学校の運営者は、児童・生徒に対する安全配慮義務に基づき、学校における転落事故を防止しなければなりません。
適切な転落事故防止策を講じていなかった場合、学校側は被害児童・生徒に対して損害賠償責任を負うことがあります。もし子どもが学校で転落事故に遭った場合は、学校側に対する損害賠償請求について弁護士にご相談ください。
本記事では学校における転落事故について、学校側が講ずべき防止措置、学校側の責任、請求できる損害賠償の内容などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
学校現場では、毎年多数の転落事故が発生しています。学校側としては、児童・生徒に対する安全配慮義務の一環として、転落事故を防止するための措置を講じなければなりません。
平成30年度に日本スポーツ振興センターが7199校の公立小中学校を対象に行った調査データによると、発生した事故の合計件数1万1355件のうち、階段での転落が4660件、窓・手すりからの転落が25件、体育館2階部分からの転落が11件でした。
これらの転落事故の件数を合計すると4696件で、全体の40%強を占めています。
出典:「児童生徒の安全・安心と学校空間に関する調査」p14(文部科学省)
学校の運営者は児童・生徒に対して、学校における事故を防止するための安全配慮義務を負うと理解されています(最高裁昭和50年2月25日判決、最高裁昭和62年2月6日判決等)。
転落事故が数多く発生している状況を鑑みると、学校側としては、日常生活や部活動の場面において、転落事故をできる限り防止するための措置を講じる義務を負うと考えるべきでしょう。
転落事故防止のために学校側が講ずべき措置としては、以下の例が挙げられます。
学校側の安全対策が不十分だった結果として転落事故が発生し、児童・生徒がケガまたは死亡した場合には、児童・生徒または遺族は学校側に対して損害賠償を請求できます。
損害賠償請求の相手方は、国公立学校における事故と私立学校における事故で異なる場合があります。
国公立学校において発生した転落事故については、設置者である国または公共団体が被害児童・生徒に対する国家賠償責任を負います。
被害児童・生徒や遺族が、国または公共団体に対して損害賠償を請求できるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
なお、国公立学校における転落事故では、教職員などの公務員に何らかの過失があった場合でも、教職員個人に対して損害賠償を請求することはできません。ただし、教職員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体がその公務員に対して求償権を有します(同法第1条第1項)。
私立学校において発生した転落事故については、その事故について故意または過失がある者(教職員など)が第一義的な損害賠償責任(不法行為責任)を負います(民法第709条)。
また、不法行為責任を負う教職員などを雇用している学校の運営者(学校法人など)も、その選任および事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときを除いて、使用者責任に基づく損害賠償義務を免れません(民法第715条第1項)。
教職員などに故意または過失がないケースでも、学校の敷地内における工作物の設置・保存に瑕疵(かし)があることによって転落事故が生じた場合には、学校の運営者が工作物責任を負います(民法第717条第1項)。
平成30年に大阪府内の市立中学校において、中学1年生の男子生徒が校舎4階の渡り廊下の吹き抜け部分から1階まで12メートルにわたり転落する死亡事故が発生しました。
本事案において学校側は、吹き抜け部分からの転落の危険性を認識せず、安全ネットの設置や注意を喚起するための掲示を行っていませんでした。このような対応に不備があったことを理由に、学校側は自らの過失を認め、遺族に対して約4500万円の損害賠償を支払う内容で和解しました。
参考:「校舎4階から中1転落死「学校側に過失」 市が賠償決定」(朝日新聞デジタル)
学校における転落事故については、積極損害・消極損害・慰謝料として、それぞれさまざまな項目の損害賠償を請求できます。
「積極損害」とは、学校における転落事故が発生しなければ支出を要しなかった費用です。
治療費については全額が損害賠償の対象となるほか、通院交通費・入院雑費・葬儀費用なども損害賠償の対象となります。
介護費用は将来にわたって損害賠償の対象となるので、転落事故によって要介護状態となった場合には、数千万円以上の損害賠償が認められることもあります。
「消極損害」とは、学校における転落事故に遭ったことで失われた経済的利益です。
転落事故によって後遺症をもたらした場合や死亡した場合には、失われた労働能力の割合(=労働能力喪失率。死亡した場合は100%)に応じて、将来にわたり失われた収入を逸失利益として請求できます。
逸失利益の損害賠償は、数千万円から数億円にわたることも少なくありません。
ただし、中間利息控除と生活費控除が行われるため、失われた収入の額面全額の逸失利益を請求できるわけではない点に注意が必要です。
「慰謝料」とは、学校における転落事故に遭ったことによる精神的損害の賠償金です。
入通院慰謝料は、入院および通院の期間や回数に応じて発生します。
転落事故によって後遺症をもたらした場合は、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求可能です。後遺障害慰謝料の金額は、後遺症の部位や程度に応じて決まります。
転落事故によって死亡した場合は、死亡慰謝料を請求できます。子どもが亡くなった場合、死亡慰謝料としては2000万円程度が認められるケースがあります。
参考
学校で発生した事故について、学校側に対する損害賠償請求を行う際には、弁護士へのご相談をおすすめします。
弁護士は、被害児童・生徒や遺族が受けた損害額を適正に見積もったうえで、その全額の賠償を求めて学校側と交渉いたします。法的な根拠に基づいて学校側を説得することで、早期に適正な内容による示談が成立する可能性が高まります。
示談交渉が決裂した場合には、訴訟を通じた損害賠償請求についても弁護士が全面的にサポートいたします。弁護士を訴訟代理人とすれば、ご自身で対応する労力が大幅に軽減されるうえに、裁判所に対して主張を説得的に伝えることができるため、適正な損害賠償を得られる可能性が高いです。
子どもが学校で事故に遭い、学校側に対して損害賠償を請求したい方は、お早めに弁護士までご相談ください。
参考
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学校における転落事故については、学校側の責任を立証できれば損害賠償を請求できる可能性があります。弁護士に相談のうえ、適正額の損害賠償を請求しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、学校事故に関するご相談を受け付けております。
学校側との示談交渉や訴訟などを通じて、適正額の損害賠償を得られるように、経験豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。被害児童・生徒やご家族のご心情に寄り添い、ご意向を尊重しながら丁寧にご対応いたしますので、二人三脚で損害賠償の獲得を目指しましょう。
子どもが学校事故の被害に遭い、学校側に対する損害賠償請求をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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