専門学校や看護学校で退学処分を命じられた場合、必ずしも退学(中退)をそのまま受け入れる必要があるとは限りません。理由が不合理である場合は、退学処分の無効を主張できる可能性があります。
不合理な退学処分を受けた場合には、弁護士のサポートを受けながら、協議や裁判手続きを通じて適切に対応しましょう。
本記事では、専門学校や看護学校の退学処分が無効になるケースや、不当な退学処分を受けた場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
看護学校をはじめとした専門学校から不合理な理由で退学処分を言い渡された場合、生徒・学生およびその保護者は、どのように対応していくのがよいのでしょうか。ここでは、退学処分の基礎知識と、退学処分が無効となるケースについて紹介します。
退学は、学校において行われる懲戒処分の中でもっとも重い処分です。
退学処分による生徒・学生側の不利益は非常に大きいため、合理的な理由のない退学処分は無効となります。
退学処分に関しては、各専門学校が独自に基準を設けています。
厳格な基準を設けている専門学校においては、一般的にはそれほど深刻とは思われない行為を原因として退学処分を受けてしまうかもしれません。
しかし、場合によっては学校側が設けている基準自体が不合理と判断されるケースもあります。退学処分を受けたことに納得できないなら、学校側に対して撤回を求めましょう。
退学処分が無効になり得るケースとしては、以下のような例が挙げられます。
上記のようなケースに該当する場合は、弁護士のサポートを受けながら退学処分の無効を主張しましょう。
専門学校での退学処分が違法と判断された裁判例を紹介します。
東京地裁平成26年3月28日判決の事案では、保育専門学校の退学処分を受けた生徒が、学校側に対して損害賠償を請求しました。
学校側は、入学以前から当該生徒が開設・投稿していたブログの内容が、「学校の秩序を乱し、その他生徒としての本分に反した者」という学則の退学事由に該当することを理由に、生徒に対して退学処分を行いました。
ブログには、生徒自身の水着姿や露出の多い姿など、性的な要素が含まれる写真や動画が投稿されていました。学校側は、生徒に対してブログを削除するよう求めましたが、生徒はブログを削除せず、公開範囲を限定するにとどまりました。しかし、実際には、閲覧を申請した者が自動的に承認される設定になっていたため、希望すれば誰でもブログを閲覧できる状態にありました。
東京地裁は、退学処分は、学生の身分を剝奪する重大な措置であるため、学生に改善の見込みがなく、学外に排除する(退学させる)ことが教育上やむを得ないと認められる場合に限り行うべきであることを示しました。
そのうえで、学校側が生徒に対してブログの削除を求めたこと自体は、学生を規律する包括的権能に基づく教育上の措置として許されると判断しました。
しかしながら東京地裁は、学校側が退学処分を行う前の経緯につき、以下の2つの問題点を指摘しました。
東京地裁は、上記の問題点などを踏まえると、退学処分の時点においては、生徒に改善の見込みがなく、学外に排除することが教育上やむを得なかったとは認められないとして、退学処分を違法と判断しました。
そして学校側に対し、生徒が支払った入学金・授業料・教材費の合計額、精神的損害に対する慰謝料10万円、弁護士費用10万円の計106万448円の損害賠償を命じました。
本事案では、学校側が生徒に対してきちんとした形で注意を行わなかったことや、退学よりも軽い懲戒処分を一切行わなかったことなどが特徴的といえます。
この事案のように、学校側が性急に、不合理な理由で退学処分を言い渡してきたような場合には、その違法性を主張することで、慰謝料や損害賠償を請求できる可能性があります。
もし専門学校や看護学校から突然不当な退学処分を告げられたら、弁護士のサポートを受けながら、以下の流れで対応しましょう。
まずは学校側に対して、退学処分の理由を詳しく説明するよう求めていきます。学校側が主張する処分理由が明確になれば、それに対する反論を考えることができます。
退学処分の理由については、口頭で説明を受けるだけでなく、書面で回答してもらいましょう。書面回答が得られれば、後に訴訟などの裁判手続きへ発展した際に、その書面を証拠として提出することができます。
書面回答が得られない場合は、ひとまず口頭で説明を受けた理由に対する反論を考えましょう。
