いじめの弁護士コラム

学校がいじめ問題に対応しない! 適切な対処方法と相談先とは

  • いじめ
2025年04月14日
学校がいじめ問題に対応しない! 適切な対処方法と相談先とは

学校で子どもがいじめの被害に遭った場合は、学校側に適切な措置を講じるよう求めましょう。

しかし、中には学校側にいじめの被害を相談しても、適切な対策を講じてくれない場合もあり得ます。そのような場合は、弁護士に相談のうえ対応を検討していくことをおすすめします。

本記事では、いじめ問題について学校側がとるべき対応や、学校側が適切に対応しない場合の相談先などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、いじめ問題において学校側がとるべき対応と法的責任

被害児童生徒側からいじめの相談を受けた場合、学校側はどのように対応すべきなのでしょうか。学校側に求められる対応と法的責任について解説します。

  1. (1)学校側はいじめ問題に対応する義務がある

    いじめ防止対策推進法により、学校側はいじめ問題に対応する法的義務があります。すなわち、学校は、いじめの相談を受けた場合、いじめの事実があると認めるときは、速やかに、いじめの事実の確認を行うための措置を講じ、いじめを受けた児童等への支援やいじめをおこなった児童等に対する指導等を行う必要があります(いじめ防止対策推進法23条)。

    しかし、中には、「対応が面倒」「いじめ防止対策推進法の理解が浸透していなかった」など、学校側の不合理な理由によって、いじめ問題の解決に向けた対応が進まないこともあり得ます。そのような場合は、後述する対応を検討するとともに弁護士へご相談ください。

  2. (2)いじめ重大事態につき、学校側がとるべき対応

    いじめ防止対策推進法では、以下のいずれかに該当する場合を「重大事態」と定義しています(同法第28条第1項)。

    • ① いじめにより当該学校に在籍する児童等(児童生徒)の生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
    • ② いじめにより当該学校に在籍する児童等(児童生徒)が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。

    被害者側から重大事態の申し立てがあった場合、学校側は以下の流れで調査などを行うことが求められます。

    • ① 教育委員会・行政機関等への報告
    • ② 調査組織の設置・調査の実施
    • ③ 被害児童生徒・保護者に対する調査結果の説明・報告
    • ④ 調査結果を踏まえた措置
      ※被害者のケア、加害者への対処、再発防止措置など
    • ⑤ 調査結果の公表検討

    さらに学校側には、重大事態について文部科学省に報告することも求められています。
    参考:「令和5年3月10日いじめ重大事態に関する国への報告について(依頼)」(文部科学省)

  3. (3)いじめ問題への対応を怠った学校側が負う責任

    学校側は、児童生徒が学校生活を安全に送れるように配慮する義務(=安全配慮義務)を負っています。

    学校側がいじめ問題を認識していながら、適切な対応をとらずに放置している場合は、安全配慮義務違反に当たると考えられます。この場合、被害児童生徒は学校側に対して、学校側が対応を怠ったことにより被った損害(慰謝料など)の賠償を請求できます。

    学校側に対する損害賠償請求には、対処義務を怠った教員個人に対する請求と、学校の設置者に対する請求の2つのパターンがあります。
    国公立学校か私立学校かによって、以下のとおり取り扱いが異なる点にご留意ください。

    【国公立学校の場合】
    ① 教員個人に対する請求
    請求することはできません(国家賠償法の解釈上、教員は個人責任を負わないと解されているため)。

    ② 学校の設置者に対する請求
    国、都道府県または市区町村に対して、国家賠償責任に基づく損害賠償を請求できます(国家賠償法第1条第1項)。
    国立・公立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:学校の設置者(国・都道府県・地方自治体など)
    【私立学校の場合】
    ① 教員個人に対する請求
    不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法第709条)。

    ② 学校の設置者に対する請求
    学校法人などに対して、使用者責任に基づく損害賠償を請求できます(民法第715条第1項)。
    私立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:教師・学校法人

2、学校がいじめ問題に対応しない! どうすればいい?

学校側がいじめ問題に対応しない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

  1. (1)子どもの話を聞いて、事実関係を時系列順にまとめる

    まずは子どもの話を丁寧に聞き、いじめに関する事実関係を正確に把握しましょう。学校側から何らかの報告を受けている場合は、その内容を念頭に置きつつ、子どもの説明とどこが異なっているかも整理する必要があります。

    子どもの話や学校側の報告などから判明した事実関係は、時系列順にまとめておきましょう。後に学校側と話し合う際や、教育委員会・警察・弁護士などに相談する際に役立ちます。

  2. (2)いじめに関する証拠を確保する

    いじめを受けたことについて客観的な証拠を確保していれば、学校側に対して具体的な対応を求めやすくなります。
    また、教育委員会や警察に相談した際にも動いてもらいやすくなりますし、弁護士を通じた損害賠償請求もしやすくなります。

    いじめの証拠になり得るものとしては、以下の例が挙げられます。これらの証拠をできる限り確保しておきましょう。

    • 写真、動画、音声データ
    • いじめによって壊された物や、汚された物
    • 子どもが書いた日記
    • いじめによる怪我や精神疾患に関する医師の診断書
    • 友人などの証言
    など
  3. (3)学校側に対して要望書を提出する

