組体操は、運動会の定番種目であり、人間ピラミッドやタワーなどの技に挑戦した経験がある方もいるでしょう。しかし、組体操による事故は、年間8000件を上回る件数が発生した年もあり、死亡事故や重篤な後遺症が生じるケースも少なくありません。
近年では、運動会の種目として組体操を禁止している学校も増えてきましたが、今もなお組体操が実施されている学校では、このような組体操による事故が発生するリスクがあります。万が一、子どもが組体操による事故で怪我や障害を負ったり、死亡してしまったりした場合、学校側に対してどのような責任を追及することができるのでしょうか。
今回は、組体操事故による学校側の責任と請求できる損害について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
組体操による事故があった場合、学校側にはどのような責任が生じるのでしょうか。
平成23年度から平成26年度の間に年間8000件を上回る、組体操による事故が発生しており、ニュースなどでも取り上げられるようになりました。そのため、平成28年にはスポーツ庁から「組体操等による事故の防止について」との通達が出され、組体操実施時における安全対策や活動内容の見直しなどが求められました。
また、その後も学校における体育活動中の事故が多発していることを受け、令和元年にも「学校における体育活動中(含む運動部活動)の事故防止等について」 という通達が出されています。同通達では、組体操の実施の適否を検討し、実施する場合でも危険な技は避けること、安全な状態で実施できないと判断されるときは実施を見合わせるよう求められています。このように組体操は危険な競技であるということが広く認識されていることがわかります。
組体操による事故が生じた場合、学校側には、以下のような民事責任および刑事責任が生じる可能性があります。
以下では、組体操事故で学校側の民事責任が認められた裁判例を紹介します。
【事案の概要】
Xは、福岡県立A高校の2年生として在籍していた生徒です。A高校では、体育大会において組体操を予定しており、正課授業としてA高校の柔道場や剣道場において組体操の練習を行っていました。Xは、組体操の練習中に別の生徒に肩車をしてもらっていたところ、後方の畳の上に落下し首を強打して、第5頚椎脱臼骨折の怪我を負いました。この怪我によりXは、両上肢機能の著しい障害、両下肢機能全廃の障害を負うこととなりました。
Xは、組体操中の落下事故は、A高校の教員の過失によるものであるとして、A高校を設置する福岡県に対して、損害の賠償を求める訴えを提起しました。
【裁判所の判断】
裁判所は、A高校の教師らは以下のような注意義務を怠ったとして、注意義務違反を認定し、県側に対して、賠償金の支払いを命じました。
ただし、本件転落事故の発生については、Xにも過失があったといえるため、7割の過失相殺が行われています。
【事案の概要】
Xは、名古屋市立A小学校の6年生として在籍していた児童です。
A小学校では、運動会で組体操の実施を予定しており、A小学校運動場で組体操の練習を行っていました。しかし、組体操の4段ピラミッドの練習中に、Xは最上位から落下し、左上腕骨外顆骨折の怪我を負いました。
Xは、組体操中の落下事故は、A小学校の教員の過失によるものであるとして、A小学校を設置する名古屋市に対して、損害の賠償を求める訴えを提起しました。
【裁判所の判断】
裁判所は、A小学校の教師らは以下のような注意義務を怠ったとして、注意義務違反を認定し、市側に対して、賠償金の支払いを命じました。
組体操による事故が発生した場合に請求できる主な損害としては、以下のものが挙げられます。
慰謝料とは、事故により児童・生徒が被った精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。慰謝料には、以下の3つの種類があります。
組体操での事故で怪我を負った場合、病院への通院やリハビリが必要になります。その際の治療費などは、必要かつ相当な実費全額が損害として認められます。
怪我をした本人の入院や通院に家族が付き添った場合、家族の付添費用も損害として認められることがあります。通院付添費用は1日あたり3300円、入院付添費用は1日あたり6500円が一般的な基準です。
組体操での事故により後遺障害が生じてしまうと、将来働いて得られるはずの利益が減少することになります。このような将来の減収分については、逸失利益として請求することができます。
逸失利益は、学校事故での賠償項目の中でも高額になる項目のひとつですので、後遺障害が生じたときは、しっかりと請求していくことが大切です。
組体操による事故が発生した場合の解決までの流れは、以下のようになります。
組体操中の事故が発生した場合、今後、学校側の法的責任を追及することも考えられますので、早い段階で弁護士に相談することが重要です。弁護士に相談をすれば、今後の学校側との対応のアドバイスなどを受けられますので、事故後の手続きを適切に進めることができます。
組体操による事故で怪我を負った場合、すぐに病院を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。通院は、医師の指示に従って継続し、医師が完治または症状固定と診断するまで続けてください。
学校側への損害賠償請求を行うためには、被害者側で学校側の責任を立証していかなければなりません。そのため、今後の責任追及に備えて、事実確認や証拠収集を行う必要があります。弁護士に依頼することでこれらもサポートできるため、ご自身で行う負担を大幅に軽減することができます。
治療を継続しても完治せず、何らかの症状が残ってしまった場合には、医師に診断書を作成してもらい、独立行政法人日本スポーツ振興センターに障害等級認定の申請を行います。
組体操での事故に関する事実確認や証拠収集を行い、児童・生徒に生じた損害が確定した段階で、学校側との交渉を開始します。学校側が事故の責任を認めているのであれば、損害額や支払い方法、支払い時期について話し合いをしていくことになります。
他方、学校側が責任を認めない場合には、話し合いでの解決は困難ですので、裁判所に訴訟を提起する必要があります。
このような場合も弁護士に依頼すれば、交渉や訴訟の対応を一任できます。弁護士は法的根拠に基づいた主張を行い、適正額の損害賠償を得られるよう尽力いたします。
参考
学校での問題・トラブルの
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組体操による事故は、後遺症や死亡事故など重大な事故につながることもあります。その場合、学校側に法的責任が生じるケースもありますので、事故が発生した場合には弁護士のサポートのもと、適切に対応していくことが大切です。
学校での組体操事故の被害に遭われた方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。学校問題専門チームの弁護士が損害の回復に向けてサポートいたします。
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