学校事故の弁護士コラム

部活動で発生した死亡事故。学校側に責任追及することはできるのか?

  • 学校事故
2024年11月28日
部活動で発生した死亡事故。学校側に責任追及することはできるのか?

学校の部活動ではさまざまな危険が伴います。子どもが部活中に何らかの事故に巻き込まれて死亡してしまったという場合には、学校側の責任を問える可能性があります。

もっとも、学校側の責任追及にあたっては、安全配慮義務違反など学校側に責任があることを立証していかなければなりませんので、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

今回は、部活動で発生した死亡事故の責任の所在と責任追及の方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、学校の部活動での死亡事故、責任の所在は?

学校の部活動で死亡事故が生じた場合、誰が責任を負うのでしょうか。以下では、国公立学校と私立学校の場合に分けて、責任の所在を説明します。

  1. (1)国公立学校の場合

    国公立学校では、部活動の顧問である教師に安全配慮義務違反が認められた場合、学校を設置する国や地方公共団体に対して、国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償請求をすることができます。なお教師個人に過失があったとしても、公務員として職務を行うにあたって死亡事故が生じたといえる場合には、教師個人に対する損害賠償請求はできません

    そのため、国公立学校の場合には、国または地方公共団体に対して責任追及をしていくことになります。

    国立・公立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:学校の設置者(国・都道府県・地方自治体など)
  2. (2)私立学校の場合

    私立学校では、部活動の顧問である教師に安全配慮義務違反が認められた場合、教師個人に対して、民法709条の不法行為または安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づいて損害賠償請求をすることができます。また、教師を雇用する学校に対しても、民法715条の使用者責任に基づいて損害賠償請求することが可能です。

    そのため、私立学校の場合には、教師および学校の設置者に対して責任追及をしていくことになります。

    私立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:教師・学校法人

2、安全配慮義務を判断するうえでの基準

部活動での死亡事故における安全配慮義務は状況に応じて判断されることになりますが、判断基準および考慮される要素としては以下が挙げられます。

  1. (1)安全配慮義務とは

    安全配慮義務とは、学校における教育活動およびそれに密接に関連する部活動などにより生じるおそれのある危険から児童・生徒を保護すべき義務のことです。学校や教師には、このような安全配慮義務がありますので、安全配慮義務に違反して、児童・生徒に損害を与えてしまった場合には、その損害を賠償する責任を負うことになります。

    このような安全配慮義務は「予見可能性」および「結果回避可能性」という要素によって判断されます。
    部活動での死亡事故における予見可能性とは、部活動で事故が起きることを予見できたことをいい、結果回避可能性とは、事故が予見できた場合に死亡という結果を回避できたことをいいます。

    部活中の死亡事故では、部活動の顧問である教師が事故の発生を予見できたかどうか、予見できたとして死亡という結果を回避できたかどうかが争点になるケースが多いです。

  2. (2)安全配慮義務を判断する際の考慮要素

    学校の教師が負う安全配慮義務の内容には、具体的な状況に応じてさまざまなものがあります。安全配慮義務を判断する際の考慮要素としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 児童・生徒の健康状態、技能、体力などを把握して危険を回避する措置を講じたか
    • 危険防止のための適正な指導を行ったか
    • 危険防止のための適正な指導計画を立てたか
    • 危険を防止するために部活動に立ち会い、監督をしたか
    • 事故が生じた場合に適切な応急措置や救急搬送などの措置をとったか

3、部活動での死亡事故に関する裁判例

以下では、部活動での死亡事故が問題になった裁判例を紹介します。

  1. (1)大津地裁平成25年5月14日判決

    ・民事裁判を起こした側(原告):
    柔道部の部活中の事故により死亡した元男子中学生Aの母X

    ・訴えられた側(被告):
    • ① Aの通っていた中学校を設置している地方公共団体B
    • ② Aの所属する柔道部の顧問を務めていた講師C

    【事案の概要】
    Aは、地方公共団体Bが設置する中学校の柔道部に所属していましたが、部活動の練習中に頭部を負傷し、急性硬膜下血種により死亡しました。Aの母親であるXが、部活動の顧問であるCに対して安全配慮義務違反があるとして、学校設置者のBに国家賠償法1条1項、講師Cに対して民法709条に基づく損害賠償請求を求めた事案です。

    【裁判所の判断】
    裁判所は、柔道部の顧問であるCには、生徒の生命・身体の安全を確保するための一般的な注意義務として、以下のような義務があるとしました。

    • 生徒の体力・能力・経験などに合わせて、合理的で無理のない範囲の活動計画を作成する義務
    • 怪我や事故を防ぐために、頸部(けいぶ)の強化トレーニングを盛り込むなど、生徒がしっかり受け身を習得できるよう指導する義務
    • 部員の健康状態を常に注視しながら、健康状態に異常が生じないよう配慮する義務
    • 万が一、何らかの異常が見受けられた場合には状態を確認し、応急措置や医療機関への受診を指示・搬送すべき義務

