いじめの弁護士コラム

私立学校でいじめ被害に! 解決が難しい理由と具体的な6つの対処法

  • いじめ
2025年06月16日
私立学校でいじめ被害に! 解決が難しい理由と具体的な6つの対処法

東京都の調査によると、令和5年における都内の私立学校の小学校・中学校・高校におけるいじめの認知件数は、すべて前年比増という結果でした(詳細は1章にて後述)。

私立学校は教育委員会の管轄外であること、独自の教育理念や校内規律を重んじることから、いじめの解決が難しくなる傾向にあります。

本記事では私立学校におけるいじめ問題の特徴や、解決に向けた対処法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、私立学校におけるいじめ問題の特徴|なぜ解決が難しいのか?

私立学校は、私立学校法により一定の自主性や教育方針の自由が認められています。

しかしその一方で教育委員会等の外部の監督が届きにくいため、いじめが発生すると解決が難しくなる傾向にあります。

  1. (1)私立学校におけるいじめの状況

    令和5年度に東京都が実施した調査によれば、私立学校におけるいじめの認知件数は、令和4年度に比べて小学校・中学校・高等学校において増加しています。

    <東京都内の私立学校におけるいじめの認知件数>

    令和4年度 令和5年度
    小学校 385件 447件
    中学校 285件 442件
    高等学校 136件 173件
    特別支援学校 1件 0件

    参考:「令和5年度における都内私立学校の児童生徒の問題行動・不登校等の実態」(東京都)

    いじめの態様としては、以下の内容が多数を占めています。

    <東京都内の私立学校におけるいじめの態様(令和5年度)>

    冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる 627件
    軽くぶつかられたり、遊ぶふりをしてたたかれたり、蹴られたりする 269件
    仲間はずれ、集団による無視をされる 246件
  2. (2)私立学校は教育委員会の管轄外|いじめに対する外部の監督が届きにくい

    私立学校は、公立学校に比べて自主性が重視されており、行政機関による監督が緩やかであるのが大きな特徴です。

    公立学校を監督するのは各都道府県の教育委員会ですが、私立学校については文部科学大臣または都道府県知事とされています。

    私立学校は教育委員会の管轄外とされているため、教育内容や学校生活の状況などについて、外部の監視の目が届きにくいともいわれています。特にいじめが発生した場合には、監督の緩やかさが災いして、解決が難しくなってしまうケースがあります。

    ただし、私立学校におけるいじめ問題への対応は、自治体によって異なる部分があります。

    たとえば茨城県では、私立学校の運営法人を直接監督するのは法令上茨城県知事ですが、いじめ対応の実務については、以前は私学振興室(県庁で私立学校に関する事務を担当する部局の通称)が所管していました。
    しかし、現在は公立学校と同様に教育委員会が所管し、これにより、公立私立のいじめ対応が、教育委員会を中心に一元的に進められています。
    参考:「茨城県いじめ防止基本方針」(茨城県教育委員会)

    私立学校におけるいじめ問題を解決するためには、自治体ごとの体制を踏まえながら対応を検討することも大切です。

2、私立学校で子どもがいじめを受けた場合の対処法

私立学校に通う子どもがいじめを受けている場合は、以下の方法で対応しましょう。

  1. (1)子どもから事情を聞き、状況を整理する

    まずは子どもから事情を聞き、どのようないじめを誰から受けているのかなど、いじめに関する状況を整理しましょう。

    親として、子どもの気持ちに寄り添いながら対応することが大切です。子どもの話を否定せず、何があっても味方だということをしっかりと伝えながら事情を聞きましょう。

    子どもから聞いた状況は、時系列に沿ってメモにまとめておくと、後で他の父母や学校側の話を聞く際などに役立ちます。

  2. (2)他の児童生徒の保護者にも話をして、情報収集や証言の協力を求める

    子どもから聞いた事情が合っているかどうかを確認するためには、第三者から話を聞くことも必要になります。

    親しくしている保護者(父母など)がいれば、いじめについて何か知っているか確認し、子どもの話と照らし合わせながら情報を整理することができます。

    また、自分の子どもの味方になってくれそうであれば、状況を見ながら証言の協力を頼んでみることも考えられます。いじめがあったことや、その内容を証言してくれる人がいれば、学校側や加害者との折衝において有利に働きます。

  3. (3)いじめの証拠を確保する

    子どもがいじめを受けている場合には、その証拠を確保することが望ましいです。いじめの客観的な証拠があれば、学校側に対して調査を求める際や、加害者に対して損害賠償を請求する際などに役立ちます。

    たとえば暴力を受けた場合は、けがに関する医師の診断書などが証拠になり得ます。LINEやSNSなどで攻撃的なメッセージを受け取った場合には、そのスクリーンショットを保存しておきましょう。

    また、子どもが受けたいじめを実際に目撃した児童・生徒がいる場合は、証言を依頼することも考えられます。

  4. (4)学校にいじめ被害を報告して、調査を求める

    子どもをいじめ被害から救うためには、学校に調査を求める必要があります。ただし、学校に調査協力を求めるタイミングは、状況を見ながら判断しましょう。

    たとえば、子どもがいじめ被害に苦しんでいるようなら、早い段階で学校に調査協力を求めることが望ましいです。

    これに対して、いじめなのか判断に迷う段階であるならば、まずは状況を冷静に把握し、証拠や事実関係を整理することが大切です。性急に学校へ訴えることで、相手方や学校側の警戒を招き、かえって真相解明が困難になるおそれもあります。

