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学校内盗撮が急増|被害生徒の対策・加害生徒や学校が負う法的責任

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更新日:2025年07月23日 公開日:2025年07月23日
学校内盗撮が急増|被害生徒の対策・加害生徒や学校が負う法的責任

近年、学校内の盗撮事件が急増しています。もし自分の子どもが盗撮事件の被害にあってしまったら親としてどのような対処をすればよいのでしょうか。

今回は、学校内で盗撮が増加する背景や、被害に遭った場合の対策、加害生徒や保護者に対する刑事罰や損害賠償請求、学校が負う法的責任などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、増える学校内盗撮

近年、学校内の盗撮事件が急増しています。
以下では、学校内の盗撮が増え続ける背景と、盗撮の加害生徒が負うペナルティについて説明します。

  1. (1)学校内盗撮が増える背景

    令和6年の犯罪情勢(警察庁長官官房)」によると、令和6年の少年の刑法犯検挙人員は2万1762人で、そのうち風俗犯は1220人でした。このうち性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)は638人で、前年比474.8%と大幅に増加しています。

    また、「令和6年中 少年育成活動の概況(警視庁生活安全部)」によると「風俗犯(撮影)」の検挙・補導の人数は、高校生が46.8%、中学生は27.3%で、前年から109件も増加しています。

    こうした盗撮事件の多くが学校内で行われたことが推測されます。学校内盗撮が増え続ける背景としては、主に以下の要因が考えられます。

    ① スマートフォンや小型カメラの普及
    高性能カメラが搭載されたスマートフォンや目立ちにくい小型カメラ(ペン型、眼鏡型など)の普及により盗撮行為がより容易に行えるようになりました。
    こうしたスマートフォンを使って中学生や高校生が簡単に盗撮できる環境であることが、学校内盗撮が増えている要因のひとつといえます。

    ② 犯罪という認識の欠如
    中学生や高校生は、盗撮が重大な犯罪であるという認識が薄く、自身の欲望のままに盗撮におよぶケースも少なくありません。学校や家庭での教育や指導不足も学校内盗撮が増加する要因のひとつと考えられます。

    なお、急増の背景には、令和5年に施行された「性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)」により、処罰の対象が広がったことも挙げられます。撮影罪については、以下で引き続き解説します。

  2. (2)性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)とは

    学校内盗撮をした加害生徒は、性的姿態撮影等処罰法の撮影罪により処罰されます。

    性的姿態撮影等処罰法は、相手の同意なく人の性的姿態などを撮影する行為を禁止する法律で、令和5年7月13日に施行されました。

    これまで盗撮についてペナルティを定めていた都道府県の「迷惑防止条例」との主な違いは以下の通りです。

    • 全国で基準が統一されたことで、都道府県間の取り締まり格差が解消
    • 撮影準備、画像の所持、拡散行為も処罰対象

    スマートフォン等の増加により急増する盗撮事件に対応するため、処罰の対象が広がり、重い罰則となっています。

  3. (3)【加害生徒が負う罪】盗撮のペナルティと罰則

    学校内盗撮をした加害生徒には、以下のようなペナルティが生じます。

    ① 撮影罪の適用による刑事罰(保護処分)
    盗撮は、性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)となる犯罪行為です。撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
    ただし、盗撮をした加害生徒が14歳以上の未成年者であった場合、成人のような刑事裁判ではなく少年事件として扱われますので、刑罰ではなく保護処分を受けることになります。
    また、加害生徒が14歳未満であった場合は児童相談所に送致された上で、「一時保護」や「児童自立支援施設への入所」などの措置が講じられることになります。

    ② 民事上の損害賠償責任
    盗撮された被害生徒は、盗撮行為により多大な精神的苦痛を被りますので、加害生徒に対して慰謝料などの損害賠償請求が可能です。
    加害生徒は、被害生徒に対して民事上のペナルティとして損害賠償義務を負います。

    ③ 退学・停学などの懲戒処分
    盗撮をしたことが学校に知られると退学・停学などの懲戒処分を受ける可能性があります。
    公立の小学校および中学校は、義務教育ですので原則として退学処分はありませんが、私立の学校や公立の高校では、学校側の判断により退学処分が行われる場合があります

2、小学校・中学校・高校で起きた盗撮事件

以下では、小学校・中学校・高校で実際に起きた盗撮事件について紹介します。

  1. (1)小学校の学習用タブレットで生徒の着替えが盗撮された事件

    小学校で複数の男子児童がタブレット端末を使って、女子児童の着替えの様子を盗撮したという事件です。録画状態にしたタブレットが更衣室として使われていた教室内に設置されていました。

    盗撮行為の発覚後、市の教育委員会は保護者に連絡をして、撮影データの削除を行い、被害を受けた女子児童に対してはカウンセラーによる面談なども行ったとのことです。

    なお、刑法では、刑事責任を問われる最低年齢は14歳ですので、上記のような小学生による盗撮行為に関しては撮影罪に問われることはありません。

  2. (2)中学校の修学旅行で入浴中の生徒が盗撮された事件

    複数の男子中学生が修学旅行先の宿泊施設において入浴中の女子生徒十数人を盗撮し、その動画や画像を学校内の友人らと共有していたという事件です。

    盗撮行為が発覚後、学校は警察に相談するとともに、保護者会を開催し、保護者と生徒との三者面談を行うなどの対応をしています。また、学校側は、被害を受けた女子生徒に対する心のケアにも取り組む意向を示しています。

