保育園では、園児がうつぶせの状態で寝たことにより窒息し、死亡してしまう保育事故が発生するケースがあります。
うつぶせ寝が原因で子どもが亡くなってしまった場合、保育園側に対して損害賠償請求などを行うことができます。亡くなった子どもに少しでも報いるため、一日も早く弁護士へご相談ください。
本記事では、保育園におけるうつぶせ寝が原因の死亡事故について、保育園側の法的責任や裁判例などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
保育園では、うつぶせの状態で寝ていた乳幼児が窒息して死亡する事故がしばしば発生しています。
<うつぶせ寝>による死亡事故の件数認可保育所 | 認可外保育施設 | 合計 | |
---|---|---|---|
平成24年 | 2名 | 3名 | 5名 |
平成25年 | 2名 | 7名 | 9名 |
平成26年 | 0名 | 4名 | 4名 |
平成27年 | 0名 | 6名 | 6名 |
平成28年 | 2名 | 2名 | 4名 |
平成29年 | 0名 | 1名 | 1名 |
平成30年 | 0名 | 2名 | 2名 |
令和元年 | 0名 | 2名 | 2名 |
出典:「令和元年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表及び事故防止対策について」(内閣府子ども・子育て本部)
乳幼児の窒息事故を予防するため、保育園側においては、乳幼児をあおむけに寝かせることや、1人にせず常時様子を観察することなどが求められます。
園内でのうつぶせ寝が原因で乳幼児が死亡した場合、保育園側は以下の法的責任を負うことがあります。
うつぶせ寝が原因の死亡事故について、保育園職員(保育士など)の注意義務違反が認められる場合、保育園職員は乳幼児の両親に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。
また、保育園職員を使用している保育園の設置者も、使用者責任に基づく損害賠償責任を負います(民法第715条第1項)。
ただし、公立保育園においてうつぶせ寝が原因の死亡事故が発生した場合には、保育園職員個人は乳幼児の両親に対する損害賠償責任を負いません(最高裁昭和30年4月19日判決)。
他方で、保育園の設置者である地方公共団体に対して、国家賠償責任に基づく損害賠償を請求できます(国家賠償法第1条第1項)。
保育園におけるうつぶせ寝が原因の死亡事故について、乳幼児を保護する注意義務を怠った保育園職員は、「業務上過失致死罪」(刑法第211条)によって処罰されることがあります。業務上過失致死罪の法定刑は「5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。
亡くなった乳幼児の保護者やその直系の親族(祖父母など)は、業務上過失致死罪によって保育園職員を刑事告訴することが可能です(刑事訴訟法第231条)。
刑事告訴をすると、警察・検察による捜査が開始され、保育園職員が訴追される可能性が高まります。
都道府県知事は、保育園(保育所)などの児童福祉施設の設置者に対して、必要な報告の要求・関係者に対する質問・施設への立ち入り検査などを行うことができます(児童福祉法第46条第1項)。
これらの調査の結果、児童福祉施設の設備および運営に関する条例の基準を満たしていないと判断したときは、都道府県知事は児童福祉施設の設置者に対して、必要な改善を勧告することができます(同条第3項)。
児童福祉施設の設置者が勧告に従わず、かつ児童福祉に有害であると認められるときは、改善命令を行うことができます(同)。
さらに、児童福祉施設の設備および運営に関する条例の基準を満たしていないことに加えて、児童福祉に著しく有害であると認められるときは、都道府県知事は児童福祉施設の設置者に対して、事業の停止を命ずることができます(同条第4項)。
乳幼児のうつぶせ寝による死亡事故が発生した場合には、報告・質問・立ち入り検査や改善勧告が行われる可能性が高いでしょう。
改善勧告を受けたにもかかわらず、保育園において乳幼児の安全管理状況が改善されなければ、改善命令や事業停止命令に発展する可能性があります。
保育園において発生したうつぶせ寝が原因の死亡事故について、保育園側の法的責任の有無が問題となった裁判例を2つ紹介します。
