いじめの弁護士コラム

いじめは教育委員会に相談すべき? 解決しない場合の対処法はある?

  • いじめ
2025年01月09日
いじめは教育委員会に相談すべき? 解決しない場合の対処法はある?

子どもが学校でいじめ被害を受けている場合、まずは、学校との協議によりいじめ問題の解決を図ります。しかし、学校によっては積極的な対応をしてくれないケースもあり、十分な解決が期待できないこともあり得ます。

そのような場合、教育委員会に相談をするのも有効な手段のひとつです。教育委員会は、いじめ問題について学校とは異なる役割を担っていますので、教育委員会がどのような機関で何をしてくれるのかを理解したうえで、対応を求めていくとよいでしょう。

今回は、いじめ問題における教育委員会の役割、相談の流れ、いじめの解決に向けて弁護士ができることなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、そもそも教育委員会とは?

そもそも教育委員会とはどのような機関なのでしょうか。また、公立学校と私立学校で、教育委員会が持つ権限が異なりますので、確認していきましょう。

  1. (1)教育委員会とはどのような機関?

    教育委員会とは、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に基づき都道府県や市区町村に設置された行政機関で、以下のような役割を担っています。

    • 学校教育の振興:学校の設置管理、教職員の人事・研修、児童・生徒の就学や学校の組織編成、校舎などの施設・設備の整備、教科書その他の教材の取り扱いに関する事務処理
    • 生涯学習・社会教育の振興:生涯学習・社会教育事業の実施、公民館・図書館・博物館などの設置管理、社会教育関係団体などに対する指導・助言・援助
    • 芸術文化の振興、文化財の保護:文化財の保存・活用、文化施設の設置運営、文化事業の実施
    • スポーツの振興:指導者の育成・確保、体育館・陸上競技場などのスポーツ施設の設置運営、スポーツ事業の実施、スポーツ情報の提供

    このように、教育委員会は、学校教育に関するさまざまな施策などを推進・実施する役割がありますが、いじめに関する対策・対応も教育委員会が担う役割のひとつです。具体的には、いじめ防止における施策の推進やいじめが発生した場合における対応などが挙げられます。

    そのため、学校でのいじめ問題が発生した際の相談先として、教育委員会も選択肢のひとつとなり得ます。ただし、教育委員会は学校や保護者、どちらの味方でもなく、中立の立場である点は理解しておく必要があるでしょう。

  2. (2)公立学校と私立学校における権限の違い

    教育委員会が持つ権限は、公立学校と私立学校で異なります。

    公立学校は、学校の設置・運営を地方自治体が行っていますので、教育委員会は、公立学校に対して強力な権限を有しています。たとえば、学校が教育委員会の定める規定に違反した場合は、その変更を命じることができるとされています(学校教育法14条)。

    これに対して、私立学校は公立学校とは異なり、学校の設置・運営は学校法人により行われ、その管理運営について高い独立性が保たれています。そのため、教育委員会は、私立学校に対する権限をほとんど有していません。

    したがって、公立学校でのいじめ問題については、教育委員会の役割が期待できますが、私立学校では期待できないといえます。

    なお、私立学校において、いじめなどの問題が発生した場合には、学校または各都道府県に設置されている私立学校を所管する機関である、私立学校主管部課に相談することになります。

2、いじめ問題における教育委員会の役割と求められる対応

いじめ問題において教育委員会に求められていることとして、文部科学省では「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」を公開しています。その中で、いじめ問題に関する教育委員会の役割・対応について記載されていますので、以下で説明します。

  1. (1)学校の取組への支援と取組状況の確認

    教育委員会は、いじめ問題の解決に向けて各学校の取組を支援する立場にあり、具体的な支援内容として以下のようなものが挙げられます。

    • 校内研修の講師として指導主事、教育相談の専門家の派遣
    • スクールカウンセラーの派遣
    • 困難ないじめ問題を抱える学校には担当指導主事などの派遣

    また、教育委員会は、いじめ問題に関する学校側の取組状況を確認し、必要な助言・指導を行う役割もあります。

  2. (2)効果的な教員研修の実施

    いじめ問題が発生した場合、まずは現場の教師が問題の解決に向けて対応することになりますので、教師のいじめ問題に関する対応能力が重要になります。
    教育委員会においては多くの教師がいじめ問題に関する実践的な研修を受けるための、教員研修を実施することが求められています。

  3. (3)組織体制・相談体制の充実

    教育委員会や教育センターなどの相談体制の整備や充実、相談時間の延長などによる相談窓口の開設時間の工夫、児童生徒に比較的年齢の近い人を相談相手とするなどいじめ問題の相談体制を充実させることも教育委員会の役割です。

