学校事故の弁護士コラム

学校給食における食物アレルギー事故|学校側の法的責任とは?

  • 学校事故
2023年12月19日
学校給食における食物アレルギー事故|学校側の法的責任とは?

学校給食が原因で発生した食物アレルギー事故については、被害者に対して学校側が損害賠償責任を負うことがあります。

もし子どもが学校で食物アレルギーを発症した場合は、弁護士を代理人として、学校側に対する損害賠償請求を行うことを検討しましょう。

本記事では、給食アレルギー事故の法的責任などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、学校側が行うべき、学校給食に関する食物アレルギー対応

文部科学省は、学校給食における食物アレルギー対応指針を策定・公表しています。また、各自治体でも独自に食物アレルギー対応指針を公表していることがあります。
学校側は、各指針に従って、食物アレルギーの予防および対応に関する体制を整備しなければなりません

参考:「学校給食における食物アレルギー対応指針」(文部科学省)

学校給食に関する食物アレルギー対策は、大きく以下の3段階に分かれます。各段階における学校側の対策に何らかの不備があったことが原因で食物アレルギーが発生した場合には、学校側への損害賠償請求が認められる可能性があります


  1. (1)情報の把握と共有

    学校側は第一に、食物アレルギー対応が必要となる児童・生徒を把握し、全教職員への対応を周知徹底すべきといえます。特に、栄養教諭・学校栄養職員・調理員には情報共有を徹底する必要があります

    また、対象児童・生徒の保護者にも対応内容を通知し、個別の取組プランについて説明したうえで、書面で了解を得ておくべきです。毎月の献立内容についても、保護者に詳細な情報を共有し、必要に応じて調整を行うことが求められます。

  2. (2)アレルギー事故の予防

    アレルギー事故を未然に防ぐため、学校側には以下の対応を行うことが求められます。

    ① 調理器具・食材の管理
    アレルギー対応に用いる調理器具や食器具類は、対応食専用のものを用いることが望ましいです。専用品を用いる場合は、一般の調理器具や食器具類から区別して保管します。

    対応用食材については、物資選定委員会などによって決定された安全なものを使用し、他の食材から区別して保管します。

    ② 調理担当者の区別化
    アレルギー対応食を担当する調理員をその他の調理員から区別して、作業の単純化と引き継ぎによるエラーの防止を図ります。

    ③ 調理作業の区別化
    アレルギー対応食を調理する作業は、一般の給食の調理から区別することが望ましいとされます。

    ④ 確認作業の方法・タイミングの決定
    アレルギー対応食に関する確認作業を行う際の方法やタイミングは、あらかじめ決めておくべきといえます。確認者やダブルチェック、声だし指さし確認などを定めておきましょう。

    ⑤ 調理場における対応の評価
    調理場で対応できる限界を整理したうえで、教育委員会などへのフィードバックと問題提起を行います。
  3. (3)緊急時の対応

    実際に学校給食におけるアレルギー事故が発生した場合は、学校・消防機関(救急車)・医療機関などが連携して対応することが求められます。

    特に学校においては、事前に定めたマニュアルなどを踏まえつつ、アレルギーを発症した児童・生徒の状態に応じて臨機応変に対応しなければなりません

2、学校給食でのアレルギー事故に関する学校側の責任

児童・生徒に食物アレルギーがあることを学校側が把握していたにもかかわらず、予防措置などを怠ったことでアレルギー事故が発生した場合、被害者は学校側に損害賠償を請求できる可能性があります。

アレルギー事故に関する損害賠償の請求先は、国公立学校か私立学校かによって異なります。

  1. (1)国公立学校におけるアレルギー事故の法的責任

    国立・公立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:学校の設置者(国・都道府県・地方自治体など)

    国公立学校でアレルギー事故が発生した場合は、教職員個人に対して損害賠償を請求することはできません(最高裁昭和30年4月19日判決)。

    その一方で、国公立学校の教職員の過失によってアレルギー事故が発生した場合には、その学校を設置した国または公共団体が、被害者に対して国家賠償責任を負います(国家賠償法第1条第1項)。

  2. (2)私立学校におけるアレルギー事故の法的責任

    私立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:教師・学校法人

    私立学校でアレルギー事故が発生した場合は、事故の発生において過失があった教職員に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法第709条)。
    また、過失があった教職員を雇用している学校法人などに対しても、使用者責任に基づく損害賠償を請求できます(民法第715条第1項)。

