学校事故の弁護士コラム

体育の授業中に怪我! 学校での怪我の責任と受けられる補償とは

  • 学校事故
2023年10月26日
体育の授業中に怪我! 学校での怪我の責任と受けられる補償とは

体育の授業中に子どもが怪我をした場合、教職員や学校、加害児童・生徒の責任を追及できる可能性があります。では、どのような場合に学校などへ責任を追及できるのでしょうか。

また学校などの責任を追及できない場合に受けられる補償はないのか、といったことなども気になるところだと思います。

本記事では体育の授業中の怪我について、責任を負う人、災害共済給付金の受給要件、損害賠償請求の手続きなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、体育の授業中の怪我|誰が責任を負うのか?

体育の授業中に子どもが怪我をした場合、その責任を負う可能性があるのは、主に教職員、学校、加害児童・生徒です。

  1. (1)教職員の責任

    体育の授業中の怪我について、教職員に監督上の過失がある場合は、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことがあります(民法第709条)。

    (例)
    • 危険な運動をする際、教員が注意事項を説明しなかった結果、児童・生徒が怪我をした
    • 児童・生徒の能力を大幅に超える運動を指示した結果、児童・生徒が怪我をした
    など

    ただし、国公立学校の教職員は、生徒に対して直接の損害賠償責任を負わないと解されています(最高裁昭和30年4月19日判決)。したがって、体育の授業中の怪我について教職員の個人責任を追及できるのは、私立学校の場合のみです。

  2. (2)学校の責任

    体育の授業中の怪我について、教職員に監督上の過失がある場合は、学校側も損害賠償責任を負います
    国公立学校の場合は、学校を設置した国または公共団体(自治体)が国家賠償責任を負います(国家賠償法第1条第1項)。私立学校の場合は、学校を運営する学校法人などが使用者責任を負う可能性が高いです(民法第715条第1項)。

    また、学校の設備の設置・管理に関する瑕疵(かし)が原因で生じた怪我についても、学校側が損害賠償責任を負います。
    国公立学校では国家賠償責任(国家賠償法第2条第1項)、私立学校では工作物責任(民法第717条第1項)がその根拠です。

  3. (3)加害児童・生徒の責任

    体育の授業中の怪我が、他の児童・生徒の故意または過失によって生じた場合は、加害児童・生徒への損害賠償請求が可能な場合があります。

    ただし、加害児童・生徒の責任については、以下の2点に注意が必要です。

    ① 違法性阻却
    スポーツのルールを逸脱することなく、通常予測・許容された動作に起因して怪我が生じた場合は、加害児童・生徒の行為について違法性が否定され、損害賠償請求が認められないことがあります。

    ② 責任能力
    加害児童・生徒が自己の行為を弁識するに足りる知能(=責任能力)を備えていなかったときは、怪我をさせた行為について損害賠償責任を負いません(民法第712条)。
    なお責任能力が認められるのは、12歳程度からと考えられています。

    加害児童・生徒に責任能力がない場合は、監督義務者(主に親)の責任を追及できる可能性があります(民法第714条第1項)。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、監督義務者の責任を追及できません。

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2、学校や教職員の責任を追及できない場合の「災害共済給付金」

体育の授業中の怪我について損害賠償を受けられない場合でも、「災害共済給付金」を受給できる可能性があります。

参考:「災害共済給付金制度について」(日本スポーツ振興センター)

  1. (1)災害共済給付金の受給要件

    災害共済給付金の対象となるのは、学校の管理下で生じた負傷などで、療養に要する費用の額が5000円以上のものです。

    「学校の管理下」とは、以下のいずれかに該当する場合を意味します。

    ① 学校が編成した教育課程に基づいて、授業を受けている場合
    (例)体育の授業中の怪我

    ② 学校の教育計画に基づいて、課外指導を受けている場合
    (例)部活動中の怪我

    ③ 休憩時間に学校にいる場合、その他校長の指示または承認に基づいて学校にいる場合
    (例)昼休み中の怪我

    ④ 通常の経路および方法で通学する場合
    (例)登下校中の怪我

    ⑤ 学校外で授業などが行われるときの合理的な経路、方法による移動中
    (例)家から集合場所へ向かう際に負った怪我

    ⑥ 学校の寄宿舎にいる場合
    (例)寮にいる間の怪我
  2. (2)災害共済給付金の金額

    災害共済給付金の給付金額は、以下のとおりです。

    ① 負傷・疾病
    医療費として、医療保険並みの療養に要する費用の額の4/10
    ※ただし、高額医療費の対象となる場合は、自己負担額に、療養に要する費用の額の1/10を加算した額
    ※入院時食事療養費の標準負担額がある場合は、その額を加算する

