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スクールロイヤーとは? 学校現場での役割や代理人弁護士との違い

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更新日:2025年08月25日 公開日:2025年08月25日
スクールロイヤーとは? 学校現場での役割や代理人弁護士との違い

スクールロイヤーとは、いじめや学校事故、保護者と学校間のトラブルなど、学校で起こるさまざまな問題について法的な助言を行う弁護士です。

学校現場を支える新たな役割として期待を集めるスクールロイヤーですが、あくまで「学校をサポートする立場」にあり、被害を受けた子どもや保護者を直接支援することはできないため注意が必要です。

スクールロイヤーの活動内容、代理人弁護士との違いをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、スクールロイヤーとは?

スクールロイヤーとは、どのような役割を担う弁護士を指すのでしょうか。以下では、スクールロイヤーの概要と発足の背景について説明します。

  1. (1)スクールロイヤーの定義

    文部科学省は、スクールロイヤーを「もっぱら教育行政に関与する弁護士」と定義しています。

    一方、日本弁護士連合会(日弁連)は、「学校で発生するさまざまな問題について、子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育や福祉等の視点を取り入れながら、法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士」と定義づけています。

    令和7年現在、スクールロイヤーについて法律上明確な定義はまだありませんが、文部科学省と日弁連の定義を踏まえると、スクールロイヤーは、いじめ・体罰・保護者対応・学校事故などに対し、学校側に中立的立場から法的助言を行い、教育現場の健全化を目指す専門職だといえるでしょう。

  2. (2)スクールロイヤー発足の背景

    スクールロイヤー制度の導入が注目された背景には、相次ぐ深刻ないじめや虐待事件の発生、教職員が法的問題に直面した際の「法的孤立」の問題があります。

    たとえば以下の事件では、教育委員会や学校が適切な対応を取れなかったことが社会問題となり、学校と弁護士との連携の必要性が強く認識されるようになっています。

    • 大津市中2いじめ自殺事件
    • 旭川女子中学生凍死事件
    • 野田市女児虐待死事件

    これらの事件をきっかけにスクールロイヤーという制度の必要性が認識され、このような事件が明らかになるごとに、その必要性が強く認知されるようになっています。
    また、教職員が異変に気付きながらも法的問題に対し十分な知識や支援を得られず、過度な責任やストレスを抱える法的孤立状態にあることも、制度の必要性を後押ししました。

  3. (3)文部科学省はスクールロイヤーの活用を全国に要請

    日本弁護士連合会(日弁連)は、スクールロイヤー制度の整備を求め、平成30年に文部科学大臣に「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」を提出しました。

    これを受けて、令和元年には文部科学省がスクールロイヤー制度の導入方針を明確化し、全国の学校現場に300人規模のスクールロイヤーを配置する方針を示しました。

    さらに令和6年には、文部科学省がスクールロイヤー活用を全国の教育委員会に要請したこともあり、今後のさらなる普及が期待されています。

2、スクールロイヤーの主な対応事例と活動内容

以下では、スクールロイヤーの主な事例と活動内容を紹介します。

  1. (1)【事例】スクールロイヤーはどんな時に対応する?

    スクールロイヤーの主な対応事例としては、以下のようなものが挙げられます。


    対応事例 内容
    いじめ いじめの事実確認、加害者・被害者への対応、保護者への説明、再発防止策の検討など
    学校事故 事故発生時の原因調査、損害賠償請求への対応、再発防止策の検討など
    不登校 不登校児童生徒の状況把握、保護者との連携、学校への復帰に向けたサポートなど
    教師間のトラブル パワハラ・セクハラなど職場内トラブルへの対応
    保護者間のトラブル 保護者同士のトラブルへの学校としての対応指針の提示
    給食費・教材費未納 未納時の適法な対応や公費対応の可否の確認
    保護者からの過剰要求 過度な要求をする保護者、いわゆるモンスターペアレントからの不当な要求に対して、法的な観点から対応を助言
  2. (2)スクールロイヤーの具体的な活動内容は?

    スクールロイヤーの主な活動内容としては、以下のようなものが挙げられます。


    活動分類 内容
    研修・出張授業 教職員向けの法務研修、児童生徒向けのいじめ予防授業等(法教育)の実施
    法的助言 学校内のトラブル(いじめ、体罰、事故等)への法的助言
    面談の代理 重大事案や深刻なトラブル対応時の面談への同席、スクールカウンセラーとの連携
    制度設計の支援 校則改定、いじめ防止マニュアルの策定支援などの制度設計

    このように、トラブルの予防施策から有事の対応など、学校の教職員が安心して教育に専念できる環境づくりを法的側面から支えるのがスクールロイヤーです。今後は、ますますその存在意義が高まると考えられています。

3、スクールロイヤーの注意点・デメリット

教育現場の法的支援として期待されるスクールロイヤー制度ですが、運用面ではいくつかの課題やデメリットも指摘されています。

以下では、スクールロイヤーの注意点やデメリットを説明します。

  1. (1)児童・生徒・保護者への直接支援ができない

    スクールロイヤーは、その制度設計上、あくまでも中立的な立場で「学校の支援者」としての役割を務めるにとどまります。したがって、問題の当事者である児童生徒やその保護者をスクールロイヤーが直接支援することはできません

    また、スクールロイヤーが学校内で保護者との面談に同席する場面でも、基本的には中立的立場で学校の法的立場を助言する役割であるため、保護者側からは「学校に有利な方向に話をまとめられたのではないか」という印象を受ける可能性もあります。

