性的いじめは子ども同士であっても立派な「性暴力」であり、深刻な権利侵害にあたります。無断で身体を触られる、性的な言葉を投げかけられる、着替えやトイレをのぞかれる、裸の画像を送らされる、SNSで拡散されるなど、被害の内容は大人が想像する以上に深刻で、精神的な傷が長く残ってしまうケースも少なくありません。
そのため、保護者としては早期に被害に気づいて、適切な対応を取ることが重要になります。今回は、性的いじめの具体的な実態、代表的な7つの行為、被害に気づくためのサイン、保護者が取るべき対応や専門機関への相談方法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
性的いじめとは、子ども同士の間で行われる性的な言動や行為を伴ういじめのことです。大人には「からかい」や「ふざけ」に見える場合でも、子どもにとっては深刻な性暴力となりえます。
近年はSNSを使った被害も増えており、発覚しにくいことが大きな問題です。まずは性的いじめの実態を正しく理解することが重要です。
性的いじめは、からかいや遊びの延長ではなく、子ども間の性暴力として捉えられています。
性暴力とは、相手の同意なく性的な行為をしたり、性的な言葉や態度によって心身を傷つけたりする行為を指します。子どもが被害者であっても、また加害者が子どもであっても、その本質は大人の性暴力と変わりません。
性的いじめの具体例としては、以下のような行為が挙げられます。
被害を受けた子どもは「自分にも責任があるかもしれない」「親に心配をかけたくない」「恥ずかしくて言えない」と感じ、被害を長期間抱え込んでしまうことがあります。周囲の大人が正しく理解し、小さな違和感にも敏感に気づいてあげることが重要です。
内閣府男女共同参画局が公開した資料「こども・若者の性被害に関する状況等について」では、若年層がどのような性暴力被害を受け、どの時期に被害を経験することが多いのかが報告されています。
① 最初の被害経験は高校生がもっとも多い
資料によると、身体接触や性交を伴う性暴力被害を経験した人のうち、16~18歳(高校生)の時期に初めて被害に遭った人がもっとも多いという結果が示されています。
| 身体接触を伴う性暴力被害に最初に遭った年齢 | 性交を伴う性暴力被害に最初に遭った年齢 | |
|---|---|---|
| 0~6歳(未就学児) | 3.6% | 3.0% |
| 7~12歳(小学生) | 13.7% | 8.4% |
| 13~15歳(中学生) | 20.3% | 12.6% |
| 16~18歳(高校生) | 35.9% | 38.9% |
| 19~20歳 | 15.8% | 24.6% |
| 21~24歳 | 10.6% | 12.6% |
参考:「こども・若者の性被害に関する状況等について」(内閣府男女共同参画局)
高校生になると、自分のスマホを所持している割合が高く、SNSトラブルに巻き込まれるリスクも高くなります。
また、高校生は羞恥心から大人に相談しにくい、自分の力で解決したいと考えやすい年代であることも、被害を拡大させる要因のひとつといえます。
② 加害者は「学校関係者」「交際相手」「SNSで知り合った人」が多い
資料では、性交を伴う性暴力被害の加害者として、次のような相手が多いとされています。
つまり、加害者は被害者にとっての「顔見知り」であるケースが大半で、いわゆる見知らぬ大人からの被害だけではありません。
性的いじめは、ひとつの行為だけを指すものではなく幅広い形で問題になります。以下では、学校現場や相談機関でも特に多く報告されている7つの典型例を紹介します。
無断で身体に触る、抱きつく、胸や性器を触るなどの行為は、性的いじめの典型的なケースです。
加害者側は、ふざけていただけと認識していることが多いものの、被害者にとっては強い嫌悪感や恐怖感を伴うこともあり、学校に行けなくなるほど深刻化することもあります。
「ビッチ」「エロい」など性的なレッテルを貼る言動は、外見や性に関する偏見を押し付けるもので、言葉による性的いじめです。
人格を否定されたり、性的なイメージを押し付けられたりすることで、深い心理的ダメージを負う恐れがあります。
更衣室・トイレ・シャワー室など、プライバシーが保護されるべき場所をのぞく行為やスマホで隠し撮りをする行為も重大な性的いじめです。
盗撮画像や動画は、SNSで拡散されやすく、一度拡散されると完全に削除することが難しいため、被害が長期化・深刻化するなどの重大な問題を含みます。
成人向け動画や性的な画像を無理やり見せる行為は、子どもの発達に悪影響を及ぼす「性的な強要」にあたります。
本人が望んでいない性的コンテンツを見せることは、心理的負担や性的な混乱を引き起こし、PTSDにつながるケースもあると指摘されています。「ただ見せただけ」で済まない深刻な性暴力であることを理解する必要があります。
「裸の写真を送れ」と迫る、送られた画像をグループLINEで共有する、SNS上に投稿すると脅すなどは、近年急増しているネットを介した性的いじめです。
性的な画像は、一度拡散されるとコントロールが困難で、被害が長期化・永続化するリスクがあります。
キスを迫る、身体を触らせる、性行為自体を求めるなどの行為は性的ないじめです。
「交際しているから」「同意したと思った」などと誤解されがちですが、力関係の違いや恐怖心により、明確に拒否できないこともあります。状況によっては、刑事事件に発展するケースもあります。
スカートめくり、ズボンを下げる、裸になれと命じるなど、いわゆる悪ふざけとして見られがちな行為も、性的いじめです。
