保育園・幼稚園の弁護士コラム

「慣らし保育が怖い」突然死(SIDS)の実態│親ができる対策と法的知識

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更新日:2025年12月22日 公開日:2025年12月22日
「慣らし保育が怖い」突然死(SIDS)の実態│親ができる対策と法的知識

こども家庭庁のデータでは、保育施設での死亡事故の多くが、慣らし保育の期間である入園から30日以内に発生しているとされています。

原因のひとつとして挙げられるのが「乳幼児突然死症候群(SIDS)」です。これは、見た目には健康だった赤ちゃんが睡眠中に突然亡くなってしまう病態で、医学的にも完全に防ぐことは難しいとされています。

ただし、発生は極めて“まれ”のため、適切な知識を知っておくことが大切です。今回は、慣らし保育とSIDSの関係や実際の事例、万が一事故が起きたときの対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、「慣らし保育」と「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の関係性

保育園での「慣らし保育」は、子どもが新しい環境に少しずつ慣れていくための大切なステップです。しかし一方で、「慣らし保育の最中に突然死(SIDS)が起きた」というニュースを目にし、不安を覚える保護者もいるのではないでしょうか。

以下では、慣らし保育とSIDSの関係性、発生時期の傾向、正しく行われた慣らし保育であればむしろ安全につながる理由を最新データをもとに説明します。

  1. (1)慣らし保育とは? どんな目的で行われるのか

    「慣らし保育」とは、入園直後の子どもが新しい環境や生活リズムに少しずつ慣れていけるよう、登園時間を短くしたり、保護者が同席したりして段階的に保育時間を延ばしていく取り組みです。

    初めて母親・父親と離れて過ごす時間が長くなる乳幼児にとって、慣らし保育は心身の負担を軽減し、安全に集団生活へ移行するための重要なプロセスといえます。

  2. (2)SIDS(乳幼児突然死症候群)とは?

    SIDS(Sudden Infant Death Syndrome:乳幼児突然死症候群)とは、それまで元気だった乳幼児が、睡眠中などに突然亡くなり、医学的検査でも明確な原因が特定できない死亡を指します。

    主に生後2~6か月ごろの乳児に多く見られますが、ごくまれに1歳以上でも発症することがあります。

    発生のメカニズムは完全には解明されていませんが、うつぶせ寝、周囲の喫煙環境、睡眠時の過度な保温などがリスク要因とされています。

  3. (3)入園から30日以内の死亡事故が多い理由

    こども家庭庁の有識者会議(平成30年度報告)によると、保育施設で発生した死亡事故のうち、約3割が入園後30日以内に起きているとされています。
    参考:「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議 年次報告 平成30年7月」(こども家庭庁)

    この期間は、家庭から園という新しい環境への適応期にあたり、生活リズム・睡眠環境・人との関わり方が急激に変化する時期です。特に、0歳児の場合、身体機能が未発達なうえに、慣れない緊張や疲れが重なり、体調を崩しやすくなる傾向があります。

    こうしたストレスや睡眠環境の変化が、SIDSを含む事故リスクを相対的に高める一因と考えられています。

  4. (4)慣らし保育の突然死は極めて“まれ”

    こども家庭庁の事故報告集計によると、令和6年に全国の保育施設で報告された乳幼児突然死症候群(SIDS)の疑いによる死亡は、2件でした。
    参考:「令和6年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について(こども家庭庁)

    これは全国でおよそ270万人の児童が保育所等を利用している状況を踏まえると、極めて“まれ”なケースといえます。ただし、わずかでも命に関わる事態が発生していることから、引き続き「睡眠中の観察」「安全な寝かせ方」「健康状態の把握」といった基本の徹底が求められます。

  5. (5)適切な慣らし保育は突然死を防ぐ手段にも

    慣らし保育は、リスクを高める要因ではなく、むしろ安全に園生活へ移行するための事故予防策です。

    家庭から保育園へ環境が変わる際に、一気に長時間の預かりを始めると、子どもの体調変化を職員が十分に把握できないまま負担が大きくなる可能性があります。

    その点、段階的な慣らし保育を実施すれば、保育士が子どもの睡眠傾向や体調変化を早期に把握しやすく、SIDSリスクの軽減にもつながります。

    保護者としても、「園でどのように午睡(ひる寝)を見守っているか」「うつぶせ寝への対応方針」「体調記録の共有方法」などを確認し、家庭と園で協力体制を築くことが大切です。

