学校側から高校卒業や大学卒業を待たずに子どもを自主退学させるよう勧告を受けた場合、どのように対処すべきか分からず、不安を抱く保護者の方も多いことでしょう。自主退学勧告を受けると、学校側の意向に従う必要があると考えてしまいがちですが、必ず退学しなければならないわけではありません。
まずは、自主退学の理由や根拠を明確に示すよう学校側に求めたうえで、対応方針を検討し、学校側の主張に対して適切に反論することが重要です。
本記事では自主退学について、退学処分との違いや自主退学勧告を受けた場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「自主退学」とはどのようなことを指すのでしょうか。似た言葉である「退学処分」との定義の違いや、自主退学勧告を受けるケースをまずは見ていきましょう。
「自主退学」とは、児童・生徒・学生(以下「生徒等」といいます。)が自らの意思で、卒業や満期退学を待たずに学校を中退することをいいます。
これに対して「退学処分」とは、生徒等の意思に関係なく、学校側の判断のみで強制的に学校を中退させることをいいます。
学校側が退学処分を行うためには、生徒等が以下のいずれかに該当しなければなりません(学校教育法施行規則第26条第3項。なお、国公立学校における義務教育課程の児童・生徒に対する退学処分は認められません)。
退学処分を行うと、生徒等の側がその無効を主張して、大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため学校側としては、退学処分を避けて自主退学の体裁をとり、生徒等とのトラブルを避けようとするケースが多いでしょう。
自主退学勧告は、退学処分に相当するような行為をした生徒等に対して行われることが多いです。たとえば以下のような行為をすると、自主退学勧告を受ける可能性があります。
ただし、退学処分を行うことができるだけの確固たる根拠や事情がない場合にも、学校側が生徒等を穏便にやめさせたいなどの意図で自主退学勧告がなされることがあります。
自主退学勧告を受けたら、その理由を確認したうえで対応を検討することが大切です。
自主退学勧告を受けたことに納得できない場合は、以下のポイントに留意しつつ対応しましょう。
自主退学勧告を受けた生徒等とその保護者が最も注意すべきなのは、自主退学勧告には強制力はなく、応じるかどうかは生徒等が自らの意思で判断が行えるという点です。
学校から自主退学勧告を受けた場合でも、言われたとおりに退学届を提出する必要はありません。退学するかどうかは、あくまでも生徒等が自らの意思で決められる事柄です。
学校側は「退学処分にはしたくない」「穏便に済ませたい」などと言って説得してくるかもしれません。しかし、退学によって生徒等に生じる不利益は大きなものです。学校側の都合に配慮するのではなく、子ども自身の将来に及ぼす影響をよく考え、退学に応じるかどうかを決めるようにしましょう。
生徒等が自主退学勧告を拒否した場合、学校側が生徒等を退学させるためには退学処分を行わなければなりません。
前述のとおり、退学処分を行うためには、性行不良や学業不振などの要件に該当することが必要です。そのため退学処分の要件に該当しない場合は、生徒等が自主退学勧告を拒否すれば退学せずに済む可能性が高いといえます。
子どもが自主退学勧告を受けた際には、その理由や根拠を明確に示すよう学校側に求めましょう。
学校側が主張する理由や根拠を確認すれば、退学処分が認められる見込みがどの程度あるのかが分かり、とるべき対応方針が明確になります。
学校側が示す理由が曖昧な場合や、理由の説明を拒否する場合には、弁護士を通じて説明を求めることもご検討ください。
自主退学勧告に納得できない思いがあっても、学校側に対して攻撃的な態度をとることは避けるようにしましょう。
学校側に対して攻撃的な態度をとると、それが性行不良を示す材料のひとつとして使われてしまうおそれがあります。他にも性行不良が見られる場合には、退学処分が認められる可能性が高くなってしまいます。
学校側との交渉には、努めて冷静な態度で臨みましょう。感情のコントロールが難しいと感じる場合には、弁護士に代理で交渉してもらうことをおすすめします。
自主退学勧告の取り消しを求める方法としては、交渉、仮処分の申し立て、訴訟などが挙げられます。
まずは学校側との間で、自主退学勧告の撤回を求めて交渉しましょう。