退学処分の理由に対する反論がまとまったら、学校側に対して退学処分の撤回に関する協議を求めることになります。
学校側に真摯(しんし)な対応を求めるためには、内容証明郵便を送ることが効果的です。内容証明郵便を送ることで、協議を拒否すれば、訴訟などの裁判手続きに発展する可能性が高いというメッセージを伝えることができます。
協議においては、退学処分が不合理であることを、法的な根拠に基づいて主張することが大切です。学校側が不利を悟れば、復学を含めた和解に応じる可能性が高まります。
学校側が協議に応じない場合は、裁判手続きを通じて復学を求めましょう。
裁判手続きの代表例は訴訟ですが、訴訟の判決が確定するまでには長い期間がかかるため、その間復学できないと、学習の機会を大きく逸してしまいます。
そのため、まずは裁判所に対して、復学を認める仮処分を申し立てることが可能です。
退学処分が違法であることと、退学状態が続くことで著しい損害が生じることを疎明(裁判で争う事項について、証拠などによって一応確からしいとの推測を裁判官に生じさせること)すれば、迅速な手続きによって、学校側に対して復学を命ずる仮処分命令が発せられます(民事保全法第23条第2項)。
仮処分命令はあくまでも暫定的なものです。復学を確定させるには、退学処分の無効の確認を請求する訴訟を提起しましょう。また、仮処分命令が発せられなかったとしても、訴訟で改めて退学処分の無効を主張することができます。
退学処分の無効と併せて、学校側に対して損害賠償を請求することも可能です。復学を希望しない場合、損害賠償だけを請求することもできます。学校側に対して支払った入学金・授業料・教材費、慰謝料、弁護士費用などが損害賠償の対象になり得ます。
訴訟では、裁判所の法廷において厳格な主張・立証をすることが求められます。手続きの内容も専門的なので、弁護士のサポートを受けながら準備を整えましょう。
看護学校をはじめとした専門学校から、突然不合理な理由で退学処分を受けてしまったら、すぐに弁護士へ相談しましょう。
弁護士に相談すれば、退学処分の撤回や損害賠償を求めるに当たり、対応方針についてアドバイスを受けられます。退学処分の違法性について法的観点から詳細に検討し、学校側に対する反論を適切に組み立てることが可能です。
また、学校との交渉や裁判手続きが必要になった場合でも、弁護士に対応を一任することができます。交渉や手続きにかかる労力やストレスが大幅に軽減されるほか、法的知識に基づいた迅速かつ的確な対応によって有利な解決を得られる可能性が高まります。
専門学校・看護学校の中には、学校を卒業することで資格取得または受験資格を得られるという場合もあるでしょう。
そのような場合において、退学処分を受け入れてしまうと将来の職業選択への直接的な影響が生じてしまいます。そのため、不合理な退学を迫られたら、まずは弁護士に相談することが大切です。
経験豊富な弁護士のサポートを受けることが、不当な退学処分によって被る不利益を回復するための近道です。看護学校、専門学校での退学処分に納得できない生徒・学生やそのご家族の方は、お早めに弁護士へご相談ください。
参考
学校での問題・トラブルの
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看護学校などの専門学校で退学を命じられたとしても、すぐに諦めてはいけません。その理由が不合理であれば、退学処分の無効を主張して争う余地があります。
退学処分の無効を主張するには、まず学校側から理由の説明を受けたうえで、弁護士と協力して反論を考えましょう。そして、弁護士を通じて学校側との協議や裁判手続きを適切に進めれば、復学や損害賠償請求などによる解決が見えてきます。
ベリーベスト法律事務所は、看護学校や専門学校とのトラブルに関するご相談を受け付けております。不合理な退学処分に対して徹底的に反論し、復学や損害賠償によってお客さまの権利が守られるように尽力いたします。看護学校、専門学校から受けた退学処分に納得できない方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
所在地 | 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス) |
設立 | 2010年12月16日 |
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