    子どもや保護者の側に立ち、学校との交渉や開示請求、損害賠償請求まで含めて支援できるのは、あくまで依頼者の「代理人弁護士」の役割であることを理解しておくことが大切です。

    なお、代理人弁護士とは、児童・生徒やその保護者からの依頼を受けて動く、一般の法律事務所の弁護士を指します。

  2. (2)制度運用に地域差がでてしまう

    スクールロイヤー制度は、文部科学省や日弁連が全国的な活用を呼びかけているものの、実際の運用は各地方自治体や教育委員会の裁量に委ねられています。そのため、導入の有無や相談件数、スクールロイヤーの関与範囲には大きな地域差があります。

    たとえば、首都圏や政令指定都市ではすでに複数の弁護士が学校現場と連携して活動している一方、財政基盤の弱い自治体では制度そのものが存在しないケースもあります。

    さらに、スクールロイヤーの関わり方にも違いがあり、定期的に学校を訪問して研修・相談を行う地域もあれば、トラブルが発生したときだけ呼ばれる「非常勤対応」のみにとどまっている地域もあります。結果として、同じような問題が起きても「どの地域に住んでいるか」で受けられる法的支援の質に格差が生まれてしまっているのが現状です。

4、スクールロイヤー・代理人弁護士・顧問弁護士の違い

学校で起きたトラブルに法的対応が必要となったとき、関与する弁護士には「スクールロイヤー」「代理人弁護士」「顧問弁護士」など複数の立場があります。これらは一見似ているようで、その役割や守るべき対象が大きく異なります。

以下では、スクールロイヤー、代理人弁護士、顧問弁護士の違いと代理人弁護士ができることを説明します。

  1. (1)スクールロイヤーと代理人弁護士・顧問弁護士は何が違う?

    スクールロイヤー、代理人弁護士、顧問弁護士の違いをまとめると以下のようになります。


    依頼者 主な役割 立ち位置
    スクールロイヤー 教育委員会・学校 校内トラブルに関する法的助言、制度改善支援、教職員研修、法教育など 中立を理想としつつ、制度上は学校の教育現場をサポート。児童・生徒や保護者の支援には応じられない。
    代理人弁護士 保護者・児童・生徒本人 依頼者の望む解決や依頼者の利益の最大化の実現を目的とした交渉・損害賠償請求・情報開示請求など 依頼者の代理人として行動。学校側の弁護士と法的に対立する可能性がある。
    顧問弁護士 学校法人・自治体 学校運営・人事・契約等に関する法務管理、訴訟対応など 完全に学校側の利益を追求する立場。

    スクールロイヤー、代理人弁護士、顧問弁護士の最大の違いは、誰の利益を守るのかという点にあります。

    スクールロイヤーは、建前として「子どもの最善の利益」を志向しますが、実際には学校から依頼を受けて助言を行うため、学校寄りの立場になります。また、顧問弁護士は法人(学校)と契約する弁護士で、学校・教職員を守る立場です。

    代理人弁護士が、唯一、児童・生徒・保護者の視点に立って行動する法的パートナーであるといえます。

  2. (2)代理人弁護士ができること

    スクールロイヤーや顧問弁護士が学校側の支援にとどまるのに対し、代理人弁護士は、子どもや保護者の権利を守る立場として、以下のような行動をとることができます。

    ①「子ども・保護者の味方」として交渉、面談同席
    学校でのトラブルを申告しても学校から納得のいく説明が得られない場合、代理人弁護士は事実関係の確認や改善要求を法的観点から主張し、交渉していくことになります。交渉は書面によるものが一般的ですが、場合によっては、保護者とともに学校へ出向き、学校との面談に同席して直接交渉する場合もあります。

    また、学校との交渉をなるべく穏便に行うために、弁護士は表に立たず、依頼者へのアドバイザーに徹して後方からサポートすることも可能です。状況に応じた適切な支援を求めましょう。

    ② 開示請求や第三者委員会設置の申し入れ
    学校で起きた事故やトラブルの経緯を知るためには、学校側の記録や第三者委員会の調査報告書などを入手する必要があります。しかし、こうした情報が簡単に開示されるとは限りません。

    代理人弁護士は、必要な証拠を集め、個人情報保護法や行政文書開示制度などを用いて開示請求を行います。また、学校側が事案の調査に消極的なときは、第三者委員会設置の申し入れをすることで、客観的な事実を明らかにするよう働きかけます。

    ③ 必要に応じて、訴訟や損害賠償請求を行う
    学校事故や教師による体罰、いじめなどにより子どもが精神的・身体的被害を受けた場合、学校の設置者や加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。

    学校の設置者や加害者との交渉・訴訟などの法的手続きを保護者個人で対応するのは非常に困難といえます。いじめや学校事故など、学校問題に携わる代理人弁護士に任せることをおすすめします。

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5、まとめ

スクールロイヤーは教育現場の法的支援者として重要な役割を担いますが、あくまで学校側への助言をする存在ですので、児童生徒やその保護者の権利を直接守るものではありません。

いじめや学校事故、教師とのトラブルなど、学校との間で法的問題が発生した場合には、子どもや保護者の味方となって支援する代理人弁護士への相談がおすすめです。

学校問題に強い代理人弁護士をお探しの際は、学校問題専門チームを擁するベリーベスト法律事務所までご相談ください。

この記事の監修者
米澤 弘文

ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士  米澤 弘文

所属:東京弁護士会  登録番号:53503

学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。

  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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