  4. (4)深刻ないじめへの対応

    教育委員会は、深刻ないじめを行う加害児童生徒に対して、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するため、出席停止を含む厳しい指導を行うこともあります。
    また、いじめの被害者である児童生徒を守るため、就学すべき学校の指定変更や区域外就学を認める措置など、柔軟な対応を取ることも求められています。

  5. (5)家庭教育に対する支援

    家庭教育を支援するために、さまざまな学習機会や情報提供、ボランティア活動など親子共同体験の機会の充実など被害児童生徒へのケアも教育委員会の役割です。

3、いじめを教育委員会に相談するまでの流れ

いじめを教育委員会に相談する場合、一般的には以下のような流れになります。

  1. (1)学校への相談

    いじめが起きた場合に、その問題を解決する主体は学校です。
    そのため、子どもがいじめられていることが判明したときには、まずは学校に相談することになります。

    学校への相談時には、感情的な物言いにならないように注意が必要です。感情的になって話してしまうと、「いじめ問題」ではなく「保護者からのクレーム」として処理されてしまう可能性があるからです。そのため、学校へ相談する際は、冷静に事実を伝えて対応を求めるようにしましょう。

  2. (2)事実確認

    保護者からいじめ問題の申告があった場合、学校側には、いじめに関する調査やいじめ対策などを行う義務があります

    いじめの調査方法や内容については、学校設置者の裁量に委ねられていますので、まずは学校側の調査を待つことになります。調査がなされると、保護者に対して結果が報告がされますので、報告内容を踏まえて今後の対応を検討していきます。

  3. (3)謝罪やその他の対応の要求

    学校側の調査の結果、いじめがあったことが判明した場合、いじめの加害者や学校側に対して以下のような対応を求めていきます。

    • 謝罪
    • 損害賠償請求
    • 再発防止策の検討、実施
  4. (4)学校の対応に不満がある場合は教育委員会に相談

    学校側の対応に不満がある場合には、教育委員会に相談することも有効な手段です。教育委員会に相談をすることで、たとえば、いじめ調査に消極的であった学校側が調査に前向きになるなど、態度を変えることも少なくありません。

    教育委員会に相談する方法としては、まずは電話などで相談し、その後、該当校区の担当者と面談をすることになります。また、相談する際には、問題の重大性をしっかりと理解してもらうためにも相談内容を時系列で整理し、いじめの証拠などを準備しておくとよいでしょう。

    ただし、教育委員会に相談しても動きが遅い・望むような対応をしてくれないといったケースもありますので、そのような場合には弁護士に相談するのがおすすめです。

4、いじめ問題の解決に向けて弁護士がサポートできること

いじめ問題の解決に向けて、弁護士は、以下のようなサポートをすることができます。

  1. (1)学校への調査・再発防止策などの要求

    いじめ問題を解決する主体は、基本的には学校ですので、まずは学校側に調査や再発防止策などを要求していく必要があります。しかし、学校側がいじめ調査に消極的なことも多いでしょう。

    そのような場合でも、弁護士が介入することで学校側が適切な調査を開始する可能性が高くなります。いじめ問題に詳しい弁護士であれば解決に向けた方法を熟知していますので、学校側と協力しながら適切な対応を進めていくことができます。

  2. (2)教育委員会への申し入れや対応

    弁護士が学校に対して要求等を行っても適切な対処がなされない場合、教育委員会に対して申し入れを行うことがあります。
    弁護士から教育委員会に申し入れることで、教育委員会が真摯(しんし)な対応で、学校側への働きかけなども迅速に進めてくれる可能性があります。

  3. (3)学校・加害者との交渉

    いじめに関して学校側や加害者側に法的な責任がある場合には、損害賠償請求を行うことができます。
    弁護士は、学校側や加害者側の法的責任の有無を判断し、責任追及に必要となる証拠収集などのサポートを行うことができます。また、実際の交渉もすべて弁護士が対応しますので、保護者側の負担を軽減することができます。交渉が決裂し、訴訟提起をする必要がある場合でも弁護士が引き続き対応しますので、安心してお任せください。

5、まとめ

いじめの対策およびいじめが発生した場合の対応は、教育委員会が担う役割のひとつです。子どものいじめ問題を学校に相談しても、学校が調査や対応に消極的な場合には、話し合いを続けても保護者が納得のいく対応をしてもらえる可能性は低いため、教育委員会へ相談することは有効な手段となります。

しかし、お子さんのケアなども必要な状況において、保護者自身が学校側や教育委員会の対応をすることは負担が大きいでしょう。学校や加害者、教育委員会への働きかけ・交渉などは弁護士が代理人となって対応できますので弁護士にお任せください。
学校でのいじめ問題でお困りの方は、まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
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