    子どもからの聞き取りや記録の蓄積を進めつつ、弁護士に相談し、今後の対応方針についてアドバイスを受けることをおすすめします。

  5. (5)行政機関の窓口に相談する

    いじめ被害に対して、学校側が誠実に対応してくれるとは限りません。残念ながら、いじめそのものを隠蔽(いんぺい)しようとするような学校も存在します。

    学校側が適切に対応してくれないときは、国や自治体の窓口に相談するのもひとつの手段です。政府広報オンラインや文部科学省では専用ダイヤルやSNSを設けており、子ども専門の相談員から、いじめ被害の解決方法などについてアドバイスを受けられます。

  6. (6)弁護士に相談する

    私立学校のいじめ被害を解決するためには、弁護士にアドバイスを求めることも有効な手段です。

    弁護士は、学校側に対する調査や再発防止策の要請、加害者側に対する損害賠償請求など、状況に応じてさまざまにサポートを行います。

    実績と知見のある弁護士からのアドバイスは、家族の不安を和らげ、具体的な解決に向けた一歩になります。自力でいじめ被害に対処するのが難しい、何からすべきか分からず不安な場合は、まずは弁護士へご相談ください。

3、いじめ問題を解決するための心構え

保護者がいじめ被害へ対処するに当たっては、子どもの安全確保を優先することが大切です。学校でどのような状況にあるのかを子どもから聞き取り、子どもに対するいじめが悪化しないように注意しつつ対応しましょう。

また、子どもに寄り添った解決策を考えるという姿勢も重要になります。どのように解決してほしいのかを丁寧に聞き取って、できる限り子どもの意向に沿った解決を目指しましょう。

いじめ被害の解決に向けて、学校側や加害者側とやり取りする機会も発生します。個人で対応するのは困難なケースも少なくないため、弁護士に対応を任せることをおすすめします。

ただし、弁護士の介入によって大ごとにしたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。その場合は、弁護士が表に出ずに、後方からアドバイスなどをすることによってサポートすることも可能です。まずはお気軽にご相談ください。

弁護士によるいじめ問題解決の後方支援のイメージ

4、私立学校におけるいじめ被害について、弁護士ができること

私立学校におけるいじめ被害をスムーズに解決するためには、弁護士に相談することが近道です。

弁護士は、主に以下の対応によっていじめ被害の解決をサポートしています。


  1. (1)状況に合わせた解決方法の提案

    弁護士は、依頼者や子どもから丁寧に事情を聞き、状況に合わせていじめ問題の解決方法を提案します。

    いじめと一口にいっても、その内容や深刻度はさまざまです。暴力や暴言といった明らかな加害行為のほか、無視や仲間はずれ、SNS上での誹謗(ひぼう)中傷、教師による不適切な対応など、多岐にわたります。特に私立学校の場合、学校独自の教育方針があり、適切に対応を進めることが重要です。

    弁護士は法的知見を生かし、いじめ被害の解決をサポートします。

  2. (2)加害者側や学校側とのやり取りの代理・後方支援

    加害者側や学校側との主なやり取りは、弁護士にお任せいただけます。また、学校側との摩擦をできるだけ抑えて穏便に解決したい場合は、弁護士が表に出ないことも可能です。

    たとえば、証拠集めの方法、学校への効果的な相談の仕方、交渉記録の残し方など、具体的なアドバイスによる後方支援を行います。

    状況に応じて、途中から弁護士が直接交渉することもできますので、まずはご希望をお聞かせください。

  3. (3)損害賠償請求の交渉・裁判手続きの代理

    いじめの被害者は、精神的苦痛や治療費などの損害に応じて、加害者に損害賠償請求をできる可能性があります。

    弁護士は、損害賠償請求に関する示談交渉や、裁判手続き(調停・訴訟など)を被害者に代わって行います。弁護士が介入することで、感情的な対立を避けながら、冷静に手続きを進めることができ、心理的負担も軽減されるでしょう。

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5、まとめ

私立学校では、内部判断で事実関係の調査や対応が完結してしまうことも少なくなく、被害者や保護者が声を上げにくい雰囲気が生まれがちです。弁護士はこうした状況を踏まえながら、学校へ事実確認の要求や情報開示の請求を行い、必要に応じて法的手続きもサポートします。

ベリーベスト法律事務所では、学校問題専門チームが、いじめ被害の対応を行い、できる限り早期の問題解決をサポートいたします。

私立学校に通う子どもがいじめに悩んでいる場合には、速やかにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修者
米澤 弘文

ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士  米澤 弘文

所属:東京弁護士会  登録番号:53503

学校問題専門チームのリーダーとして、いじめや退学、事故など、学校・保育園・幼稚園等の管理下で発生する問題に幅広く対応。
東京弁護士会「子どもの人権110番」では長年にわたり相談業務に従事しているほか、ラジオやWEBメディアを通じて学校トラブルに関する情報発信にも力を注ぐ。

  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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