いじめの弁護士コラム

発達障害の子どもがいじめられたら? 保護者ができること【対策と相談先】

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更新日:2025年12月16日 公開日:2025年12月16日
発達障害の子どもがいじめられたら? 保護者ができること【対策と相談先】

発達障害のある子どもは、特性により友人関係で誤解を受けたり、トラブルに巻き込まれたりすることがあります。

文部科学省の調査では、発達障害が疑われる児童生徒は増加傾向にあるとされ、学校現場でも適切な理解と対応が求められています。

今回は、発達障害の特性といじめに発展しやすい背景を整理したうえで、いじめが起きた際に保護者が取るべき行動と相談先の選び方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、発達障害児は増加している?

学校現場では、発達障害がある、またはその可能性がある子どもが少なくないといわれています。

以下では、発達障害の基本的な理解と発達障害が疑われる児童生徒数の推移について文部科学省の調査結果をもとに説明します。

  1. (1)そもそも発達障害とは

    文部科学省の見解によれば、発達障害とは、生まれつきの脳機能に関わる特性により、学習や行動、コミュニケーションなどに困難を抱える状態を指すとされています。

    代表的なものとして、自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などが挙げられます。

    発達障害であっても、その子どもの「特性」に応じて適切な環境整備や配慮が行われれば、得意な分野で力を発揮することも少なくありません。しかし、周囲の理解不足から、行動の一部が「わがまま」「協調性がない」と誤解され、いじめにつながる場合がある点には注意が必要です。

  2. (2)発達障害が疑われる児童・生徒が増加する背景

    文部科学省の調査(平成24年度・令和4年度)によれば、通常学級に在籍する児童生徒のうち「学習面や行動面で著しい困難がある」とされた割合は、平成24年度の約6.5%から令和4年度には約8.8%に増加しました。

    もっとも、この結果は必ずしも発達障害の子どもが増えていると断定できるものではありません。背景として、以下の要因が考えられています。

    • 発達障害が世間一般に広く知られるようになり、診断につながりやすくなった
    • 保護者や教員が子どもの行動特性を早期に気づきやすくなった
    • 学校における合理的配慮の制度化により、支援対象児が把握されやすくなった

    つまり、「発達障害の子どもが急増している」というよりも、「発達障害が広く知られるようになり、今まで見過ごされてきた困難を抱える子どもたちに目が行きやすくなった」結果、統計上の数値が高くなっている可能性があります。

    参考:
    「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について(平成24年)」(文部科学省)
    「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について」(文部科学省)

2、発達障害の種類とトラブル例

発達障害と一口にいっても、その種類や特性はさまざまです。以下では、代表的な発達障害の種類と特徴を整理し、学校生活で起きやすいトラブル例を確認していきます。

  1. (1)主な発達障害の種類と特性

    文部科学省や政府広報の情報をもとに、代表的な発達障害の種類と特徴をまとめると次のとおりです。


    種類 特徴
    自閉症スペクトラム症(ASD) 対人関係やコミュニケーションの困難、こだわりの強さ、想定外の変化への対応が苦手
    注意欠如・多動症(AD/HD) 集中が続かない、不注意でミスが多い、じっとしていられない、順番を待つことが苦手
    学習障害(LD) 知的発達に遅れはないが、「読む」「書く」「計算する」など特定の分野に困難がある
    その他(吃音など) 言葉が滑らかに出にくいなど、特定のコミュニケーションに関する困難がある

    ※これらは一例であり、子どもによって特性の現れ方には大きな幅があります。
    参考:「発達障害の理解」(厚生労働省)


  2. (2)発達障害児のトラブル例

    政府広報などによると、発達障害の特性が原因で起こる学校生活のトラブルとして、以下のような例が挙げられています。


    発達障害児のトラブル例
    自閉症スペクトラム症(ASD) 空気を読むことが難しく、友人の冗談を真に受けたり、逆に言動が「冷たい」と受け止められたりして、孤立してしまう
    注意欠如・多動症(AD/HD) 忘れ物やケアレスミスが多いため「だらしない」と誤解される。授業中に発言が多い、動き回るなどの行動が「迷惑」と見られてしまう
    学習障害(LD) 読み書きや計算の遅れをからかわれ、「勉強ができない」とレッテルを貼られてしまう

    参考:「発達障害って、なんだろう?」(政府広報オンライン)

    こうした特性が周囲に理解されないと、ささいなトラブルが「いじり」から「いじめ」に発展することがあります。本人に悪気はなくても、特性が周囲に誤解されることで孤立を深め、心理的な負担も大きくなってしまいます。

3、【対策】いじめが起きたら保護者は何をすべきか?

