学校や保育園・幼稚園など、子どもの集団生活においては、友達とけんかをしたり、意図せず友達に怪我を負わせてしまったりすることがあります。
ご自身の子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、突然のことでパニックになってしまうかもしれませんが、まずは冷静に状況を整理するようにしましょう。そのうえで、子どもに非があるのであれば、被害者側への謝罪など、適切な対応をとるようにしてください。
また、子ども同士のトラブルといっても、法的な賠償責任が生じて、高額な賠償金を請求される可能性もありますので注意が必要です。
今回は、学校や保育園・幼稚園で子どもが怪我をさせてしまった場合の対応方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
学校や保育園・幼稚園で子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、まずはどのように対応すればよいのでしょうか。以下では、加害者側の親がとるべき行動について説明します。
学校や保育園・幼稚園から子どもが友達に怪我をさせてしまった旨の連絡が来ると、突然のことで取り乱してしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて当時の状況を確認するようにしてください。
電話での説明だけで詳しく状況把握ができないときは、直接学校や保育園・幼稚園に出向いて確認をすることも必要です。どのような状況で怪我をさせてしまったのかがわからなければ、今後の対応を決めることができませんので、早期に事実確認を行うことが大切です。
学校や保育園・幼稚園への事実確認と並行して、どのような経緯や意図で友達に怪我をさせてしまったのか、当事者である子ども本人にも話を聞いてみましょう。
ただし、子どもから話を聞くときは、子どもに寄り添って冷静に話を聞くようにしてください。友達に怪我をさせてしまったことについては悪いことであると指摘し、反省を促すことも必要ですが、感情的になって怒鳴りつけてはいけません。子ども自身も友達に怪我をさせたことで戸惑っているかもしれませんので、子どもと一緒に問題を解決する姿勢で接するようにしましょう。
学校や保育園・幼稚園、子どもからの説明を踏まえて、友達に怪我をさせたことについて子どもに非がある場合には、できる限り早期に被害者に謝罪をすることが大切です。真摯(しんし)な態度で謝罪をすることで、被害者側から厳しく追及されることなく穏便に解決できる可能性があります。
なお、被害者側の連絡先がわからないという場合には、学校や保育園・幼稚園を通じて謝罪の意向がある旨を伝えてもらい、謝罪の場を設けてもらえないか提案してもらうとよいでしょう。
子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、子どもおよびその親にはどのような法的責任があるのでしょうか。
子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、以下のような民事上の損害賠償責任が発生する可能性があります。
① 不法行為に基づく損害賠償責任|子どもの責任
子どもが故意または過失によって友達に怪我をさせてしまった場合、不法行為に基づく損害賠償責任を負います。
ただし、子どもが自らのした行為の責任について理解する能力がない場合には、責任無能力者にあたりますので、子ども自身の不法行為責任は否定されます(民法712条)。
なお、おおむね12歳前後であれば責任能力を備えていると考えられますが、年齢ではなく知的能力や発達度合いの程度などを踏まえて判断します。
② 不法行為に基づく損害賠償責任|親の責任
子どもに責任能力がある場合には、未成年者であっても子ども自身が賠償義務を負い、原則として親が損害賠償義務を負うことはありません。
しかし、子どもに責任能力がある場合でも、親の監督義務違反と不法行為による結果との間に因果関係が認められる場合には、親にも不法行為責任が発生しますので、子どもとともに賠償金を支払うことになります。
③ 責任無能力者の監督義務者としての賠償責任|親の責任
前述の通り、子どもに責任能力がない場合、子ども自身は賠償責任を負いません(民法712条)。
その代わりに、監督者である親が監督義務者としての賠償責任を負いますので、子どもの代わりに被害者に賠償金を支払う必要があります(民法714条1項)。
もっとも、監督義務者は、監督義務を怠らなかったことまたは監督義務を怠らなかったとしても損害が生じたことを立証すれば、賠償責任は負いません。ただし、監督義務者が賠償責任を免れることはハードルが高く、ほとんどのケースで監督義務者の賠償責任が認められています。
被害者側から請求される可能性のある損害賠償の内容としては、以下のような項目が挙げられます。
① 治療費
被害者が怪我をして病院で治療や入院をした場合には、治療費や入院費を支払わなければなりません。
② 入院交通費
怪我の治療のための通院で公共交通機関を利用した場合には、実費相当額が損害となります。また、親が運転する車で通院をした場合は、1kmあたり15円で計算したガソリン代が損害となります。
③ 入院付添費用
入院が必要となった場合、入院期間中は親が付き添うことになるでしょう。その場合には、入院付添費用という損害が発生します。被害者が幼児や児童など自分ひとりでは入院中の身の回りのことができないようなケースでは、入院付添費用が損害として認められる可能性が高いです。
④ 休業損害
子どもの入院や通院に親が付き添うために仕事を休んだ場合、被害者側には収入の減少という損害(休業損害)が生じます。これも賠償の対象となる損害に含まれます。
⑤ 慰謝料
慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金をいいます。怪我をさせられたことで精神的苦痛を被った被害者から慰謝料を請求される可能性があります。