    学校側がいじめについて具体的な対処をしないときは、要望書を提出することも考えられます。

    要望書には、主に以下の内容を記載します。

    • いじめに関する事実関係、時系列
    • 子どもが受けた被害の内容、現在の子どもの状況
    • 学校側に対して求める対応
    • 回答期限
    など

    特に代理人弁護士の名義で要望書を提出すれば、学校側が真剣に対応を検討し始める可能性が高まります。

3、学校がいじめに対応してくれない場合の相談先

いじめ問題について、学校側が十分な対応をとらない場合には、教育委員会・警察・弁護士などに相談しましょう

  1. (1)教育委員会

    教育委員会は、主に公立学校における教育を管轄する行政機関です。各都道府県に統括的な位置づけの教育委員会が設置されているほか、各市区町村にも教育委員会が設置されています。

    教育委員会にいじめ問題を相談することで、これまで十分な対応をとらなかった学校側が調査を開始するなど、動き出すこともあります。

    また、公立学校においていじめに関する重大事態が発生したときは、学校は教育委員会を通じて、設置者である地方公共団体の長にその旨を報告しなければなりません(いじめ防止対策推進法第30条第1項)。
    そして、重大事態の報告を受けた地方公共団体の長は、必要に応じて調査を行ったうえで、その結果を踏まえて、教育委員会とともに対処や再発防止の措置を講じることが義務付けられています(同条第5項)。

    学校側が教育委員会への報告を怠っている場合は、教育委員会に対して直接いじめの被害を訴えることで、教育委員会が事態の深刻さを認識し、学校に対する指導や、教育委員会主導による対応を行ってもらえる可能性があります。

    ただし、私立学校は教育委員会の管轄外となっています。私立学校で子どもがいじめ被害に遭った場合は、学校と都道府県の私立学校主管部課に相談しましょう。

  2. (2)警察

    いじめについては、以下のような犯罪が成立することがあります。

    ① 傷害罪(刑法第204条)
    暴力などによって被害者に怪我をさせた場合は、傷害罪が成立します。法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

    ② 脅迫罪(刑法第222条)
    被害者を脅迫した場合は、脅迫罪が成立します。法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    ③ 強要罪(刑法第223条)
    被害者に土下座など、義務のない行為を強要した場合は、強要罪が成立します。法定刑は「3年以下」の懲役です。

    ④ 名誉毀損(きそん)罪(刑法第230条)
    公然と事実を摘示して被害者の名誉を傷つけた場合は、名誉毀損罪が成立します。法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。

    ⑤ 侮辱罪(刑法第231条)
    事実を摘示せずに公然と被害者を侮辱した場合は、侮辱罪が成立します。法定刑は「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。

    ⑥ 恐喝罪(刑法第249条)
    被害者を脅して金品を交付させた場合は、恐喝罪が成立します。法定刑は「10年以下の懲役」です。

    ⑦ 器物損壊罪(刑法第261条)
    被害者の所有物を壊した場合は、器物損壊罪が成立します。法定刑は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。

    これらの犯罪に当たるいじめを受けた場合は、警察に相談しましょう。捜査に動いてもらえれば、加害者に対する保護処分(少年院送致など)や刑事訴追につながる可能性があります。

  3. (3)弁護士

    法律の専門家である弁護士に相談することも、いじめ問題において有効な手段です。

    弁護士の役割は、依頼者の法的な権利を守ることです。いじめ被害の問題に関しては、依頼者の代理人として、学校側との話し合いや適切な調査の働きかけ、損害賠償請求のサポートなどを行っています。

    弁護士から学校側に対して働きかけることで、学校側が態度を変えて解決に向けて動き出すことも少なくありません。学校側の対応に不満がある場合、弁護士へご相談ください

4、いじめ問題を弁護士に相談すべき理由

学校側が対応してくれない・話し合いが進まない、子どものためにどのように対応していけばよいかわからないといった場合、速やかに弁護士へご相談ください。

いじめ問題について弁護士は以下のようなサポートを通して、学校側へ適切な対応を求めていきます。

  • 法的な観点から適切な対応方針を検討できる
  • 証拠集めなどのサポートができる
  • 学校側や加害者とのやり取りを一任でき、保護者自身の労力やストレスが軽減される
  • 訴訟などの裁判手続きが必要になった場合も、対応を一任できる
  • 弁護士が表に出ることなく、後方支援という形での依頼もできる(ニーズに応じた対応が可能)
など

一日も早く弁護士に相談することが、いじめ問題の早期解決につながります。ご家族だけで問題を抱え込むことなく、すぐに弁護士へご相談ください。

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5、まとめ

子どもが受けているいじめについて、学校側が適切に対応してくれないときは、教育委員会、警察、弁護士などに相談しましょう。

特に弁護士は、学校側とのやり取りに加えて、損害賠償請求に備えた証拠集めなどのサポートも行っています。いじめ解決に向けた具体的な対応を迅速に行ってほしい場合は、弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、いじめの被害者や保護者からのご相談を随時受け付けております。子どもに対するいじめについて学校側に相談しているものの、十分な対応をとってもらえずお困りの方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
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  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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