    この事件は、中学3年生による盗撮行為ですので、14~15歳の生徒の犯行と考えられます。そのため、刑事責任能力があるため撮影罪に問われることになりますが、18歳未満の未成年であるため刑事罰ではなく少年事件による保護処分の対象になります。

  3. (3)高校の女子トイレが盗撮された事件

    男子生徒が高校の女子トイレ内に小型カメラを設置して、女子生徒の姿を撮影したという事件です。カメラ設置時に男子生徒の顔が映っていたため、盗撮事件の容疑者として特定され、逮捕に至ったようです。

    この事件は、18歳の高校生による盗撮行為ですので、刑事責任能力があるため撮影罪に問われることになります。18歳は、法律上は成人にあたりますが、少年法では「特定少年」として扱われますので、刑事事件ではなく少年事件の対象になります。

3、【被害生徒が知るべきこと】盗撮で学校が負う法的責任

学校内で盗撮事件が発生した場合、学校側にも法的責任がある可能性があります。
本章では、被害に遭った生徒や保護者が知るべき学校の責任について解説します。

  1. (1)学校の安全配慮義務とは?

    学校側には、生徒・児童が安心・安全に教育を受けられるように配慮する義務があります。これを「安全配慮義務」といいます。

    学校側が盗撮を防げたにもかかわらず防止策を講じていなかったなどの場合、安全配慮義務違反として、被害を受けた生徒やその保護者は、学校の設置者(公立であれば自治体、私立であれば学校法人)に対して、損害賠償請求をできる可能性があります。

  2. (2)学校の不作為責任が問われるケース

    学校内盗撮における安全配慮義務違反は、主に学校側が適切な対応をしなかったという「不作為責任」という形で問題になります。

    学校の不作為責任が問われる具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

    • トイレや更衣室などのプライバシー性の高い場所に十分な管理措置(鍵・監視・巡回・構造面の配慮など)が講じられていなかった
    • 加害生徒や児童に盗撮の兆候があったのに、学校が対応を怠った
    • 加害生徒や児童の問題行動歴が知られていたにもかかわらず、適切な指導をせず放置していた

    被害が明らかになった段階で、事実関係を記録し、早めに弁護士に相談することが重要です。

  3. (3)盗撮が起きた場合の学校の賠償責任と再発防止義務

    学校内盗撮で学校側に安全配慮義務違反が認められる場合、被害生徒は、以下のような損害を請求できる可能性があります。

    • 精神的苦痛に対する慰謝料
    • 被害生徒のカウンセリングや通院などに伴う費用
    など

    また、学校内盗撮が発生した学校では、再発防止に向けた以下のような対策が必要となります。

    • 更衣室やトイレの定期点検
    • 防犯カメラの設置と管理
    • スマートフォンやタブレットなどの電子機器の使用ルールの厳格化
    • 加害生徒への厳正な対応
    など

4、【盗撮被害にあったらすべきこと】対策・支援・法的措置

学校内盗撮が起きた場合、被害生徒側としては以下のような「対策」「支援」「法的措置」が必要になります。

  1. (1)盗撮被害に対する対策

    学校内盗撮が発生したときは、すぐに証拠を確保することをおすすめします。

    被害生徒の心理として盗撮動画などはすぐに削除したいという気持ちもあるかもしれません。しかし、学校側や加害生徒に対する法的措置をとるためにも証拠は重要です。削除せず保存しておきましょう。

    また、学校内盗撮が発生したときの相談先としては、学校、警察、弁護士などが考えられます。学校の対応が不十分なときは、教育委員会や行政に通報することも有効な手段といえます。

    盗撮事件発生後すぐに弁護士に相談すれば、警察や学校に通報するべきか、どのような手順で進めるべきかについて被害状況に合わせたアドバイスを受けられます。

  2. (2)盗撮被害に遭った生徒への支援

    盗撮は、被害生徒に対して重大な心の傷を残す可能性があります。被害生徒の保護者は、学校側とも協力しながら以下のような支援をしていくようにしましょう。

    • カウンセリングの提供
      学校のスクールカウンセラーや外部支援機関との連携
    • 学習、登校支援
      学校に登校しづらくなった被害生徒に対する個別対応や学習環境の調整
    • プライバシーの保護
      被害生徒の名前や情報が外部に漏れないように管理を徹底
  3. (3)盗撮被害に対する法的措置

    学校内盗撮が発生した場合には、刑事および民事上の法的責任を追及することができます

    以下のような法的措置を講じるには、専門的な知識や経験が必要になりますので、早い段階から弁護士に相談してサポートを求めましょう。

    ① 刑事上の法的措置
    盗撮は、性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)にあたりますので、加害生徒の処罰を希望するときは、警察に被害届の提出を行います。

    ② 民事上の法的措置
    盗撮により精神的苦痛を被った被害生徒は、加害生徒に対して慰謝料などの損害賠償請求を行うことができます。また、学校側に安全配慮義務違反があるときは、学校側にも損害賠償請求が可能です。

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5、まとめ

学校内での盗撮事件は、スマートフォンやタブレットの普及により、誰でも巻き込まれる可能性があります。

被害に遭われた場合は、早めに弁護士にご相談ください。弁護士は被害生徒や保護者の代理人として、学校側の対応が適切だったかを法的に検証し、加害生徒やその保護者に対する損害賠償請求の手続きをサポートします。

学校で盗撮被害に遭った場合、弁護士は有効な相談先になります。学校内盗撮で弁護士を選ぶ際は、学校問題専門チームがあるベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修者
米澤 弘文

ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士  米澤 弘文

所属:東京弁護士会  登録番号:53503

学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。

  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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