいつは万引きをした」などと言った場合には、名誉毀損罪が成立します。なお名誉毀損罪では、摘示した内容に関しての真偽は問いません。

    侮辱罪とは、事実を摘示せずに他人を侮辱した場合に成立する犯罪です(刑法231条)。名誉毀損罪との違いは、事実の摘示があるかどうかという点です。たとえば、同級生が見ているところで、「うざい」「気持ち悪い」などの悪口を言った場合には、侮辱罪が成立します。

    ⑥ 窃盗罪
    窃盗罪とは、他人の財物を窃取した場合に成立する犯罪です(刑法235条)。
    たとえば、同級生の財布から現金を抜き取るなどの行為をした場合には窃盗罪が成立します。

2、犯罪にあたらないいじめはあるのか? 学校側の責任は?

いじめがあった場合、そのすべてが犯罪になるとは限りません。以下では、犯罪にあたらないいじめといじめに関する学校側の責任について説明します。

  1. (1)犯罪にあたらないいじめ

    犯罪として処罰されるためには、刑法などの法律に定められた要件を満たす必要があります。そのため、以下のようないじめについては、犯罪には該当しません。

    • 無視する
    • 仲間外れにする
    • 陰口を言う
    • 嫌なことを押し付ける
    • 物を隠す

    しかし、刑法上の犯罪に該当しないいじめであっても、悪質ないじめであった場合には、不法行為が成立し、民事上の責任追及として、損害賠償請求を行うことができる可能性があります。

  2. (2)いじめがあった場合の学校側の責任

    いじめが犯罪にあたる場合には、いじめをした加害者は、刑事上の責任を負うことになりますまた、民事上の責任として損害賠償義務も負う可能性があります。

    このようないじめの民事上の責任は、いじめの加害者だけでなく、学校にも生じます。学校は、児童・生徒が心身ともに安全な状態で、安心して学習できる環境を整える義務があります。このような義務を「安全配慮義務」といいます。学校がいじめを認識していたにもかかわらず放置していたような場合には、安全配慮義務違反が認められますので、学校側も被害者に対して、損害賠償義務を負うことになります。

3、子どもがいじめられていた場合、どのように対応すべき?

子どもがいじめられていることが判明した場合、親としてはどのように対応したらよいのでしょうか。

  1. (1)子どもの話をしっかり聞く

    子どもがいじめられていることがわかった場合、何とかしてあげたいという思いから、すぐにでも学校に押しかけようとするケースも少なくありません。しかし、子どもの気持ちを無視して、親が先走ってしまうのは適切な対応とはいえません

    いじめにより一番傷ついているのは、子ども自身ですので、まずは子どもに寄り添って、しっかりと話を聞いてあげてください。いじめられた子どもは、どこにも居場所がないと感じることも多いため、親が味方だということ、自宅が安心して生活できる場所であることを伝えてあげるようにしましょう。

  2. (2)いじめの証拠を集める

    子どもがいじめられていると学校に伝えても、十分な証拠がなければ、学校側がすぐに動いてくれない可能性もあります。そのため、子どもがいじめられていることがわかったら、子どもの話を聞きながら、いじめの証拠になりそうなものを集めておくようにしましょう。たとえば、壊されたり汚されたりした物、子どもの日記、ケガの写真や医師の診断書、SNS上のいじめの場合には画面のスクリーンショットなどが証拠となります。

  3. (3)学校に相談する

    学校で起きたいじめに対しての具体的な対応や今後の対策などは、学校側に行ってもらう必要があります。そのため、学校側にいじめがあったことを相談して、今後の対応について協議していくようにしましょう。
    学校側がいじめ問題に真剣に取り組んでくれないという場合には、国公立学校の場合には市町村または都道府県の教育委員会に、私立学校の場合には各都道府県に設置されている私立学校主管部課に相談するというのも有効な手段となります。
    またそのような場合、弁護士への相談も有効です。弁護士から学校側に対していじめの調査などを働きかけることで、学校側が動いてくれる可能性が高まります。

  4. (4)子どもの学習機会を確保する

    いじめにより子どもが心に大きな傷を負った場合、登校が難しい状況になることもあります。そのような状況においては学習の遅れも出てきてしまいますので、学校と協力しながら学習機会を確保することが大切です。
    無理に学校に行かせるのではなく、自宅での学習など子どもが負担にならない範囲で学習機会の確保を進めていくとよいでしょう。

  5. (5)いじめが犯罪にあたる場合には被害届の提出や刑事告訴も検討する

    いじめ問題は、基本的には学校側との話し合いにより解決を図ることになります。しかし、犯罪行為に該当するような悪質ないじめがあった場合には、被害届の提出や刑事告訴も検討する必要があります。

4、いじめ問題を弁護士に相談することのメリット

学校での子どものいじめ問題は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)状況に応じて法的に最適な解決方法を検討・提案できる

    いじめの被害にあった場合には、いじめの加害者や学校側に対して、法的責任を追及できる可能性があります。どのような責任追及が可能であるかは、具体的な状況によって異なりますので、まずは弁護士に相談してみることがおすすめです。

  2. (2)代理人として学校や相手方との交渉ができる

    学校側と協議してもいじめの調査や対策に真剣に取り組んでくれないという場合には、学校側との交渉を弁護士に依頼することも有効な手段となります。
    いじめ問題に詳しい弁護士であれば、状況に応じたさまざまな解決方法を熟知していますので、学校側と協議しながら、いじめ問題の解決に向けて取り組んでいくことが可能です。
    また、弁護士が窓口になると問題が大きくなるかもしれない、という心配があるという方は、後方支援という形で弁護士がアドバイス・サポートをすることも可能です。ひとりで対応をしなければならないのは、精神的にも大きな負担となりますが、弁護士が味方になってくれれば非常に心強いといえるでしょう。

  3. (3)損害賠償請求、被害届・告訴などの対応が可能

    加害者および学校側に対して損害賠償請求をする場合には、交渉や裁判などの対応が必要になります。また、刑法上の犯罪に該当するような悪質ないじめであった場合には、被害届の提出や刑事告訴なども検討しなければなりません。
    弁護士に依頼すれば、このような法的な対応についても行ってもらえますので、最後まで安心して対応を任せることができます。

5、まとめ

いじめの態様によっては、刑法上の犯罪行為に該当するものもあります。また、犯罪に該当しないものであったとしても、いじめの被害を受けた子どもは、心に大きな傷を負ってしまいますので、早期に適切な対応を行うことが大切です。

いじめ問題の解決にあたっては、弁護士への相談も有効な手段のひとつです。法的観点から適切な解決方法を検討いたします。いじめが刑法上の犯罪にあたる場合には、被害届の提出などが必要なケースもありますので、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
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  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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