生後4か月の男児が、保育園において死亡した事案です。第一審は男児の死因はSIDS(乳幼児突然死症候群)であると認定して保育園側の責任を否定したところ、原告が控訴しました。
大阪高裁は、男児の死因がSIDSではなく、うつぶせ時の鼻口閉鎖による窒息死であると認定しました。そして、男児がよくうつぶせになることを保育園の職員は知っていたにもかかわらず、寝かせた後はチェックもせず放置していたとして、職員の注意義務違反を認めました。
そのうえで、両親それぞれに対して各2500万円余り、総額5000万円余りの損害賠償を保育園側に命じました。
1歳の幼児が、保育園で睡眠中に死亡した事案です。
保育園側は、幼児の死因がSIDSであると主張しましたが、福島地裁郡山支部は、男児の死因をうつぶせ寝による窒息死であると認定しました。
福島地裁郡山支部は、幼児をあおむけの体勢で寝かせるか、またはうつぶせの体勢で寝付いた場合には、その状態をきめ細やかに観察して窒息死などをすることがないように配慮すべき義務が保育担当者に課されていたとしました。
しかし実際には、保育担当者は幼児をうつぶせの状態で寝かしつけ、さらに二酸化炭素の拡散状況が不良となる毛布のかけ方をし、その後幼児のそばを約40分にわたって離れ、幼児の状態確認を怠っていました。
これらの点を捉えて、福島地裁郡山支部は保育担当者の注意義務違反を認定し、両親それぞれに対して各2887万円余り、総額5775万円余りの損害賠償を保育園側に命じました。
保育園や幼稚園で事故が発生し、ご自身の子どもが被害に遭ってしまった場合には、すぐに弁護士へ相談しましょう。
保育園・幼稚園における事故について弁護士ができる主なサポートは、以下のとおりです。
弁護士は、保育園・幼稚園における事故について、主に損害賠償請求のサポートを行います。
特に子どもが亡くなった場合には、損害賠償を受けても子どもが帰ってくるわけではありません。しかし、少しでも多くの損害賠償を獲得することが、ご遺族が日常へ戻っていくための手助けとなります。弁護士にご依頼いただければ、法的な根拠に基づく請求を行い、公正な金額の損害賠償を得られるようにサポートいたします。
また、損害賠償請求以外にも、保育園・幼稚園側との再発防止策に関する協議や、保育園職員の刑事告訴などについてもサポート可能です。ご依頼者さまのご要望に応じて、被害回復に向けた適切なアプローチをご提案いたします。
子どもが事故に遭った保育園・幼稚園の関係者(施設長など)とやり取りすることは、精神的に大きな負担を感じるという方が少なくありません。
弁護士にご依頼いただければ、保育園・幼稚園側との協議を全面的に代行いたします。ご依頼者さまのご負担を軽減しつつ、必要な情報は随時共有し、スムーズかつ適正な形による被害の回復を目指します。
保育園・幼稚園における死亡事故については、多額の損害賠償が問題になります。保育園・幼稚園側も争い、訴訟などの法的手続きに発展する可能性が考えられます。
弁護士は、訴訟などの法的手続きにも全面的に対応可能です。
複雑なルールの下で進行する法的手続きも、弁護士にお任せいただければスムーズに対応できます。また、裁判官などに対して被害者側の主張を説得的に伝えることができ、適正な解決を得られる可能性が高まります。
参考
保育園・幼稚園トラブルの
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保育園において、うつぶせ寝による窒息が原因で子どもが亡くなった場合には、保育園側に対して損害賠償を請求できる可能性が高いです。適正額の損害賠償の獲得に向けて弁護士がサポートいたしますので、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、保育園・幼稚園における事故について、被害者のご相談を受け付けております。子どもが保育園・幼稚園において事故に遭い、設置者に対する損害賠償請求などをご検討中の方は、 ベリーベスト法律事務所にご相談ください。弁護士が親身になってサポートいたします。
所在地 | 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス) |
設立 | 2010年12月16日 |
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