    そのうえで、Aには15本目の乱取り練習終了後、通常であれば取らない行動がみられ、柔道部の顧問として4年余りの経験と相当の柔道経験を有する講師Cであれば、Aに意識障害が生じている可能性を認識できたとして、Cの注意義務違反を認定しました。
    また、直ちに練習を中止し、専門の医療機関を受診していれば救命可能性はあったと認められることから過失と死亡との間の因果関係も認め、地方公共団体Bに対して賠償金の支払いを命じました

    なお、講師Cの不法行為責任については、公務員として職務を行うにあたり損害を与えたものであることを理由に個人としての責任は否定しています。

  2. (2)高松高裁平成27年5月29日判決

    ・民事裁判を起こした側(原告):
    硬式野球部の部活中の事故により死亡した元男子高校生Aの両親X

    ・訴えられた側(被告):
    • ① Aの通っていた高校を設置している地方公共団体B
    • ② Aの所属する硬式野球部の監督を務めていた教諭C

    【事案の概要】
    Aは、地方公共団体Bが設置する県立高校の硬式野球部に所属していましたが、部活動の練習中に熱中症に罹患(りかん)して、その約1か月後に死亡しました。Aの両親Xが、高校の保健体育教諭であり野球部の監督であるCには安全配慮義務を怠った過失があるとして、地方公共団体Bに対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を求めた事案です。

    【裁判所の判断】
    裁判所は、野球部の監督である教諭Cには、部活動の実施により部員の生命・身体に危険が生じないよう配慮すること、何らかの異常が見受けられた場合は、容体の確認、運動の禁止、応急処置、医療機関への搬送などの措置をとるべき一般的な注意義務があるとしました。
    さらにこのような注意義務の一環として、熱中症に関する安全配慮義務も負っていると判示しました。そのうえで、教諭Cには、以下のような過失があると認定しました。

    • 気温や部員が暑さに慣れていないなど、熱中症の危険がある状況において、強度の高いメニューを行うべきではなかったにもかかわらず、100mダッシュを合計50本も行ったこと
    • Aに100mダッシュを再開させた後、Aの異常に気づいて即座に100mダッシュを止めさせるべきだったにもかかわらず、これを怠った過失
    • Aに対して熱中症の応急処置を取らなかった過失

    そして、教諭Cが即座に100mダッシュを止めさせて、応急措置をとり病院に搬送すればAの救命可能性があったとして、過失と死亡との間の因果関係も認め、地方公共団体Bに対して賠償金の支払いを命じました

4、部活動での死亡事故において、弁護士がサポートできること

部活動での死亡事故が発生した場合、弁護士は被害者遺族が適正な補償を受けられるよう、以下のようなサポートを行います。

  1. (1)調査の働きかけ

    部活動での死亡事故は、学校の管理下で生じた事故になりますので、事故の原因を調査するためには、学校側の協力が不可欠です。学校側が適切な調査を実施してくれればよいですが、自らへの責任追及をおそれて調査が消極的になることも少なくありません。
    そのような場合には、弁護士から学校側に対して早期に適切な調査に着手するよう働きかけることで、学校側が調査に応じる可能性が高まります

  2. (2)学校側との交渉や訴訟の対応

    大切な家族が亡くなってしまった状況の中で、学校側との交渉などを行うことは遺族の方にとって精神的にも大きな負担となります。弁護士に依頼すれば学校側との交渉や訴訟の対応をすべて任せることができますので、負担を大幅に軽減することができます
    個人で学校側を相手にするのは大変な困難を伴いますので、少しでも不安を感じるときはすぐに弁護士にご相談ください。

  3. (3)法的根拠に基づいて損害賠償を請求できる

    部活動での死亡事故に関して学校側の責任を追及していくためには、被害者側で、学校側に安全配慮義務違反があったことを立証していかなければなりません。安全配慮義務の内容は、具体的な事案により異なり、法的な観点からの検討が必要です。そのため一般の方では、法的責任の有無を正確に判断することは困難といえます。

    弁護士であれば、学校側の責任の有無を適切に判断し、責任追及にあたり必要となる証拠収集のサポートを行い、適正な損害賠償を請求することが可能です。学校側に対する責任追及をお考えの方は、弁護士にご相談ください。

5、まとめ

部活動で死亡事故が発生した場合、学校側の安全配慮義務違反を追及できる可能性があります。その場合、学校側に対して損害賠償請求をすることが可能ですので、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

大切なご家族を亡くされたショックや悲しみで今後の具体的な対応について考えられない状況の方も多いことでしょう。弁護士にご依頼いただければ、弁護士が代理人となって対応できますので、学校との交渉などにおける精神的負担を軽減しながら、責任追及が可能です。
部活動で子どもを亡くし、学校側への責任追及をお考えのご遺族の方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-187-059
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  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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