自主退学勧告を撤回させるためには、退学処分を有効とすべき事情はないことを合理的に主張することが大切です。自主退学勧告を受けた理由について学校側に説明を求め、その理由が退学処分の要件に該当しない旨を訴えましょう。
学校側との交渉に当たっては、弁護士を代理人とすることも有力な選択肢です。弁護士が法的根拠に基づいて、自主退学勧告が不適切であることを説得的に主張すれば、学校側が自主退学勧告を撤回する可能性が高まります。
自主退学勧告と併せて停学や謹慎などの処分を受けている場合には、裁判所に対して当該処分を取り消す仮処分を申し立てることも考えられます。「仮処分」とは、権利侵害による著しい損害や急迫の危険を避けるために裁判所が行う、暫定的な処分です。
停学などの処分の有効性を訴訟で争うと、長い期間がかかります。その間に全く復学できなければ、生徒等にとって学習や友人との交流の機会が失われ、著しい損害が生じてしまいます。
この場合は、裁判所に対して申し立てを行うことにより、暫定的に停学などの処分を取り消す仮処分命令が発せられることがあります(民事保全法第23条第2項)。仮処分命令によって停学などの処分が取り消されれば、復学することが可能です。
自主退学勧告を拒否した後に退学処分を受けた場合にも、裁判所に対する仮処分申し立てを行い、仮処分命令が得られれば復学することができます。
ただし、仮処分命令が発せられたとしても、停学や退学などの処分が無効であると決まったわけではありません。最終的な結論は、訴訟によって決まることになります。
停学や退学などの処分の取り消しや、不当な処分を受けたことに伴う損害の賠償を請求する場合、最終的には学校側との間で訴訟により争うことになります。
訴訟は、裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続きです。
生徒等の側と学校側がそれぞれの言い分を主張し、自らの主張する事実を証拠に基づいて立証します。裁判所は双方の主張を聞き、法律上の要件に照らして、生徒等の請求を認めるべきかどうかを判断します。
訴訟は長期間を要するケースが多く、手続きやルールも専門的で複雑です。自力で訴訟に対応するのは非常に大変ですが、弁護士に依頼すれば労力や精神的負担を大幅に軽減できます。
子どもが学校側から自主退学勧告や退学処分を受けてしまい、処分を取り消したい・学校側の対応に納得できないといった場合は速やかに弁護士へ相談しましょう。退学に関するトラブルについて弁護士に相談すべき理由は、主に以下のとおりです。
弁護士に相談すれば、自主退学勧告やそれに伴う停学処分、および退学処分などの有効性を、その要件に照らして適切に判断することができます。
学校側の処分が違法かどうかを法的な観点から検討しておけば、自主退学勧告を受け入れるかどうか、どのような落としどころを目指すかなどの方針を適切に立てることが可能です。
弁護士は、学校側との交渉や仮処分申し立て、訴訟などの裁判手続きを、全面的に代行することができます。
本人や家族が自力で学校側と争うのは、時間や労力の観点からも、精神的にも非常に大変です。弁護士に依頼すれば、対応に要する負担は大幅に軽減されます。
また、弁護士が法的な観点から説得力のある主張を行うことにより、自主退学勧告などが撤回または取り消され、復学への道が大きく開ける場合もあります。
退学を巡って学校側とトラブルになってしまった場合には、速やかに弁護士へご相談ください。
参考
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子どもが学校側から自主退学勧告を受けた場合には、その理由や根拠を確認したうえで、今後の対応を慎重に検討する必要があります。法的な観点から適切に対応するためには、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所は、学校とのトラブルに関するご相談を受け付けております。不当な自主退学勧告や退学処分を受けた生徒等とその保護者の方を、経験豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。
学校側から自主退学勧告や退学処分を受け、納得できない思いを抱えている方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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