学校事故の弁護士コラム

学校での死亡事故|損害賠償の内容や弁護士がサポートできること

  • 学校事故
2024年08月26日
学校での死亡事故|損害賠償の内容や弁護士がサポートできること

学校ではさまざまな原因で児童・生徒が怪我を負ったり、場合によっては死亡事故につながってしまったりすることがあります。学校で死亡事故が発生した場合、被害者の遺族は損害賠償を請求することが可能です。

損害賠償の請求先は学校の設置者、教職員、加害児童・生徒などが挙げられ、請求できる損害賠償の項目も多岐にわたります。弁護士のサポートを受けながら、適正額の損害賠償を請求しましょう。

本記事では、学校における死亡事故の損害賠償請求について、請求先や損害賠償の内容、事故が発生した場合に弁護士ができるサポートなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、学校管理下における死亡事故の現状

文部科学省は「学校事故対応に関する指針」を定めており、法令によって各学校には危機管理マニュアルの策定が義務付けられるなど、学校における死亡事故を未然に防ぐ取り組みが行われています。

参考:「学校事故対応に関する指針【改訂版】(令和6年3月)」(文部科学省)
参考:「学校の危機管理マニュアル作成の手引」(文部科学省)

しかしながら、令和4年度には日本スポーツ振興センターの死亡見舞金が41件支払われています。未然防止対策が行われていても、実際にはさまざまな原因で、学校の管理下における死亡事故が発生している状況です。

2、学校で発生した死亡事故の責任

学校で発生した死亡事故については、学校の設置者、教職員、および加害児童・生徒(またはその保護者)が責任を負うことがあります。

  1. (1)学校の設置者の責任

    国立学校または公立学校で発生した死亡事故について、教職員に故意または過失がある場合には、学校の設置者である国または地方公共団体が、被害者遺族に対して賠償責任を負います(国家賠償法第1条第1項)。

    また、国立学校または公立学校の設備の設置または管理に瑕疵(かし)があり、それが原因で死亡事故が発生した場合にも、学校の設置者である国または地方公共団体が、被害者遺族に対して賠償責任を負います(国家賠償法第2条第1項)。

    私立学校で発生した死亡事故については、教職員に故意または過失がある場合には、原則として、学校の設置者である学校法人などが被害者遺族に対して使用者責任を負うことになります(民法第715条第1項)。

  2. (2)教職員の責任

    国立学校または公立学校で発生した死亡事故については、原則として教職員は個人責任を負いません。ただし、教職員による故意または重大な過失があった場合は、学校の設置者である国または地方公共団体は、その教職員に対して求償することができます(国家賠償法第1条第2項)。

    私立学校で発生した死亡事故については、教職員に故意または過失がある場合には、教職員は被害者遺族に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。

  3. (3)加害児童・生徒の責任

    学校における死亡事故が、他の児童・生徒の加害行為によって発生した場合、原則として、その児童・生徒が被害者遺族に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。

    ただし、未成年者である加害児童・生徒が、加害当時において自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき(おおむね10歳~12歳未満、または重度の知的障害があるなど)は、不法行為に基づく損害賠償責任を負いません(民法第712条)。この場合は、親などの監督義務者が、加害児童・生徒本人に代わって、被害者遺族に対する損害賠償責任を負うことになります(民法第714条第1項)。

3、学校で発生した死亡事故について、被害者遺族が受けられる損害賠償

学校で発生した死亡事故について、被害者遺族はいくつかの損害賠償を受けることができます。

被害者遺族が受けられる損害賠償の項目としては、以下の例が挙げられます。

  • 死亡慰謝料
  • 逸失利益
  • 葬儀費用
  • 治療費
  • 入院付添費
  • 入院雑費
  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
など
  1. (1)死亡慰謝料

    学校事故によって死亡した被害者の遺族は、大きな精神的損害を受けてしまいます。精神的損害の賠償は、死亡慰謝料という形で請求できます。

    子どもが亡くなった場合の死亡慰謝料は、本人と遺族を合わせて2000万円から2500万円程度が標準的と考えられます。

  2. (2)逸失利益

    学校事故によって子どもが亡くなると、将来働いて得るはずだった収入が得られなくなってしまいます。失われた収入については、逸失利益として損害賠償を請求できます。

    逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。

    死亡逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

    • 1年当たりの基礎収入
      原則として事故前の年収の実額をもとに計算します。ただし、働いていない子どもの場合は、賃金センサスに基づく全年齢平均給与額を用います。