友達に暴力を振るって怪我をさせた場合、傷害罪が成立します(刑法204条)。故意に暴力を振るったわけではないとしても、相手に怪我をさせてしまったときは過失傷害罪が成立します(刑法209条1項)。
成人であればこのような犯罪行為があれば、刑事事件として処罰されますが、未成年者の場合には、少年事件として処理され、家庭裁判所の審判が行われます。被害者側が被害届を提出した場合などには、少年事件として処理される可能性もあるでしょう。
ただし、子どもが14歳未満の場合、刑事責任能力がありませんので、刑事罰が科されることはありません。
被害者側から法的責任などを追及された場合には、以下のように対応しましょう。
子どもが友達に怪我をさせてしまったことについて、被害者側から損害賠償を請求される可能性があります。加害者である子ども本人または親に法的責任がある場合には、被害者に対して賠償金の支払いを行わなければなりません。
ただし、被害者側が請求する金額が法的に正当なものであるとは限りません。また、加害者が一方的に悪い場合だけではなく、被害者である子どもにも責任がある場合には過失相殺により賠償額が減額される可能性があります。そのため、被害者側から賠償金の支払いを求められたとしても、すぐに支払いに同意せず弁護士にご相談ください。
傷害罪や過失傷害罪が成立するような場合には、被害者から警察に被害届を提出されることもあります。
未成年者であれば原則として刑事事件の対象にはなりませんが、少年事件として保護処分を受ける可能性があります。重い処分を回避するには専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、早めに弁護士にご相談ください。
子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、まずは親同士で話し合いをして解決を図るのが基本となります。しかし、被害者側との話し合いがこじれたり、冷静な話し合いができなかったりする場合には、学校や保育園・幼稚園側を含めて話し合いをすることも有効な対処法です。
第三者が同席することにより冷静な話し合いが期待できるほか、怪我をした現場を見ていた保育者や教師などから当時の状況を説明してもらうことで、客観的な状況を踏まえた適切な解決が可能となるでしょう。
なお、被害者側から不当な要求をされたとしても、焦ってその場で同意しないようにしてください。保護者がご自身で判断できないときは、一度持ち帰って検討する旨を伝えて、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
学校や保育園・幼稚園で子どもが友達に怪我をさせてしまって慰謝料を請求されていたり、話し合いがこじれてしまったりした場合には、弁護士にご相談ください。
子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、まずは保護者同士で話し合いをすることになります。
しかし、被害者側が自身の子どもに怪我をさせられたことで感情的になり、加害者側を責め立ててくることもあります。また、加害者側が被害者から不当な要求をされた場合にも、相手に怪我をさせてしまったという負い目から強く反論できず、不利な条件で支払いなどに応じてしまう可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、被害者側との話し合いを一任することができますので、保護者がご自身で対応した場合に生じる精神的負担やリスクを回避することが可能です。ご自身で対応するのが不安な場合には、弁護士に対応を依頼するとよいでしょう。
被害者側から損害賠償請求をされた場合、まずは子どもおよび親の法的責任の有無を検討しなければなりません。また、法的責任がある場合でも、過失相殺を主張することで賠償額を減額できる可能性もあります。
このように被害者側からの損害賠償請求に対しては、法的観点からの検討が必要になりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。弁護士であれば、被害者側の主張に対して、法的観点から主張・反論ができますので、不当な請求を回避することにつながります。
事案によっては弁護士が代理人として対応することで事態がこじれてしまうケースもあるでしょう。そのようなケースについては、弁護士が表にでることなく、後方支援という形で状況に応じた法的なアドバイスなどを行うことも可能です。
その場合、被害者側とのやり取りは加害者側の保護者がご自身で行うことになり、弁護士に依頼していることが相手方には伝わることなく対応を進めることができます。できるだけ穏便に解決したいといった場合には、後方支援によるサポートを弁護士に依頼することもひとつの方法です。
参考
学校での問題・トラブルの
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学校や保育園・幼稚園で子どもが友達に怪我をさせてしまった場合、被害者側の保護者から損害賠償を請求される可能性があります。このような場合、法的対応が必要になるケースもありますので、まずは弁護士にご相談ください。弁護士であれば、状況に応じた適切な解決方法を検討したうえで、代理人として対応することも、後方支援として解決に向けたアドバイスやサポートをすることも可能です。
子どもが友達に怪我をさせてしまい、その後の対応でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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設立 | 2010年12月16日 |
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