いじめ防止対策推進法とは「いじめは個人間の問題ではなく、学校全体で対応すべき問題である」という考え方を明確に示す法律です。
いじめ防止対策推進法を正しく理解すれば、わが子がいじめ被害にあっても、学校に対して求めることができる対応や責任が見えてきます。
今回は、いじめ防止対策推進法の基本的な内容、保護者が学校に要請できること、弁護士に相談すべきタイミングなどについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
いじめ防止対策推進法は、いじめの防止や早期発見、被害を受けた子どもを守ることを目的とした法律です。
学校や教育委員会に対して具体的な対応義務を課しており、保護者が学校に対応を求める際の重要な根拠となります。以下では、その目的や定義について説明します。
いじめ防止対策推進法の目的は、大きく分けて以下の3つです。
この法律では、「いじめはどの学校にも起こり得るもの」という前提に立ち、問題が表面化してから対応するのではなく、未然に防ぐ体制づくりが重視されています。
つまり「いじめの問題が起きる前に備える」ことが法律上求められているのです。
いじめ防止対策推進法では、「いじめ」を以下のように定義しています。
出典:「いじめ防止対策推進法」(e-Gov法令検索)
この法律では具体的に、以下の点が重要であることを示しています。
このように、いじめの定義は非常に広く、子どもを守るために柔軟に解釈される仕組みになっています。
いじめが特に深刻な場合には、「重大事態」として特別な対応が求められます。
重大事態とは、主に以下のようなケースを指します。
また、文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」において、「児童・生徒や保護者から、いじめにより重大な被害が生じたとの申立てがあったときは、学校や教育委員会は、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる」という運用が定められています。
これは学校の判断で、いじめが隠ぺいされないようにするための重要な運用基準です。
重大事態に該当すると、学校や教育委員会には事実関係を調査する法的義務が生じます。
いじめ防止対策推進法には、学校がいじめにどう向き合うべきかが細かく定められています。ただし、「罰則」や「学校の責任」という点については、誤解されやすい部分でもあります。
以下では、法律上の罰則の有無と学校に課されている責任について説明します。
結論からいうと、いじめ防止対策推進法には、学校や教職員に対する直接的な刑事罰や行政罰は定められていません。
しかし、これは「学校が何もしなくてもよい」という意味ではありません。
この法律は、学校や教育委員会に対し、以下を明確に定めています。
これらを怠った場合には、学校を運営する学校法人や地方自治体(教育委員会)等に対して、損害賠償請求や国家賠償請求ができる可能性があります。
いじめ防止対策推進法では、学校は児童・生徒の安全を確保する責務を負うとされています。
そのため、以下のような対応が続いた場合、学校側の安全配慮義務違反や国家賠償責任が問われます。
このように「何度いっても対応してくれない」「対応の遅れや不十分な措置によっていじめ被害が拡大した」などの場合、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
いじめ防止対策推進法は、保護者が学校に対して適切な対応を求めるための根拠となる法律です。
以下では、子どものいじめに気付いた保護者が具体的にどのような対応を要請できるのか説明します。
学校は“いじめの疑いがある”と認めた場合、速やかに事実確認を行う義務があります(同法第23条第2項、第28条)。
これは「いじめかどうか分からない」段階でも、調査を開始する義務があるということです。
学校独自の判断で放置することは許されず、いじめが「重大事態」に該当する場合には、学校または教育委員会が主体となり、第三者を含めて組織的に調査を行う必要があります。
また、保護者は、調査の実施だけでなく、調査結果の説明を求めることができます。
いじめが疑われる場合、学校は被害児童・生徒の安全を最優先に確保しなければなりません(同法第23条第3項、第4項)。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
いじめ防止対策推進法では、被害者保護だけでなく、加害児童・生徒への適切な対応や指導も求められています(23条第3項)。
具体的には、以下が挙げられます。
加害児童・生徒を一方的に処罰することが目的ではなく、行為の重大性を理解させ、再発を防ぐことが重視されています。
いじめの態様が悪質で、学校だけでは対応が困難な場合、教育委員会はいじめを行った児童等の保護者に対して出席停止などの措置を講じることができます(同法第26条)。
これは被害児童・生徒を守るための制度であり、懲罰目的ではありません。
ただし、出席停止の判断や運用には専門知識が必要なため、学校任せにすると消極的な対応にとどまるケースも少なくありません。
このような場合、弁護士が間に入って法的根拠を示しながら要請することで、適切な対応がなされやすくなります。
いじめ問題では、対応が遅れることで被害が深刻化したり、証拠が失われたりするケースも少なくありません。以下では、弁護士に相談すべき代表的なタイミングを説明します。
子どもが「学校に行きたくない」「眠れない」と訴えている場合、すでに心身に大きな負担がかかっている可能性があります。
この段階で弁護士に相談すれば、
などについて具体的なアドバイスを受けることができます。
「まだ大ごとではないから……」と我慢するよりも、早めに弁護士の視点を入れることで、被害の拡大を防げます。
学校に相談しても、話を聞くだけで具体的な対応がない、「様子を見ましょう」と繰り返される、いじめの事実を認めようとしない、といった対応が続く場合は注意が必要です。
このようなケースでは、弁護士が間に入り、
といった手段をとることが有効です。
学校や加害者側との交渉は、保護者だけでは限界があります。家族で抱え込まず、難しいと感じるときはすぐに弁護士に相談することをおすすめします。
いじめが原因で不登校となった場合は、重大事態に該当する場合があります。
弁護士に相談することで、法的根拠に基づく要請として以下の対応を学校に求めることが可能になります。
いじめの内容が悪質で、名誉毀損・暴行・脅迫などに該当する場合、民事上の損害賠償請求や刑事責任の追及も検討しましょう。
弁護士に相談することで、
などを任せることができます。
感情的な対立を避けつつ、法的に適切な解決を図るためにも、弁護士の関与が重要です。
いじめ問題は、時間がたつほど解決が難しくなる傾向があります。
証拠が失われたり、子どもの心身への影響が深刻化したりする前に、早期に動くことが大切です。
弁護士は、単に裁判をするだけではなく、いじめ被害を拡大させないために、学校への適切な要請方法のアドバイスから、加害者側との交渉、法的手続きまでをサポートするパートナーです。
少しでも不安を感じたら、ベリーベスト法律事務所の学校問題専門チームまでご相談ください。
参考
学校での問題・トラブルの
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いじめ防止対策推進法は、子どもを守るために学校や教育委員会の責任を明確にした重要な法律です。いじめが疑われる場合、学校には調査や被害防止の対応を行う義務があり、保護者もその対応を求める権利があります。
しかし現実には、十分な対応がなされないケースも少なくありません。
そのようなときは、保護者の方だけで抱え込まず、早めに専門家へ相談することが大切です。弁護士であれば、法的根拠に基づいた対応を求めるだけでなく、子どもの心身を守るための具体的なサポートも可能です。
いじめ問題でお悩みの方は、学校問題専門チームがあるベリーベスト法律事務所までぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
米澤 弘文
所属:東京弁護士会 登録番号:53503
学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。
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