    教職員と学校法人などは共同不法行為者に当たるため、アレルギー事故の被害者は、受けた損害全額の賠償を、教職員と学校法人のどちらに対しても請求できます
    たとえば教職員だけに全額を請求する、学校法人だけに全額を請求する、教職員と学校法人に半額ずつ請求するなど、請求額の配分を選択可能です。ただし、二重取りは認められません

3、学校給食のアレルギー事故について、学校側の責任が認められた裁判例

札幌地方裁判所平成4年3月30日判決(判例タイムズ783号280頁)の事件では、札幌市立の小学校において、6年生の生徒が給食に起因してそばアレルギーを発症し、強度のぜんそく発作によって異物を誤飲して窒息死しました。生徒の父母は、札幌市などを被告として損害賠償請求訴訟を提起しました。

本件において、生徒は過去に担当教諭に対して、そばが食べられないことを伝えていました。
ある日の給食において、生徒は担当教諭に五目そばを食べていいか尋ねたところ、担当教諭は「食べていいと連絡がきていないから食べないように」と指示しました。生徒はいったんうなずきましたが、その後五目そばを食べてしまいました。

生徒は間もなく、そばアレルギーの症状によって口の周りが赤くなったので、担当教諭は生徒の母親に対して「病院に連れて行くのは少しでも早いほうがいいと思うのでこれから帰したい」と伝えたところ、母親からは帰してほしいとの返事を受けました。
担当教諭は単独で帰宅させても大丈夫と判断し、生徒を保健室に連れて行くことも、養護教諭にみせることもせず、ひとりで帰宅させました。母親も、生徒を迎えに行くことはありませんでした。
その後、生徒はアレルギー反応による強度のぜんそく発作を生じ、異物の誤飲によって窒息死してしまいました。

札幌地裁は、担当教諭の過失に加えて、担当職員に対する給食の安全教育や安全な給食の提供を行う義務を負う札幌市教育委員会の過失を認定し、札幌市に対して損害賠償を命じました。

損害額について札幌地裁は、父母の総額として3000万円余り(別途、受領(じゅりょう)済みの災害共済給付金計700万円)を認定しました。
しかしその一方で、母親がそばに代わる食事を持参させるべき旨の学校側の指示に従わなかったことや、生徒を迎えに行く行動をとらなかったことを指摘して、5割の過失相殺を行いました。
結論として札幌地裁は、父母を合わせて総額1564万円の損害賠償を札幌市に命じました

4、学校給食のアレルギー事故について弁護士ができること

子どもが学校給食を食べた結果、食物アレルギーを発症した場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。

弁護士は、学校給食によるアレルギー事故について、主に以下のサポートを行っています。


  1. (1)損害賠償請求の代理

    弁護士は、学校側に対する損害賠償請求について代理人として対応いたします。

    具体的には、学校側の過失を基礎づける証拠の収集や、法的根拠に基づく主張内容の検討などをサポートいたします。また、学校側との示談交渉や損害賠償請求訴訟などの手続きも、弁護士にお任せいただけます。

    弁護士を通じて損害賠償請求を行うことにより、裁判所に被害者側の主張を理解してもらいやすくなり、適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。また、準備や対応に要する被害者やご家族のご負担も大幅に軽減されます。

  2. (2)再発防止策の要請

    子どもが引き続き在学する場合は、食物アレルギーに関する再発防止策が適切に実施されるかどうかも、ご本人やご家族にとって重要な関心事でしょう。

    弁護士は、学校側に対して再発防止策を要請する際にも、被害者やご家族を代弁する役割を担います。法律上の根拠と具体的な事情に基づいた提言を行い、さらに被害者としてのメッセージもしっかりと伝えることで、学校側に適切な再発防止策の実施を促します

    弁護士は、損害賠償請求の代理と再発防止策の要請の両面で、アレルギー事故の被害者やご家族をバックアップいたします。学校給食に関するアレルギー事故の被害については、弁護士にご相談ください。

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5、まとめ

学校給食によって子どもがアレルギーを生じ、そのことについて担当教諭などの過失が認められる場合は、学校側に対して損害賠償を請求できます。適正額の損害賠償を受けるためには、弁護士にご相談のうえで請求内容などを綿密に検討しましょう

ベリーベスト法律事務所は、学校事故に関するご相談を受け付けております。学校給食を原因とする食物アレルギーについても、損害賠償請求や再発防止策の要請などを代理人としてサポートいたします。

子どもが学校給食を食べた後にアレルギー反応を生じた場合は、損害賠償請求などについてお早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
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  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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