いじめが原因で子どもが不登校になってしまった場合、親としてはどのように対応すればよいかわからず、不安や悩みを抱えている方も多いでしょう。
いじめは、非常にデリケートな問題です。そのため、誤った対応をしてしまうと子どもにも精神的なストレスが生じてしまう可能性がありますので、慎重に対応する必要があります。
今回は、いじめが原因で子どもが不登校になってしまった場合の対応や学校、加害児童・生徒に対する責任追及などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
いじめと不登校にはどのような関係があるのでしょうか。以下では、実際の統計資料をもとにいじめと不登校に関する実態を紹介します。
文部科学省の調査によると、全国の小中高等学校および特別支援学校における、令和4年度のいじめの認知件数は、68万1948件でした。令和3年度のいじめの認知件数が61万5351件、令和2年度のいじめの認知件数が51万7163件でしたので、年々増加傾向にあります。
また、いじめを認知した学校数の割合が、82.1%(2万9842校/3万6366校)であったことを踏まえると、全国のほとんどの学校でいじめが発生している状況といえるでしょう。
同じく文部科学省の調査によると、全国の小中学校における令和4年度の不登校児童・生徒数は29万9048人で、そのうち、いじめが原因で不登校になった児童・生徒数は674人でした。前年度の不登校児童・生徒数が24万4940人で、いじめが原因で不登校になった児童・生徒数が516人でしたので、前年度と比較しても増加傾向にあります。
また、全国の高等学校における不登校生徒数では、令和4年度は6万575人でした。そのうち、いじめが原因で不登校になった生徒数は124人でした。小中学校における、いじめによる不登校児童数と比較すると高等学校は少ないですが、前年度の不登校生徒数が5万985人で、いじめが原因で不登校になった児童・生徒数が104人であったことと比較すると高等学校でも増加しています。
このように、いじめを原因とする不登校児童・生徒は年々増加しています。ではいじめが原因で子どもが不登校になってしまった場合にとることができる対応について、2章で詳しく解説します。
いじめが原因で子どもが不登校になってしまった場合には、以下のような対応を検討しましょう。
子どもが不登校になってしまうと、「勉強についていけなくなる」などの焦りから、子どもの気持ちを無視して、学校に行くようにすすめてしまうことがあるかもしれません。しかし、いじめが原因となっている不登校のケースにおいてはそのような対応は避けたほうがよいといえます。
子どもが学校に行きたくないという場合には、無理に学校に行かせるのではなく、子ども自身がどうしたいのか、子どもの意思を確認することが大切です。たとえば、転校したい、しばらく休みたい、学校に行きたいけれど不安があるなど、子どもの気持ちもさまざまです。子ども自身もさまざまな葛藤に苦しんだうえで、不登校という結論に達していますので、学校に行かないことを責めるのではなく、子どもに寄り添いながら気持ちを受け入れてあげるようにしましょう。
学校でのいじめが不登校の原因となっている場合、学校に連絡し、今後の対応について協議していく必要があります。学校には、いじめ防止対策基本法により、いじめに対応する法的義務があります。いじめをそのまま放置していては、今後子どもが学校に行きたくなったとしても安心して通うことができません。そのため、いじめの事実確認や調査を求めるようにしましょう。
また、子どもが不登校になると勉強の遅れも心配になりますので、学習機会の確保についても学校と相談していくとよいでしょう。
子どもの不登校に関する悩みは、保護者だけでは解決できない場合もありますので、以下のような専門機関に相談することもひとつの方法です。
また、電話相談ではなく、実際に面談して相談したい、自分たちに代わって学校や加害児童・生徒の対応をしてもらいたいという場合には、弁護士への相談がおすすめです。
子どもに対するいじめがあった場合、法的措置をとることも手段のひとつです。具体的には、学校や加害児童・生徒に対して以下のような対応を検討することができます。
学校には、児童・生徒の生命や安全を守らなければならないという安全配慮義務があります。いじめ防止対策基本法により、いじめの防止・対策などをとる責務がありますので、学校側は、いじめがないか注意深く見極め、いじめの存在が疑われるときはその実態を調査し、適切な防止策を講じなければなりません。
児童・生徒がいじめの被害に遭い損害が生じた場合に、学校がこのような義務に違反しているという場合には、学校側は、不法行為または安全配慮義務違反による債務不履行を理由に損害賠償責任を負うことになります。
