学校事故の弁護士コラム

修学旅行で事故! 学校の責任と損害賠償請求のポイントを弁護士が解説

  • 学校事故
2023年11月28日
修学旅行で事故! 学校の責任と損害賠償請求のポイントを弁護士が解説

修学旅行中には、不幸にして事故が発生する場合もあります。過去には1955年に発生した紫雲丸事故(沈没事故)のように、多数の修学旅行生が犠牲者となった事故も発生しました。

修学旅行中に子どもが事故に遭った場合は、損害賠償請求や災害共済給付金の請求を検討することができます。加害児童・生徒や学校に対する損害賠償請求については、弁護士にご相談ください。

本記事では、修学旅行中の事故に関する法的責任や、損害賠償請求に関する注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、修学旅行中の事故|誰の責任になるのか?

修学旅行中には、さまざまな事故が発生することがあります。被害者は事故の態様に応じて、加害児童・生徒や学校などに対して損害賠償を請求できる可能性があります。

  1. (1)修学旅行中の事故の例

    以下に挙げるのは、修学旅行中に発生することがある事故の一例です。

    • 他の生徒と口論になった末、殴られてケガをした
    • 海でマリンスポーツをしていたところ、おぼれてしまった
    • スキーやスノーボードをしていたところ、転倒してケガをした
    • 炎天下で活動していたところ、熱中症で倒れてしまった
    • 移動中のバスが交通事故に遭ってケガをした
    • 宿泊先の施設で火災が発生し、煙を吸い込んで身体の不調を訴えた
    など
  2. (2)修学旅行中の事故について責任を負う人

    修学旅行中の事故について責任を負うことがあるのは、加害児童・生徒、学校、バスや船の運営会社、施設管理者などです。

    ① 加害児童・生徒
    特定の児童・生徒(=加害児童・生徒)の故意または過失によって事故が発生した場合、加害児童・生徒は被害者に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負うこととなります(民法第709条)。

    ② 学校
    学校は生徒に対して、事故を防止するための安全配慮義務を負うと解されています(最高裁昭和50年2月25日判決、最高裁昭和62年2月6日判決等)。修学旅行中の事故につき、学校側の安全配慮義務違反が認められる場合には、学校側も被害者に対して損害賠償責任を負います。

    ③ バスや船の運営会社
    バスや船による移動中の事故については、その運営会社が被害者に対して損害賠償責任を負います。

    ④ 施設管理者
    修学旅行中に訪れた施設の利用中に事故が発生した場合には、施設の占有者または所有者が被害者に対して工作物責任を負います(民法第717条)。

2、修学旅行中の事故について受けられる賠償・補償

修学旅行中の事故については、さまざまな項目の損害賠償を請求できます。また、損害賠償を受けられない場合でも、日本スポーツ振興センターの「災害共済給付金」を受給できる場合があります。

  1. (1)損害賠償の主な項目

    修学旅行中の事故については、一例として以下の損害について賠償を請求できます。

    ① 治療費
    ケガや病気の治療にかかった費用につき、実費の賠償を請求できます。

    ② 通院交通費
    ケガや病気の治療のために通院した場合、要した交通費の賠償を請求できます。

    ③ 装具・器具購入費
    ケガの治療やリハビリなどのために購入した装具・器具の購入費用につき、実費の賠償を請求できます。
    (例)義歯・義手・義足・眼鏡・車いす・コルセット・サポーターなど

    ④ 付添費用
    入院または通院の際に家族などが付き添った場合、付添費用の賠償を請求できます。

    ⑤ 介護費用
    修学旅行中の事故によって要介護状態となった場合、将来にわたる介護費用の賠償を請求できます。

    ⑥ 入院雑費
    入院中における日用品などの購入費用について、賠償を請求できます。

    ⑦ 入通院慰謝料
    修学旅行中の事故によって入院や通院を強いられたことによる、精神的損害の賠償を請求できます。

    ⑧ 後遺障害慰謝料
    ケガや病気が完治せずに後遺症が残った場合、後遺症についての精神的損害の賠償を請求できます。

    ⑨ 死亡慰謝料
    修学旅行中の事故によって子どもが死亡した場合には、遺族が精神的損害の賠償を請求できます。

    ⑩ 葬儀費用
    修学旅行中の事故によって子どもが死亡した場合には、遺族が葬儀費用の賠償を請求できます。
  2. (2)損害賠償を受けられない場合|災害共済給付金

    修学旅行中に子どもが負傷し、病気にかかり、または死亡した場合には、日本スポーツ振興センターに対して災害共済給付金の受給を申請できます。給付金額の上限は、障害が残った場合で最大4000万円、死亡した場合で最大3000万円です。