    参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省)

    18歳未満の子どもが亡くなった場合、労働能力喪失期間(=就労可能年数)が49年と長いため、1億円前後の逸失利益が認定されることが多いです。

  3. (3)葬儀費用

    学校事故によって亡くなった子どもの葬儀費用も、損害賠償の対象となります。
    社会通念上合理的な金額である限り、葬儀費用全額の損害賠償を請求可能です。

  4. (4)その他|治療費・入院付添費・入院雑費・入通院慰謝料など

    上記のほか、以下のような損害賠償を請求できます。

    • 治療費:医療機関における治療にかかった費用(初診料、入院費、薬剤費など)
    • 入院付添費:家族が入院に付き添った際の逸失利益(休業損害)、または職業付添人に依頼した場合の費用
    • 入院雑費:入院中に日用品を購入する費用(1日当たり1500円程度)
    • 入通院慰謝料(傷害慰謝料):入院または通院を強いられたことによる精神的損害に対する賠償金

4、学校で発生した死亡事故について、弁護士ができるサポート

学校における事故で子どもが亡くなった場合には、速やかに弁護士へご相談ください。以下に挙げるサポートを通じて、被害者遺族が適正な補償を受けられるように尽力します。


  1. (1)学校への適切な調査の働きかけ

    学校における事故で子どもが亡くなってしまった場合、その原因を正確に知る必要があります。そのためには、学校側が適切に調査を行い、その内容を親に対して包み隠さず報告しなければなりません。

    弁護士は、学校による死亡事故の隠蔽(いんぺい)を許さず、学校や教育委員会に対して適切な調査の実施と報告を求めます。死亡事故の詳細が明らかになれば、後に学校側の責任を追及する際の助けにもなります。

  2. (2)学校側や加害児童・生徒との示談交渉

    学校における事故で子どもを失った遺族は、最大限の損害賠償を受けるべきです。弁護士は、遺族が最大限の損害賠償を受けられるように、あらゆる手段を用いてサポートします。

    学校の設置者や教職員、加害児童・生徒やその保護者との示談交渉を、被害者遺族が自ら行うことは大きなストレス・負担となりますので、示談交渉は弁護士にお任せください。弁護士は、被害者遺族の負担を軽減しつつ、損害賠償を受ける権利を法的根拠に基づいて主張し、相手方に対して誠意ある対応を求めます。

  3. (3)損害賠償請求訴訟

    学校側や加害児童・生徒側が損害賠償を拒否した場合は、裁判所に訴訟を提起して損害賠償を請求することになります。

    損害賠償請求訴訟では、被害者(遺族)側が相手方の損害賠償責任を立証しなければなりません。そのためには、学校における死亡事故の発生状況を証拠化し、目撃者に証言を依頼するなど、立証の準備を十分に整える必要があります。
    弁護士は、訴訟における主張・立証を見据えて、どのような準備が必要かを検討します。

    訴訟手続きは専門的かつ複雑であるため、一般の方が自力で対応するのは労力がかかり非常に大変です。弁護士に依頼することで、複雑な手続きも適切に対応することができます。

    損害賠償請求訴訟を通じて、被害者遺族が適正な損害賠償を受けるためには、弁護士によるサポートが必要不可欠です。訴訟の準備は早くから始めることが望ましいので、速やかに弁護士へご相談ください。

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5、まとめ

学校において子どもの死亡事故が発生した場合には、学校の設置者、教職員、加害児童・生徒やその保護者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。被害者遺族が適正額の損害賠償を得るためには、事故原因の調査および証拠化などの事前準備と、示談交渉や訴訟における適切な対応が求められます。

学校事故対応は、弁護士にご依頼いただくと安心です。弁護士にご依頼いただければ、法的な観点から適切に手続きを進め、被害者遺族が適正な損害賠償を得られるようにサポートいたします。損害賠償請求に必要な対応は、弁護士が全面的に代行いたしますので、被害者遺族の労力や精神的負担も大幅に軽減にもつながります。

ベリーベスト法律事務所は、学校での死亡事故事案に関する被害者のご相談を受け付けております。学校事故で子どもが亡くなってしまったら、学校などへの責任追及について早期にベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
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  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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