子どもがいじめられて不登校になった場合には、学校側の過失などを立証することで、学校側に損害賠償請求をすることが可能です。
いじめにより子どもが不登校になってしまった場合、直接の加害者はいじめをした加害児童・生徒になります。このような加害児童・生徒に対しては、不法行為を理由に損害賠償請求をすることが可能です。
ただし、加害児童・生徒の年齢によっては、責任能力が認められないことがあります。その場合には、加害児童・生徒の親に対して、監督義務者としての責任を追及していくことになります(民法714条1項)。また、加害児童・生徒自身には、通常、損害を賠償する資力はありませんので、責任能力が認められる事案であっても、親の監督義務違反を理由として、不法行為責任を追及していくのが一般的です(民法709条)。
なお、以下のようないじめがあった場合には、犯罪行為に該当しますので、加害者を刑事告訴することも可能です。
参考
子どもがいじめで不登校になってしまった場合、弁護士は以下のようなサポートが可能です。
いじめ被害に関するさまざまな対応を学校や加害児童・生徒などに求めていくには、保護者自身がやり取りなどをしていかなければなりませんが、実際にどのように対応すればよいかわからない方が多いでしょう。また、いじめ問題を解決したいという強い気持ちから学校などとのやり取りにおいて感情的になってしまうことがあるかもしれません。
そのような場合でも、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として学校や加害者とのやり取りを行うことができますので、精神的ストレスを大幅に軽減することにつながります。またお互いに冷静になって話し合いを進めることができますので、早期に問題解決できる可能性が高くなるでしょう。
不登校になった児童・生徒が学習の機会を失うことがないようにするために、平成28年に教育機会確保法が制定されました。
教育機会確保法では、不登校になった児童・生徒に対しても、学校側は、学習の進捗(しんちょく)状況に応じた支援をすることが求められています。どのような形で学習機会を確保するのかは、子どもの希望や学校側の支援体制などを踏まえて考えていかなければなりません。
ご自身で学校側と協議をするのが難しいという場合には、そのような協議も弁護士に依頼することが可能です。弁護士が学校との間に立って、最適な学習環境の確保に向けて交渉を進めていきます。
学校側にいじめがあったと訴えても、「そんなはずはない」などと言われ、いじめの実態把握のための調査を適切に行ってくれないことがあります。
このようなケースでは、弁護士から学校や教育委員会に働きかけることにより、いじめ調査に乗り出してくれる可能性があります。どのような調査を行うべきかなども弁護士から詳細に指示することもできますので、より正確な調査が期待できるでしょう。
学校側や加害児童・生徒およびその親に対して、法的責任追及をする場合には、法律の知識や経験が不可欠となります。いじめは、学校という閉鎖的な空間で行われますので、法的責任追及をする前提として、まずはいじめがあったという証拠を集めていかなければなりません。
弁護士に依頼すれば、いじめの証拠収集から交渉、裁判などの一連の対応をすべて任せることができます。裁判になれば、非常に複雑な手続きなどが必要ですが、そのような手続きも弁護士に任せれば安心です。
参考
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いじめの認知件数やいじめを理由に不登校になる児童・生徒は、年々増加傾向にあります。親としては、子どもの心のケアをしつつ、学校側や加害者の責任追及をするのは非常に大変だといえます。
弁護士であれば状況に応じた対応を検討し、学校や行政が適切に対応するよう協議・サポートすることが可能です。また法的措置が必要になった場合の手続きなどもお任せいただけます。子どものいじめ問題にお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
所在地 | 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス) |
設立 | 2010年12月16日 |
連絡先 | [代表電話]03-6234-1585 [ご相談窓口]0120-187-059 ※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。 |
URL | https://www.vbest.jp/ |
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