退学・停学の弁護士コラム

私立中学の「退学処分」「自主退学勧告」は違法? 取り消す方法とは

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更新日:2025年07月30日 公開日:2025年07月30日
私立中学の「退学処分」「自主退学勧告」は違法? 取り消す方法とは

私立学校は、学校教育法および私立学校法に基づき、独自の校則や学則により退学処分を行うことが認められています。

しかし、教育的配慮に欠けた対応や不十分な手続きであるケースもあるため、注意が必要です。

学校側からの退学処分や自主退学勧告(自主的に退学をすすめられること)に納得がいかない場合、保護者としてどのように対応すべきか、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、私立中学の退学処分は違法?

私立中学では公立中学と異なり、校長に退学処分の権限が与えられています。ただし、合理的な理由のない退学処分は違法と判断される可能性が高くなります。

  1. (1)私立中学の退学処分の法的根拠

    私立中学の校長は、教育上必要があると認めるときは退学処分を行うことができます(学校教育法第11条、学校教育法施行規則第26条第2項・第3項)。

    具体的には、主に以下のようなケースが挙げられます。


    退学処分の理由 具体例
    非行行為や素行不良の改善見込がない
    • 喫煙、飲酒などの常習犯である
    • 万引きや薬物使用等の罪を犯した
    • 教師や他の生徒に対して暴行や脅迫をした
    など
    学力不振で成業の見込がない
    • 学校側が定めた成績基準に満たない
    など
    正当な理由がなく不登校が続く
    • 遊びたい、さぼりたい等が理由で無断欠席が続く
    • 不登校により学校側が定めた出席日数に満たない
    など
    学校の秩序を著しく乱した
    • いじめの常習犯である
    • 学校の授業妨害の常習犯である
    • SNSで学校や教師に対する誹謗中傷を行った
    など

    このような退学処分への具体的な対策は「3、私立中学の退学処分を取り消したい!対策と方法を解説」で詳しく解説します。

    また、強制的な退学処分は、憲法で保障された子どもの学習権を奪う行為になりかねないため、学校側が生徒に自主退学を働きかけるケース(自主退学勧告)もよく見られます。

    自主退学勧告に強制力はありません。退学したくない場合は、すぐに同意せず、校則の根拠を確認した上で弁護士に相談するなど、冷静に対応することが重要です。

  2. (2)守られるべき子どもの学習権|安易な退学処分は違法の可能性あり

    私立中学に在籍する生徒には、原則としてその学校で学ぶ権利(学習権)があります。

    したがって、校長に退学処分の権限が与えられているとはいえ、その権限をいつでも行使してよいわけではありません。

    退学処分の要件を満たさない状況で行われた退学処分であれば、その処分は違法となる可能性があります。私立中学から納得できない退学処分を言い渡された場合には、まずは弁護士に不当な退学処分ではないか、判断を求めることをおすすめします。

2、退学を受け入れて転校する場合のメリットと注意点

退学処分や自主退学勧告をされた場合、退学を受け入れて転校することも選択肢のひとつです。

環境を変えることで子どもの気持ちや学習姿勢に前向きな変化が生じるといったメリットもあるでしょう。また、これまでの人間関係やストレスから距離を置くことで、精神的に落ち着きを取り戻し、再び学校生活を送れるようになるケースも少なくありません。

ただし注意点として、私立中学を退学しても、すでに支払った入学金や授業料などは返金されないのが一般的です。また、苦労して中学受験で合格した学校を辞めることは、子どもにとって大きな精神的ショックになりえます。親として、子どものメンタルケアには十分に配慮することが大切です。

場合によっては、学校に対して精神的苦痛を受けた慰謝料を請求することも可能ですので、必要に応じて弁護士に相談しながら今後の対応を検討しましょう。

3、私立中学の退学処分を取り消したい! 対策と方法

私立中学に通う子どもが退学処分を受け、退学を取り消して復学したい場合には、以下の方法によって対処しましょう。

  1. (1)弁護士に相談する

    まずは、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

    弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて退学処分の違法性を主張することができます。また、実際に退学処分が撤回・無効となる可能性の程度や、手続きの見通しなどが分かり、転校を含めた選択肢を適切に検討することができます。

