SNSやLINE、オンラインゲームなどで起こる、ネットいじめの件数が右肩上がりで推移しています。
ネットいじめは、悪口や仲間外れだけでなく、画像や動画の拡散、裏アカウントでの誹謗中傷、なりすましなど、態様は多様です。また、拡散のスピードが速く、公開された情報がデジタルタトゥーとして残ってしまうなど、家庭や学校だけでは対応が難しいケースも少なくありません。
子どもがネットいじめに巻き込まれてしまったら、状況を整理して証拠を保存するなどの対応に加え、学校や弁護士など適切な窓口に相談することが大切です。ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
ネットいじめは、文部科学省の調査でも報告件数が増加し、法的トラブルに発展する例も見られます。まずは、ネットいじめが増加し続ける現状と、具体的なケース、裁判例をみていきましょう。
ネットいじめは、年々増加傾向にあります。
文部科学省が公表した資料によると、いじめの態様として「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」と回答した件数は、令和6年度で2万7635件に上り、10年前から増加し続け過去最多を更新しています。
ネットいじめの推移【平成27年度~令和6年度】
| 年度 | 件数 | 増加率 |
|---|---|---|
| 平成27年度 | 9187件 | ― |
| 平成28年度 | 1万779件 | +17.3% |
| 平成29年度 | 1万2632件 | +17.2% |
| 平成30年度 | 1万6334件 | +29.3% |
| 令和元年度 | 1万7924件 | +9.7% |
| 令和2年度 | 1万8870件 | +5.3% |
| 令和3年度 | 2万1900件 | +16.1% |
| 令和4年度 | 2万3920件 | +9.2% |
| 令和5年度 | 2万4678件 | +3.2% |
| 令和6年度 | 2万7635件 | +12.0% |
ネットいじめには複数の態様があります。代表的なものとして、以下のような行為が挙げられます。
加害者側が匿名性を利用したり、裏アカウントやクローズドなグループトークを使ったりすることで、大人や学校が介入しづらくなる傾向が強く、被害が長期化・悪質化する要因となっています。
ネットいじめの大きな問題は、学校生活の時間帯だけでなく、24時間、夜間や休日を問わず被害が広がり続けることです。
子どもにとっては安心できるはずの自宅でさえ、いじめ被害が続くことになり、ストレス・不安・睡眠不足などにつながります。
また、画像や動画はスクリーンショットや保存によって複製されやすく、拡散のスピードも速いため、完全な削除が困難です。また、一度拡散された情報は半永久的に残るおそれもあります。
加害行為に刑事責任や民事責任が伴うこともあります。お悩みの際は、早めに弁護士に相談しましょう。
大阪府内の市立中学校で、女子生徒がグループLINEのビデオ通話中に衣服を脱ぐよう強要され、その際の画像が、同学年約100人が参加する別のグループLINEに拡散されました。その後、生徒は不登校となり転校を余儀なくされています。
生徒と保護者は、同級生7人とその保護者12人に慰謝料など計440万円の損害賠償を求めて提訴しました。大阪地裁では同級生側が遺憾の意を示し、180万円を支払うことなどを内容とする和解が成立しました。和解条項には、画像データの削除も盛り込まれています。
この事案では、未成年同士のネットいじめでも、民事上の損害賠償責任が問われることが示されています。
ネットいじめは、放置すれば拡散や二次被害につながりやすい一方で、初期段階では保護者も状況を把握しづらいという課題があります。
以下では、発覚時に保護者が行うべき初動対応を紹介します。
ネットいじめの証拠は、投稿者や運営側によって削除されることがあります。
削除されると事実関係を立証しづらくなるため、まずは、スクリーンショットにより問題となった投稿やメッセージなどを記録しましょう。
一画面でおさまらない場合は、連続スクロールして動画で撮影することも考えられます。
このようなネットいじめの証拠は、後述する削除請求や加害者特定、損害賠償請求で必須となりますので、迅速に確保するようにしましょう。
次に、被害状況を整理し、記録に残します。
これらを整理しておくことで、相談機関や学校、弁護士への連絡がスムーズになります。
また、学校側の対処が義務となる「いじめの重大事態」の判断にも関わることがあります。
ネットいじめに遭っている子どもは、保護者に言い出しにくいと思っていたり、恥ずかしいという気持ちを抱えていたりするケースが少なくありません。
保護者は無理に詳細を聞き出したり責任を問い詰めたりするのではなく、子どもの気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
なお以下のような症状がある場合は、すぐにでも、スクールカウンセラーや医療機関などと連携し、精神面のケアを行いましょう。
また、ネットは、夜間や自宅でも見ることができてしまうため、子どもがスマホやPCを触れない環境にする対応も必要です。
以下のような場合は、早期に弁護士介入を検討すべきタイミングです。
ネットいじめは、削除や投稿者特定など時間がたつほど難しくなる手続きが多く、証拠保全が重要であることから、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ネットいじめは、拡散状況や加害者の特定可否、学校の対応などによって、適切な相談先が異なります。代表的な相談先の特徴とそれぞれのメリット・デメリットを比較します。
学校は、いじめ問題の中心的な相談先です。ネットいじめであっても、学級内の人間関係や登校状況に直結することが多いため、保護者として最初に相談すべき窓口といえます。
教育現場では、いじめ防止対策推進法の影響もあり、認知と指導を積極的に行う動きが進んでいます。
