スマートフォンやSNSが普及して以降、学校現場ではいじめの場面を撮影した動画(暴行動画など)の投稿によるトラブルがしばしばニュース等で報道されています。
いじめ動画の拡散は、加害者側が面白がって行うケースだけではなく、被害者が加害者への社会的制裁を目的に行うケースや、第三者が正義感からいじめの事実を知らしめようとして行うケースなど、さまざまな原因により発生します。しかしどのような理由であっても、いじめ動画の拡散は、刑事・民事上の法的責任を負うおそれがある行為です。
本記事ではいじめ動画によるトラブルについて、投稿・拡散した人が負う法的責任、子どもが当事者となった場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
学校現場でいじめ動画が拡散されるようになった大きな要因は、スマートフォンやSNSが幅広く普及したことです。
こども家庭庁が令和7年度に行った調査によれば、スマートフォンでのインターネット利用率は小学生で48.3%、中学生で84.8%、高校生で97.1%に上ります。
また、スマートフォンを用いてインターネットを利用している青少年(小学生・中学生・高校生)のうち、「LINE、Instagram、X、Facebook等のSNSでコミュニケーションをする」と回答した人は87.4%に上り、増加傾向にあります。
参考:「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」(こども家庭庁)
SNSの中には、過激で議論を呼ぶ動画が注目を集める仕組みになっているものもあります。そのため、注目が高まり「いいね」や拡散等の反応が急増する、いわゆる「バズる」ことを目標にSNS投稿を行う子どもも少なくありません。
いじめ動画は内容が過激であるため注目を集めやすく、「バズる」ための素材として悪用されるケースがあるようです。
他方で、いじめを把握していながら十分に対応しない学校側に対して不信感を抱いた児童・生徒が、正義感からいじめ動画を撮影してSNS上へ投稿するケースなども考えられます。
悪意はなくとも、いじめ動画は好奇の目を集めて拡散され、投稿者がコントロールできない事態に陥ってしまうおそれがあります。
いじめ動画を撮影・投稿した人は、名誉毀損罪によって処罰を受ける、または不法行為に基づく損害賠償責任を負うおそれがあります。
再投稿(リポストなど)によっていじめ動画を拡散しただけでも、損害賠償責任を負う可能性があるので十分ご注意ください。
「名誉毀損罪」は、他人の社会的評価を下げるような言動をした場合に成立する犯罪です(刑法第230条第1項)。名誉毀損罪に当たる行為をすると「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処されます。
いじめ動画の投稿は、主にいじめ加害者の社会的評価を下げる行為に当たるほか、動画の内容によってはいじめ被害者の社会的評価を下げる場合もあるため、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
名誉毀損罪は、投稿の内容が真実であり、かつ公共性・公益性が認められる場合には、成立しません(刑法第230条の2第1項)。
しかし、いじめの加害者に対する責任追及は、学校による処分や刑事手続き、被害者による損害賠償請求などによって行われるべきです。動画を拡散して私的制裁(リンチ)を与えるような行為には、公益性は認められにくいと考えられます。
いじめ動画が拡散されると、いじめ加害者・被害者の学校生活や社会生活に支障が生じるおそれがあります。
いじめ動画の投稿が名誉毀損などの違法行為に当たる場合、投稿により損害を受けたいじめ加害者・被害者に対して、投稿者は不法行為に基づきその損害を賠償しなければなりません(民法第709条)。
損害賠償の額はケース・バイ・ケースですが、数十万円から100万円以上になる場合も考えられます。いじめ動画が広く拡散されて、加害者や被害者が甚大な損害を被った場合は、さらに高額な損害賠償が命じられる可能性があります。
いじめ動画を最初に投稿した人だけでなく、再投稿(リポストなど)によって拡散した人も、いじめ加害者や被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
いじめ動画の拡散に加担したことによって、損害を拡大させたと評価され得るからです。
また、引用リポストで被害者や加害者に対して侮辱するようなコメントをつけて再投稿した場合は、侮辱罪も成立する可能性があります(刑法第231条)。侮辱罪の法定刑は「1年以下の拘禁刑または30万以下の罰金」です。
SNSの再投稿はごく簡単な操作で行うことができるため、罪悪感を得にくい側面がありますが、本当に拡散やコメントをしてよいのかどうか立ち止まって考えることが大切です。
子どもがいじめ動画によるトラブルの当事者になってしまったら、本人の気持ちに寄り添いながら解決を目指しましょう。解決に当たっては、弁護士などの窓口へ早期に相談することをおすすめします。
子どもがいじめの被害を受け、さらに動画が拡散された場合、本人の精神的ダメージは計り知れません。
保護者の方は、子どもに寄り添いながら以下の対応を進めていきましょう。
わが子が他の児童・生徒をいじめている動画が拡散された場合、子どもがSNS上で激しいバッシングを受け、学校で孤立する可能性があります。
「あなたが悪い」と突き放さず、子どもとともに被害者への誠実な対応を行っていきましょう。
子どもがいじめ動画を投稿・拡散したことが分かったら、まずは落ち着いて状況を把握し、速やかに対応しましょう。
いじめ動画に関するトラブルの相談先としては、次の例が挙げられます。
まずは学校や自治体の窓口、警察に相談して対応を求めましょう。
しかし、十分な対応を行ってもらえないケースもあります。その場合は、早い段階で弁護士にご相談ください。
いじめ動画に関するトラブルを解決するため、弁護士は主に次のサポートを行っています。
いじめ動画に関するトラブルは、当事者が自力で解決するには規模が大きくなる可能性があります。学校側に対応を求めても、適切に対応してもらえるとは限りません。
早急にトラブルを解決するためには、弁護士のサポートが役立ちます。子どもがいじめ動画に関するトラブルの当事者になってしまったら、ベリーベスト法律事務所 学校問題専門チームの弁護士へご相談ください。
参考
暴行や侮辱などのいじめは古くから学校現場で問題視されていますが、近年ではいじめの場面を撮影した動画を拡散する行為も大きな問題となっています。
いじめ動画を投稿・拡散する動機としては、「バズりたい」「いじめの被害をたくさんの人に知ってほしい」などさまざまなパターンがあります。
しかしどのような動機であっても、いじめ動画を投稿・拡散すれば深刻なトラブルを招き、法的な責任を負う可能性があります。
もし子どもがいじめ動画の投稿や拡散を行っていたことが判明したら、速やかに動画の削除や再投稿の解除などを行わせましょう。
また、いじめの加害者・被害者を含めて、子どもがいじめ動画に関するトラブルの当事者になってしまったら、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は学校問題専門チームを設け、学校生活におけるトラブルの解決に取り組んでおります。インターネット上での違法投稿の削除請求を専門的に取り扱うチームとも連携し、いじめ動画に関するトラブルの早期解決をサポートいたします。
ぜひお早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
米澤 弘文
所属:東京弁護士会 登録番号:53503
学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。
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