    私立中学の退学処分を撤回したい・拒否したい場合は、お早めに弁護士へご相談ください。

  2. (2)退学処分の撤回を求めて、学校側と交渉する

    前述のとおり、私立中学の校長が退学処分を行うことができるのは、学校教育法等で定められた要件を満たす場合に限られます。

    学校側の退学処分が法律上の要件を満たしていない場合は、その理由を具体的に指摘して、退学処分の撤回を求めましょう。

    学校側との交渉を弁護士に依頼すれば、退学処分に違法性がないかを判断し、適切に主張することができます。

  3. (3)裁判所に仮処分を申し立てて、生徒としての地位を守る

    学校との交渉が長引く場合や、退学処分の効力が直ちに生じてしまうような状況では、「仮処分の申立て」によって「生徒としての地位」を一時的に保全することが可能です。

    仮処分とは、正式な裁判の判決が出る前に、退学処分の効力を停止させたり、学校への通学を一時的に認めてもらったりするための緊急的な措置です。

    最終的な結論は訴訟に委ねられますが、子どもはひとまず学校に戻ることができます。

    ただし仮の地位を定める仮処分命令を得るためには、退学処分が違法であることを疎明しなければなりません。弁護士のサポートを受けながら、準備を整えましょう。

  4. (4)訴訟を提起する|生徒としての地位確認・損害賠償

    学校側が退学処分を撤回しない場合、最終的には訴訟で争うことになります。訴訟では、退学処分の無効を前提とする生徒としての地位の確認と、違法な退学処分によって被った損害の賠償を請求します。

    生徒側が勝訴判決を得るためには、退学処分の違法性を示す客観的な資料を提出することや、実際の経緯を主張書面で説得的に伝えることなどが大切です。訴訟の結果が最終的な結論となるので、弁護士のサポートを受けながら進めていきましょう。

4、私立中学から退学処分を受けたときに、弁護士へ相談する流れとメリット

私立中学を不当に退学させられそうになったときは、すぐに弁護士へご相談ください。弁護士に相談・依頼する際の手順と、相談のメリットを解説します。

  1. (1)弁護士に相談・依頼する手順

    弁護士に相談・依頼する際の手順は、大まかに以下のとおりです。

    ① 法律相談の申し込み
    法律事務所のウェブサイトなどから、法律相談をお申し込みください。

    ② 法律相談
    対面またはオンラインで、弁護士がご事情をお伺いします。

    ③ 対応方針や弁護士費用などの確認
    交渉や裁判手続きの進め方、弁護士費用などについて確認し、納得いただけた場合には委任契約書の締結へと進みます。

    ④ 委任契約書の締結・着手金のお支払い
    ご依頼内容を明記した委任契約書を締結し、着手金をお支払いいただきます。

    ⑤ 弁護士による対応
    弁護士が、学校側との協議や仮処分申立て・訴訟などの裁判手続きの対応を行います。進捗状況は随時お客さまへ共有し、対応方針についてもこまめにお客さまと協議します。

    ⑥ 解決・報酬金のお支払い
    退学処分の撤回などによって解決が得られた場合はご依頼終了となり、その結果に応じて報酬金をお支払いいただきます。
  2. (2)退学処分について弁護士に相談するメリット

    私立中学を退学させられたことについて、弁護士に相談することの主なメリットは以下のとおりです。

    • 学校側との交渉を弁護士に一任できます。労力が軽減されるとともに、法的根拠に基づいた主張によって、退学処分の撤回を引き出せる可能性が高まります。
    • 自力で学校側と交渉しようとする場合も、注意すべきポイントなどについてアドバイスを受けられます。
    • 学校側との交渉が決裂して、仮処分申立てや訴訟などの法的手続きへ移行する際にも、弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえます。

    退学に関するトラブルを適切な形で解決するためには、弁護士のサポートを受けることが近道です。退学処分に納得できない思いを抱えている方は、お早めに弁護士へご相談ください

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5、まとめ

私立中学で行われる退学処分のなかでも、安易な退学処分は違法となる可能性があります。

子どもが私立中学の退学をすすめられた、もしくは退学処分を受けたときは、まずは弁護士にご相談ください。状況を精査し、不当と判断すれば、学校との交渉や裁判手続きを通じて、退学処分の撤回や無効を主張します。

ベリーベスト法律事務所は学校問題専門チームを設けており、退学に関するトラブルにも随時対応しております。私立中学校だけでなく、私立・公立の高校や大学などの退学問題にもご対応可能です。

学校の退学処分でお困りの際は、まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修者
米澤 弘文

ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士  米澤 弘文

所属:東京弁護士会  登録番号:53503

学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。

  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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