被害者が強い羞恥心と恐怖心を抱く行為であり、学校現場での相談件数も多い類型です。複数人で取り囲んで強要するケースもあり、心理的被害は極めて大きくなります。
性的いじめは、被害を受けた子ども自身が「言い出しにくい」という特徴があり、保護者が気づきにくい問題です。以下では、性的いじめが発覚しにくい理由と保護者が見逃してはいけないサインについて説明します。
子どもは、以下のような心理から、性的いじめを受けていることを人に話せないケースが多くあります。
また、加害者が友人や同級生である場合、「関係が悪化するのが怖い」「嫌われたくない」と考えて黙ってしまうこともあります。
このように、性的いじめは、被害を言い出しにくい構造があり、大人が注意深く子どもの変化を見守る必要があります。
近年増えているのが、SNSやオンラインゲーム、チャットアプリを通じた性的いじめです。
このタイプの被害は、スマホやタブレットなどの画面の中で起きるため、同じ家にいても保護者が内容を把握しにくく、学校外でも24時間、被害が続くためダメージも深刻化しやすくなります。
特に、「裸の画像を送れと言われた」「送った画像をグループで回された」などのケースは、拡散による二次被害のリスクもあるため、画像や動画の削除対応も含めて一刻も早い対応が求められます。
まずは証拠としてスクリーンショットの保存やアカウント名の控えを行い、早期に弁護士や学校などに相談しましょう。
性的いじめは、女子だけでなく同性間の性暴力、さらには男子児童・生徒にも起こりえます。
具体的には「同性同士での性的なからかい、身体接触」「衣服を下ろす、露出を強要する」
「グループ内で性的な役割を押し付ける」「プライバシーを侵害する盗撮」などが挙げられるでしょう。
「男の子だから大丈夫」「同性だから問題ない」という固定観念はもたず、子どもが悩んでいたら、まずは話を聞いてみることをおすすめします。
子どもは、被害を口に出せなくても、行動や態度の変化としてSOSを発していることがあります。
特に、以下のようなサインには注意が必要です。
これらは、子どもが何か問題を抱えているサインである可能性があります。まずは「何かあった?」と穏やかに声をかけてみましょう。
性的いじめは、子どもに深刻な心理的ダメージを与えるため、適切な順序で行動することが大切です。以下では、被害を受けた子どもを守るために、保護者がまず行うべき対応と相談できる専門機関について説明します。
性的いじめの被害を知ったとき、大切なのは子どもの安全を確保し、安心できる環境で話を聞くことです。
話を聞く際のポイントは、以下のとおりです。
安全を確保したうえで、必要な範囲で事実を整理し、学校や専門機関への相談につなげていきます。不安であればカウンセラーやいじめの相談窓口などにアドバイスを求めることも検討しましょう。
性的いじめは、学校・加害者側との話し合いや、損害賠償請求などを行う際に、証拠が非常に重要となります。
以下の証拠は、削除されたり紛失したりする前にできるだけ迅速に保存するようにしましょう。
ネット上の証拠は、削除されやすいため、気づいた段階ですぐに保存することが大切です。証拠が残っていれば、学校側も動きやすく、弁護士が介入する際にも非常に有効です。
性的いじめが疑われる場合、状況に応じて適切な専門機関へ相談し、子どもを守る体制を整えていくことが大切です。
相談先①│弁護士
深刻な被害や保護者だけでは対応できないケース、加害児童生徒側との調整が必要な場合は、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
特に、ネット上での被害は拡散が早く、初動が遅れると収拾がつかなくなるため、迷ったら早めに相談することが大切です。
相談先②│学校・スクールカウンセラー・教育委員会
学校は、児童生徒の安全を守る義務があり、性的いじめに対しても調査や指導を行う責任があります。
なお、学校の対応に不安がある場合は、教育委員会の相談窓口に直接相談して構いません。公立学校は行政機関(教育委員会)の管理下にあるため、市区町村や都道府県の教育委員会内に設けられている窓口から相談が可能です。
一方、私立学校は独立した「学校法人」が運営しているため、教育委員会による直接的な指導は期待できません。各都道府県庁の私立学校事務主管課(自治体によって名称は異なる)が相談窓口になります。不安な場合は弁護士のサポートを受けながら相談することをおすすめします。
相談先③│医師・警察
以下のような状況は、ただちに医療機関または警察に相談してください。
医療機関では心身のケアのほか、必要に応じて診断書の作成も可能です。警察には、被害届・捜査・緊急措置の相談まで含め、法的な保護を求めることができます。
参考
学校での問題・トラブルの
法律相談予約はこちら
性的いじめは、被害を受けた子どもが「恥ずかしい」「怖い」と感じ、周囲に相談できずに一人で抱え込んでしまうケースが少なくありません。
その結果、心身の不調や不登校につながるなど、問題が深刻化しやすくなる恐れがあります。保護者が早い段階で子どもの変化に気づき、学校・専門機関・弁護士と連携して対応することがとても重要です。
ベリーベスト法律事務所では、学校や加害者との交渉、証拠の確保、慰謝料請求を含む法的措置まで、被害児童生徒とご家族をサポートいたします。少しでも不安がある場合は、早めにご相談ください。
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
米澤 弘文
所属:東京弁護士会 登録番号:53503
学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。
学校での問題・トラブルの
法律相談予約はこちら