子どもがいじめ被害を受けている場合、そのまま放置すると被害が拡大しやすく、子ども自身の心身の負担も深刻化します。このような場合、保護者は、冷静に状況を把握し、証拠を集め、適切に学校へ伝えることが大切です。以下では、実際に発達障害を持つ子どもに対していじめが起きたときの具体的な対応手順を説明します。

  1. (1)聞き取り

    発達障害の子どもは、いじめを「いじめ」と認識しにくかったり、うまく言葉で伝えられなかったりするケースがあります。保護者が「大丈夫?」と漠然と聞くだけでは、事実を把握できないことも少なくありません。

    そのため、できるだけ具体的な場面に沿った問いかけが有効です。

    たとえば、「今日は誰とお昼休みを過ごした?」「困ったことや嫌だったことはあった?」「授業中に発表したとき、みんなはどんな反応だった?」といった聞き方をすることで、子どもが状況を思い出しやすくなります。聞き取りは焦らず、責める口調を避け、安心できる環境で行うことが大切です。

  2. (2)証拠の確保

    いじめの有無を第三者に説明するためには、客観的な証拠が欠かせません。学校や加害者側とのやり取りに備えて、以下のようなものを残しておきましょう。

    • 加害者や周囲とのメールやLINEのやり取り
    • 破損した持ち物(ノート、教科書、文房具など)
    • 怪我の診断書や写真
    • 子どもから聞き取った内容をまとめた日記やメモ

    このような証拠を残しておくことで、学校・教育委員会への相談時や、弁護士に依頼する際にスムーズに状況を理解してもらいやすくなります。

  3. (3)学校への協力要請

    発達障害の特性に理解のある担任や支援スタッフが適切な配慮を行えば、いじめのエスカレートを防げる場合があります。そのため、いじめが発覚したときは、学校との協力体制を築くことが不可欠です。

    学校と連絡を取る際には、以下の点を整理して伝えるとよいでしょう。

    • 具体的にどのようないじめがあったのか(日時・場所・内容)
    • どのような証拠を確保しているか
    • 子どもの特性とそれに基づく配慮の必要性

    学校には合理的配慮を行う義務があり、担任だけでなく、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターと連携することも有効です。学校対応が不十分な場合には、弁護士を通じて改善を求めることも検討すべきです。

4、【相談先】ケースに合わせて選ぶ

いじめが発覚した場合、学校で解決できるケースもあれば、医師や弁護士といった学校外の専門家の支援が必要になることもあります。以下では、状況に応じた主な相談先を紹介します。

  1. (1)学校内での解決を目指す場合【担任・スクールカウンセラーなど】

    いじめが発覚した場合、まずは学校内の関係者に相談するのが基本です。学校には、発達障害のある児童生徒に対し「合理的配慮」を行う義務があり、その基礎となる環境整備も求められています。

    相談の窓口としては、以下の人が挙げられます。


    学校内での相談先
    担任教員 日常的に子どもを見守っているため、最初の相談窓口となりやすい
    スクールカウンセラー 心理的なサポートや面談を通じて子どもの不安を軽減できる
    特別支援コーディネーター 学校全体での支援体制づくりができる

    ただし、いじめが深刻化している場合や学校の対応が遅れていると感じる場合には、弁護士の介入を早めに検討することが望ましいでしょう。学校との交渉を法的視点から整理することで、いじめの解決に向けて事態が動き出す場合もあるからです。

  2. (2)学校に診断書や意見書を出してもらいたい場合【専門医】

    子どもの特性や必要な配慮を学校に正しく理解してもらうためには、医師による診断書や意見書が大きな助けとなります。

    たとえば、授業中の支援方法や集団活動での配慮点が明記されることで、学校が合理的配慮を具体的に検討しやすくなります。

    こうした書面は、発達障害専門医や小児神経専門医から入手可能です。保護者が口頭で訴えるよりも客観的な裏付けとなり、学校側も動きやすくなるため、子どもの安心につながります。

  3. (3)学校・加害者の対応が不十分と感じる場合【弁護士】

    学校に相談しても十分な対応が得られない、加害者やその保護者が誠実に対応しないといった場合には、弁護士への相談が有効です。

    弁護士に依頼することで、以下のような対応が可能となります。

    • 学校や教育委員会への交渉を法的観点からサポート
    • 加害者側への損害賠償請求の検討
    • 今後の再発防止策を含めた合意形成

    法的な手続きを取るかどうかは状況次第ですが、「学校に任せても解決しない」と感じた時点で早めに弁護士に相談することが、子どもの安全を守るうえで重要です。

    なお、「弁護士に依頼したことを表沙汰にしたくない」というご希望がある場合には、学校・教育委員会や加害者との交渉は保護者の方ご自身で対応し、弁護士が交渉方法のアドバイスをするといった後方支援も可能です。

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5、まとめ

発達障害のある子どもは、特性が理解されないことで誤解を受けやすく、いじめに巻き込まれるリスクがあります。放置すれば、心身への影響や不登校など深刻な結果を招きかねません。保護者は、子どもの声を丁寧に聞き取り、証拠を残し、学校に具体的な状況を伝えることが大切です。

学校には合理的配慮を行う義務があるため、担任やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターと協力し、必要に応じて医師の診断書を活用することも有効です。

しかし、いじめが明らかであり、学校や加害者側の対応が不十分な場合には、法的観点からの対応が欠かせません。ベリーベスト法律事務所では、いじめ問題に関する学校との交渉や加害者への損害賠償請求などをサポートしています。子どもの安全と権利を守るために、弁護士相談をお早めにご検討ください。

この記事の監修者
米澤 弘文

ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士  米澤 弘文

所属:東京弁護士会  登録番号:53503

学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。

  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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