2、保育園での乳幼児突然死症候群(SIDS)が疑われた事例

実際に、保育施設で乳児が死亡し、SIDS(乳幼児突然死症候群)またはそれに類する状況とされたケースが報告されています。

報道されている情報等の限りでは、SIDS(乳幼児突然死症候群)やそれの対策を怠ったために生じた事象なのか、窒息などの事故なのかは明らかではない事例もあります。
ただ、このような事例を知ることで、どのような保育体制・睡眠管理・慣らし保育時の注意が重要かという点が見えてきます。以下では、乳幼児突然死症候群が起きた・疑われた実際の事例を紹介します。

  1. (1)認可外保育施設で生後3か月の乳児が心肺停止の状態になり死亡したケース

    沖縄県の認可外保育施設において、令和4年7月、生後3か月の男児が保育中に心肺停止状態となり、その後死亡したという報道がありました。

    報道によると、当該施設は園長(保育士資格あり)と職員(資格なし)1名の2人体制で、11人の園児を預かっていたとのことです。当時の体制は、定員以上と思われる人数を預かっている状況で、視察・目配りが困難な状況のようでした。さらに、園長からの指示でうつぶせ寝をさせていたことも明らかになっています。

  2. (2)認可外保育施設でうつぶせ寝のまま20分放置されたケース

    平成30年、東京都の認可外保育施設で、生後6か月の男児がミルクを飲んだ後にうつぶせ寝のまま20分間放置され死亡した事案が発生しました。これに対し、令和7年3月、東京地裁は元施設長に、業務上過失致死罪として禁錮1年・執行猶予3年の判決を言い渡しました。

    事件の後、東京都は、保護者が施設の指導状況を確認し施設選びの参考にできるサイトを開設するなどの対策を取っています。

  3. (3)認可外保育施設で生後9か月の乳児が死亡したケース

    熊本県の認可外保育施設で、生後9か月の女児が突然死亡する事故が令和6年に報告されました。

    この施設では、以前から行政による立ち入り調査で職員配置や睡眠管理の不備が指摘されていたほか、園側が改善計画を十分に履行していなかった可能性も報じられています。

    検証委員会は、死亡時の詳細な体位や睡眠環境の確認が不十分だった点を問題視しており、職員の巡回記録や体調観察記録に不備があったことも明らかにされました。同施設は、立ち入り調査の後に改善を指導されましたが、再発防止策の徹底が課題として残されています。

3、慣らし保育の事故や突然死で、園が問われる法的責任とは?

慣らし保育中に起きた事故や突然死は、保育園側の体制や管理責任が問われることになります。SIDS(乳幼児突然死症候群)が疑われる場合でも、園の管理体制に不備があれば、民事・刑事・行政の各面で責任を問われる可能性があります。

以下では、園が負う法的義務や法的責任について説明します。

  1. (1)死亡、重傷などの重大事故は報告義務がある

    保育中に死亡・重傷などの重大事故が発生した場合、速やかに自治体へ報告する義務が定められています。報告内容には、事故の発生日時・場所・経緯・職員配置・対応内容などが含まれ、報告の遅れや虚偽報告は行政処分の対象となることがあります。

    この報告義務は、事故原因の究明や再発防止のために不可欠であり、自治体は報告をもとに検証委員会を設置する場合もあります。

    一方で、報告書が作成されても、園側の主観や責任回避的な記述にとどまることも多いため、保護者が独自に経過記録や証拠を確保することが非常に重要です。

  2. (2)保育園の「安全配慮義務」とは?

    保育園には、子どもの生命・身体を守るための安全配慮義務があります。
    これは、園が子どもを預かる以上、通常想定される危険を予見し、事故を防ぐための合理的な措置を取る義務を意味します。

    たとえば、以下のような行為は、民法における安全配慮義務違反として判断される可能性があります。

    • 午睡中の巡回間隔が長すぎる(10分以上放置など)
    • うつぶせ寝を黙認、または園長の指示で強制していた
    • 保育士配置が基準を下回っていた
    • 入園直後の子どもの体調や生活リズムへの配慮不足
    • 健康観察や午睡チェックの記録がずさんだった