ただし、学校が扱えるのは主に教育的・指導的な領域であり、LINEやSNSなどのプラットフォームに働きかける権限はありません。特に、裏アカウントや複数グループでの拡散が関係する場合、学校の対応だけでは限界が生じやすい点は留意が必要です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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弁護士は、証拠収集のサポートから加害側の保護者との交渉、損害賠償請求まで、教育機関では扱えない領域に対応できます。弁護士が介入することで、加害者側や学校側にとっての抑止効果が働くことも多く、再発防止の可能性も高まります。
また、ネットの誹謗中傷を専門に扱う弁護士であれば、画像や動画の削除・投稿者の特定といった法的手続を迅速に行うことができます。ネットいじめは、拡散速度と証拠喪失のスピードが速く、初期の対応が結果を左右しやすい問題なため、スピーディーな支援が肝要です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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保護者が直接行政や専門機関に相談できる窓口も多数あります。代表的な相談窓口としては、以下のようなところが挙げられます。
これらは無料で相談でき、保護者が現状把握をする際の最初の一歩として有用です。
ただし、専門窓口の役割はあくまで助言や情報提供であり、削除要請や投稿者特定、損害賠償など具体的な改善措置には対応していません。
そのため、被害が拡大している場合や法的対応が必要な場面では、弁護士など次の相談先を見据えることが求められます。
| メリット | デメリット |
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名誉毀損、脅迫、強要、児童ポルノなど犯罪に該当するような悪質な事案については、加害者に対する刑事責任の追及も視野に入ります。その場合は、警察(サイバー犯罪相談窓口)が相談窓口となります。
ただし、警察は民事的な被害回復(削除・賠償・謝罪)には対応できないため、学校や専門窓口と同様、役割を明確に理解したうえで利用する必要があります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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ネットいじめは、学校が動かない、加害者が事実を否定する、投稿が匿名で特定できないなどのケースが多く、保護者だけで対応することに限界があります。以下では、ネットいじめの事案で弁護士ができる支援内容を紹介します。
ネットいじめは、削除やブロックによって証拠が容易に消えてしまうため、初動の証拠保全が極めて重要です。
弁護士は、裁判手続を見据えながら証拠としての価値の高い記録方法を助言することができます。「どの範囲で、何を確保すべきか」という判断自体が専門性を伴うため、確実に証拠を確保するには、早期に弁護士に相談するべきでしょう。
画像・動画・スクリーンショットの拡散が起きている場合、削除請求は、被害を最小限に抑えるための最優先措置になります。
弁護士は、SNS運営者やプラットフォームに対し、法的根拠を示した削除請求を行うことが可能です。運営者側も、法的手続を前提とした要請の方が判断しやすく、対応が進むケースが多いとされています。
裏アカウントや匿名投稿は、ネットいじめで非常に多く、投稿者を特定できなければ学校側の対応も進まず、加害者への責任追及も困難です。
弁護士は、発信者情報開示請求という法的手段を用いて、匿名投稿者の特定をすることができます。開示手続は、タイムリミットがあり、専門性を要するため、拡散が進んでからでは手続自体が困難になることもありますので、早めの相談をおすすめします。
被害者側の保護者が単独で交渉しようとすると、感情的な衝突が生じやすく、逆に解決が遅れることもあります。
弁護士が介入することで、加害者やその保護者との交渉が可能になります。これにより、加害生徒(児童)や保護者への抑止力となり、被害の拡大防止が期待できます。また、直接交渉する必要がなくなるため、被害者側の精神的負担も大幅に軽減します。
不登校、転校、学業不振、精神的負担などが生じた場合、学校の安全配慮義務が問題になることもあります。弁護士は、事実の整理や重大事態の判断材料をそろえたうえで、学校側に適切な対応を求めます。
ネットいじめは、精神的損害、医療費など、具体的な損害が生じることがあります。被害が深刻なケースでは損害賠償請求が検討され、加害者本人だけでなく保護者の監督義務が問題となることもあります。
弁護士に依頼すれば、加害者側との交渉や裁判などの手続きをすべて任せることができます。
参考
学校での問題・トラブルの
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ネットいじめは、拡散性や匿名性ゆえにエスカレートしやすく、自宅にいても被害が続くため、逃げ場がなく被害が深刻化しやすいのが特徴です。
画像・動画の拡散、投稿者の特定困難といった問題に加え、学校の対応遅れから不登校や転校といった二次被害が生じるおそれもあります。保護者としては、証拠保全と状況整理を早期に進めつつ、適切な相談先を選ぶことが重要です。
ベリーベスト法律事務所では、学校問題専門チームと、ネットによる誹謗中傷・削除請求を対応する専門チームが連携して解決にあたることが可能です。ネットいじめでお悩みの際は、早めにご相談ください。
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
米澤 弘文
所属:東京弁護士会 登録番号:53503
学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。
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