学校給食中の窒息事故は全国で発生しており、文部科学省からも窒息事故防止が呼びかけられています。
給食が原因の窒息事故が起きた場合には、学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。弁護士のサポートを受けながら、適正額の損害賠償を請求していきましょう。
本記事では給食中の窒息事故について、学校が負う損害賠償責任の根拠や内容、裁判例などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
令和6年2月に福岡県内の小学校において、給食中に1年生の児童がウズラの卵をのどに詰まらせて窒息死する事故が発生しました。この事故を受けて、文部科学省は全国の教育委員会や学校に対し、給食中の窒息事故の防止を徹底するよう注意喚起を行っています。
参考:「学校給食における窒息事故の防止について」(文部科学省)
学校側は、児童・生徒が安全に給食を食べられるように、教員による監視や注意喚起などの措置を十分に講じる義務(=安全配慮義務)を負っています。
このような安全配慮義務に違反した結果、児童・生徒が給食中に窒息した場合、学校側は以下の損害賠償責任を負うと考えられます。
<国公立学校の場合>
学校の設置者である国・都道府県・市区町村が、窒息した児童・生徒に対して国家賠償責任を負います(国家賠償法第1条第1項)。
ただし、教員(保育士などを含みます。以下同じ)個人は、窒息した児童・生徒に対して損害賠償責任を負いません。
<私立学校の場合>
安全配慮義務を怠った教員は、窒息した児童・生徒に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。
学校の設置者である学校法人等も、使用者責任に基づく損害賠償責任を負います(民法第715条第1項)。
給食中に窒息事故が起きた場合、学校側に対して賠償を請求できる主な損害項目を解説します。
窒息事故に遭った子どもの蘇生やリハビリなどに要した治療費は、原則として実費全額が損害賠償の対象となります。医療機関で支払った費用や、薬局で支払った薬剤費などの自己負担部分につき、損害賠償を請求可能です。
子どもの通院に要した交通費は、原則として実費全額が損害賠償の対象となります。自家用車を利用した場合も、移動距離に応じた額の損害賠償を請求できます。
子どもの入院や通院に家族が付き添った場合は、仕事を休むことによる収入の補塡(ほてん)として付添費用の損害賠償を請求できます。付添費用の目安額は、入院付添費が1日当たり6500円程度、通院付添費が1日当たり3300円程度です。
子どもが治療やリハビリのために入院や通院をした場合は、それに伴う精神的苦痛の賠償金として、入通院慰謝料を請求できます。入通院慰謝料の目安額は、入院期間と通院期間を総合的に考慮して決まります。
事故後、疾病が完治せずに後遺症が生じた場合は、その部位や症状に応じた額の後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料は、交通事故の後遺症について認定される後遺障害等級を参考に、下表の金額が目安となります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
給食による窒息事故で子どもが死亡した場合は、子ども本人および遺族(父母)の精神的損害の賠償金として、死亡慰謝料を請求できます。死亡慰謝料の金額は、子ども本人および遺族を合わせて2000万円から2500万円程度が標準的です。
窒息事故により後遺症が生じた場合や、死亡した場合には、将来にわたって得られなくなった収入の補塡(ほてん)として逸失利益を請求できます。
子どもの後遺症または死亡による逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
※死亡の場合、労働能力喪失率は100%
上記のほか、給食による窒息事故で生じた損害として、以下の損害賠償を請求できることがあります。
給食中に児童・生徒が窒息して死亡し、遺族が学校側に対して損害賠償を請求した裁判例を2つ紹介します。
知的障害および身体障害を有する特別支援学校高等部の生徒が、給食中に窒息して死亡した事案です。
生徒には、食物をかき込むようにして口の中に入れ、よくそしゃくをせずに飲み込むような傾向がありました。
大分地裁は、このような食べ方は窒息等の危険を伴うものであると指摘したうえで、特別支援学校の教員は生徒の動静を見守り、危険な行動を制止するなどして窒息等を防止すべき義務を負っていたと判示しました。
実際には、教員は他の教員に見守りを依頼することなく、生徒を1人で残してランチルームを離れたところ、窒息死亡事故が発生しました。このような教員の行動につき、大分地裁は安全配慮義務違反を認定しました。
結論として大分地裁は、死亡した生徒の損害として総額2366万8940円、父母固有の慰謝料として300万円ずつ、弁護士費用として父母それぞれ30万円ずつの損害を認定しました。ただし、死亡した生徒の損害については日本スポーツ振興センターから災害共済給付金2800万円を受けていました。そのため、大分地裁は学校の設置者である県に対し、父母それぞれに対して各330万円の限度で損害賠償を命じました。
小学校1年生の児童が、給食中に白玉団子をのどに詰まらせて窒息死した事案です。
宇都宮地裁は、白玉団子自体は特に誤嚥(ごえん)事故発生の危険が高いものではないと指摘しました。さらに、生徒が直径約2cm強の白玉をかまずにまたはかみ切れずに飲み込み、誤嚥する具体的危険性を予見させる兆候もなかったと判示しました。
また宇都宮地裁は、窒息事故が発生した後の学校側の対応についても、生徒が自立できているうちは背部叩打法を試み、自立できなくなってからは心臓マッサージと人工呼吸を行うなどして、文献上の記載に一応沿った行動をとっていたことを指摘しました。
これらの点を考慮して、宇都宮地裁は学校側の過失を認めず、遺族の損害賠償請求を棄却しました。
本事案のように、学校側の対応に不備はないとされ、損害賠償請求が認められないケースもあります。しかし、学校側がやるべきことを適切にやっていたかどうかは、十分な調査を行わなければわかりません。損害賠償請求の見通しを正しく立てるためにも、弁護士を通じて学校側に調査を求めましょう。
給食中に発生した窒息事故に関して、弁護士は主に以下のサポートを行っています。窒息事故について学校側の責任を追及したい方は、弁護士にご相談ください。
弁護士は学校側に対し、窒息事故が発生した原因について十分な調査を行うように求めます。学校側が適切に調査を行わない場合は、教育委員会や文部科学省に対しても指導を求め、事実関係の正確な把握に努めます。
弁護士は、窒息事故によって子ども本人や家族が被った損害を漏れなく確認したうえで、請求していきます。弁護士と協力しながら網羅的に損害を集計することが、適正額の損害賠償の獲得につながります。
弁護士には、学校側との示談交渉をすべて任せることができます。弁護士が法的な観点から請求を行うことで、適正額の損害賠償を得られる可能性が高まるとともに、交渉に伴う労力や精神的負担も大幅に軽減されます。
学校側との示談交渉がまとまらないときは、弁護士が遺族の代理人として、裁判所に対して訴訟を提起します。専門的な訴訟手続きも、弁護士にご依頼いただければスムーズな対応が可能です。
参考
学校での問題・トラブルの
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学校での給食中に子どもの窒息事故が発生した場合は、学校側に対する損害賠償請求を検討することができます。弁護士は、学校側への適切な調査の要求や示談交渉、訴訟対応などを通して、適正額の損害賠償を得られるようサポートいたします。
ベリーベスト法律事務所は、学校事故の損害賠償請求に関するご相談を受け付けております。給食中の窒息事故における、学校側への責任追及はベリーベスト法律事務所へご相談ください。
所在地 | 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス) |
設立 | 2010年12月16日 |
連絡先 | [代表電話]03-6234-1585 [ご相談窓口]0120-187-059 ※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。 |
URL | https://www.vbest.jp/ |
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