    実際、うつぶせ寝によるSIDS発生事例では、職員が10〜20分巡視を怠ったことで、園長や保育士が業務上過失致死罪に問われたケースもあります。

    園が「SIDSは不可抗力」と主張した場合でも、睡眠中の観察体制が不十分であれば法的責任を問える可能性があります。

  3. (3)民事責任、刑事責任、行政責任の違い

    事故の性質や園側の対応によって、保育園には複数の法的責任が問われる可能性があります。


    民事責任 刑事責任 行政責任
    保護者が園や園の設置者(地方公共団体・学校法人・社会福祉法人など)に対し、慰謝料・葬儀費用・逸失利益などの損害賠償を請求するもの。園側に安全配慮義務違反(過失)が認められれば、損害賠償責任を負います。 園長や職員個人が、業務上過失致死罪(刑法211条)に問われるケース。睡眠中の巡視を怠る、危険な姿勢を放置するなど、過失が明確な場合に成立します。 自治体が行う指導監督上の責任。改善命令、認可取消し、施設運営停止命令などが科されます。過去には職員配置基準違反や報告義務違反により、事業継続が困難になった園もあります。

4、万が一のとき、保護者は何をすべき?

万が一、慣らし保育中にお子さんが重篤な事故に遭ってしまった場合、保護者は深いショックと混乱の中に置かれます。しかし、事故後の対応を誤ると、真相究明や責任追及が難しくなってしまうことがあります。以下では、事故後の対応の流れと弁護士へ相談する重要性を説明します。

  1. (1)まずは事実確認と証拠の確保

    事故直後は、まず事実関係を正確に把握することが最優先です。園から説明を受ける際には、次のような項目を具体的に確認し、メモや録音で記録を残しましょう。

    • 事故が起きた日時・場所・状況
    • 保育士がどのように対応したか
    • 発見から救急搬送までの経過
    • 同席していた職員の人数と配置
    • 園内で撮影された映像や記録の有無

    園側の説明が後日変わるケースもあるため、説明内容を証拠化することが重要です。また、可能であれば「事故報告書」や「説明書面」の交付を求めましょう。

  2. (2)保育園からの説明を受ける際は、冷静な第三者の同席を

    園との説明の場では、感情的になってしまうのは当然です。しかし、感情的になってしまうと適切な対応が困難になりますので、冷静な判断を維持するためには、第三者の同席が有効です。

    • 信頼できる親族に同席してもらう
    • 自治体の担当者を同席させる

    冷静な第三者が同席することで、感情論に終始するのを避けられたり、園側が曖昧な説明をすることを防げたりするメリットがあります。また、園側が作成する報告書の内容をその場で確認できるため、事実の食い違いを早期に発見できる可能性もあります。

  3. (3)初期段階から弁護士への相談が重要な理由

    重大事故や死亡事故では、園側が「SIDS(乳幼児突然死症候群)」など不可抗力を主張するケースも少なくありません。しかし、過去の裁判例では、睡眠中の監視不足や過失が認められた事例も存在します。

    そのため、事故直後から弁護士に相談し、以下の点のサポートを受けることが望ましいです。

    • 園や自治体への報告内容の確認
    • 証拠保全(映像・記録・保育日誌など)の助言
    • 責任追及や損害賠償請求の見通し
    • 報道対応や示談交渉の代理

    特に、園とのやり取りを個人で行うと、感情的対立や交渉の長期化を招くおそれがあります。弁護士が介入することで、適正な手続と冷静な交渉が可能となり、保護者の精神的負担を大幅に軽減できるでしょう。

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5、まとめ

慣らし保育は、子どもが新しい環境に少しずつ慣れていくための大切な期間ですが、その一方で体調変化や睡眠中の事故といったリスクも伴います。特に、乳幼児突然死症候群(SIDS)などは予測が難しく、園側の体制や見守り方法が適切でない場合、重大な結果を招くおそれがあります。

保護者としては、園の安全管理体制や慣らし保育の進め方を事前に確認し、事故が起きた際には事実関係の記録・証拠の確保・早期の専門家への相談が欠かせません。

万が一、慣らし保育中にお子さんが重大な事故や突然死に遭ってしまった場合には、ベリーベスト法律事務所の保育園・幼稚園・学校問題を取り扱う専門チームの弁護士が真相究明と適切な賠償の実現に向けて尽力します。ご家族の想いに寄り添いながら、法的・心理的サポートの両面から解決を目指しますので、どうぞ保護者の方だけで抱え込まずにご相談ください。

この記事の監修者
米澤 弘文

ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士  米澤 弘文

所属:東京弁護士会  登録番号:53503

学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。

  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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