    ② 障害
    障害見舞金として、4000万円~88万円
    ※認定される障害等級(1級~14級)によって異なる
    参考:「障害等級表」(日本スポーツ振興センター)

    ③ 死亡
    死亡見舞金として、3000万円

    災害共済給付金は、怪我による損害全額をカバーするものではありません。そのため、補償が不十分な場合は、学校などに対する損害賠償請求を検討することができます。

3、体育の授業中の怪我に関する損害賠償請求の手続き

体育の授業中の怪我について損害賠償を請求する手続きは、主に交渉と訴訟の2つです。まずは交渉を試み、決裂した場合には訴訟を提起することが多いといえます。

  1. (1)交渉

    交渉は、教職員、学校、加害児童・生徒など、損害賠償を請求する相手方との間で直接話し合う手続きです。

    被害者は相手方に対して希望する損害賠償額を提示し、相手方が再提示を行うなどのやり取りを繰り返して、合意の成立を目指します。条件を提示する際には、法的な根拠に基づき、請求額の妥当性を主張することがポイントです。

    合意がまとまったら、その内容を記載した合意書を締結し、損害賠償金を精算する流れとなります。

  2. (2)損害賠償請求訴訟

    交渉がまとまらない場合は、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することができます。

    訴訟は、公開の法廷で行われる紛争解決手続きです。被害者は原告として、加害者(教職員、学校、加害児童・生徒等)の責任の根拠となる事実を主張・立証し、裁判所に対して損害賠償を命じる判決を求めます。

    訴訟の途中で和解が成立することもありますが、和解が難しい場合は判決が言い渡されます。判決は控訴・上告の手続きを経て確定し、強制執行が可能となります。

4、学校での怪我・事故を弁護士に相談すべき理由

子どもが学校で怪我をした場合は、損害賠償請求について弁護士に相談することをおすすめします。
学校での怪我や事故を弁護士に相談することには以下のようなメリットがあります。

  1. (1)交渉や訴訟の対応を一任できる

    弁護士には、損害賠償請求に関する交渉や訴訟につき、その対応をすべてお任せいただけます。

    弁護士が法的な検討を行ったうえで、適切な主張を相手方や裁判所に伝えれば、有利な解決を得られる可能性が高まります。手続きや法律上のルールを調べる労力も不要となるため、被害者や保護者のご負担は大きく軽減されるでしょう。

  2. (2)適正額の損害賠償を請求できる

    学校事故について賠償を請求できる損害項目は、非常に多岐にわたります。以下に挙げるのは、損害賠償を請求し得る項目の一例です。

    • 治療費
    • 通院交通費
    • 装具、器具の購入費
    • 付添費用
    • 入院雑費
    • 入通院慰謝料
    • 後遺障害慰謝料
    • 逸失利益
    など

    弁護士にご依頼いただければ、これらの損害項目を漏れなく把握したうえで、適正額の損害賠償を請求いたします。学校事故による怪我について十分な賠償を受けたい方は、弁護士のサポートを受けるのが安心です。

  3. (3)精神的な負担が軽減される

    怪我の治療に取り組みながら、学校側や加害児童・生徒に対する損害賠償請求についても対応するのは非常に大変です。相手方から心無い反論を受け、精神的に疲弊してしまう方も少なくありません

    弁護士には、相手方とのやり取りや手続きへの対応を一任していただけます。
    弁護士が対応を代行することで、被害者や保護者が矢面に立つ必要はなくなります。その結果、精神的なご負担が大きく軽減され、治療や生活の立て直しに集中できるようになるでしょう。

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5、まとめ

子どもが学校での体育活動中に怪我をした場合は、教職員や学校、加害児童・生徒に対して責任を追及できる可能性があります。学校事故に関して請求できる損害賠償の項目は、医療費、慰謝料、逸失利益などをはじめとして、非常に多岐にわたります。そのため、適正額の損害賠償を漏れなく請求するためには、弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。
また損害賠償請求が難しい場合でも、災害共済給付金を受給できる可能性があります。

ベリーベスト法律事務所は、学校事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。弁護士が親身になってご相談をお伺いし、適正額の損害賠償を得られるようにサポートいたします。

また損害賠償請求のほかにも、事故防止や学校現場への復帰などについて、学校側のサポートや取り組みを求めることもできます。弁護士が被害者やご家族のご意向を踏まえて、学校側と適切にコミュニケーションをとり、安心して学校に戻れるような環境づくりをサポートいたします。

子どもが学校で事故に遭い、教職員、学校、加害児童・生徒に対する損害賠償請求などをご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。弁護士が丁寧にお話を伺い、対応方針をアドバイスいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-187-059
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL https://www.vbest.jp/
  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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