    ただし、災害共済給付金の対象となるのは、学校の管理下で発生した事故に限られます。たとえば、修学旅行の解散後に遊びに行った際に事故に遭った場合などは、災害共済給付金の対象外となる点にご注意ください。

    なお、災害共済給付金を受給した場合は、その金額が損害賠償額から控除されます。

    災害共済給付金制度の詳細は、日本スポーツ振興センターのウェブサイトをご参照ください。
    参考:「災害共済給付金制度について」(日本スポーツ振興センター)

3、修学旅行中の事故の損害賠償請求に関する注意点

修学旅行中の事故について、加害児童・生徒や学校などに対して損害賠償請求を行う際には、法律上のルールや手続きに留意する必要があります。

特に以下のポイントは、損害賠償請求の成否や対応に関して重要になるので、十分注意したうえで準備を進めましょう。

  1. (1)被害者に過失がある場合は、損害賠償が減額される

    修学旅行中の事故の発生について、被害者側にも何らかの過失がある場合は、損害賠償額が減額されます(民法第722条第2項)。これを「過失相殺」といいます。

    たとえば、生徒が教職員に無断で、整備されていない岩場へ行って遊んでいたところ、転倒してケガをしたケースを考えます。
    学校側には、危険な岩場に生徒を立ち入らせないようにする安全配慮義務があると考えられます。したがって、生徒が岩場に行くのを止めずに見過ごしたことにつき、学校側の安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が認められる余地があります。

    その一方で、このようなケースでは学校側だけが悪いわけではありません。生徒自身にも、教職員に無断で岩場に行ったことについて過失があります。
    この場合、生徒が学校側に対して請求できる損害賠償額は、生徒と学校側の間の過失割合に応じて減額されることになります。

    たとえば、ケガによって生徒が100万円の損害を被ったとします。このとき、仮に生徒の過失が8割、学校側の過失が2割だとすると、生徒は学校に対して20万円しか損害賠償を請求できません。

    過失割合については、生徒と学校側の間で意見が食い違うケースが多いので、弁護士を代理人として適切な主張を行うことが大切です。

  2. (2)事実関係に争いがある場合は、証拠が重要になる

    修学旅行中の事故に関する事実関係に争いがある場合は、事故の状況に関する証拠が重要になります。

    たとえば、前述の岩場でケガをしたケースについては、岩場における事故の危険性はどの程度あったのか、学校側がどのような監視体制をとっていたのかなどが、損害賠償請求の当否を判断するうえで重要な要素です。

    岩場における事故の危険性は、岩の形状や水でぬれていたかどうか、当日の天候などによって左右されます。現場の写真や、事故当日の気象データなどが、これらの事実を立証し得る証拠として考えられます。

    学校側の監視体制については、第三者委員会による事故調査結果の報告書などがあれば望ましいですが、学校側の協力が得られなければ難しいでしょう。
    しかし、学校側の監視がずさんであったことについて、他の生徒などから証言を得られれば、安全配慮義務違反の立証につながる可能性があります

    どのような証拠が有効に働くかは、事故の性質などによって異なります。弁護士のサポートを受けながら、有力な証拠をできる限り豊富に集めましょう

  3. (3)示談交渉がまとまらない場合は、訴訟に発展する

    加害児童・生徒や学校などとの示談交渉がまとまらない場合、最終的には裁判所に対して損害賠償請求訴訟を提起することになります。

    訴訟においては、事故状況や損害などに関する証拠を示して、損害賠償請求権の存在を立証しなければなりません。専門的な検討と煩雑な対応が必要になりますので、弁護士へのご依頼をおすすめします

4、修学旅行中の事故で法的措置を検討する場合は弁護士へ

修学旅行中に子どもが事故に遭った場合は、損害賠償請求について弁護士にご相談ください。弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 損害賠償請求が可能かどうか、どのような準備が必要かなどについて、法的な観点から適切なアドバイスを受けられる
  • 法的な根拠に基づき、適正額の損害賠償を請求できる
  • 加害児童・生徒および学校などとの示談交渉や、訴訟などの法的手続きの対応を弁護士に一任できる

被害者が適正な損害賠償を受けられるように、弁護士が親身になって尽力いたします。

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5、まとめ

修学旅行中の事故については、加害児童・生徒や学校などに対して損害賠償を請求できる可能性があります。弁護士は、損害賠償請求に必要な準備や対応の大部分を代行し、適正額の損害賠償を受けられるようにサポートいたします。

ベリーベスト法律事務所は、学校問題に関するご相談を随時受け付けております。子どもが修学旅行中に事故に遭った場合や、その他の学校に関するトラブルに巻き込まれた場合には、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
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  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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