いじめの弁護士コラム

いじめ被害で訴えることはできる? 被害者が取れる法的対処法とは

  • いじめ
2023年08月22日
いじめ被害で訴えることはできる? 被害者が取れる法的対処法とは

学校で子どもがいじめを受けた場合、加害児童・生徒やその親、学校の設置者などの法的責任を追及できる可能性があります。

加害者や学校側を訴える方法には、民事訴訟や刑事告訴などがあります。長期戦になるケースも多いので、弁護士に相談して十分な準備を整えましょう。

今回はいじめ被害で訴える際の方法や注意点などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。


1、学校でいじめを受けた場合、誰の責任を追及できる?

いじめの被害に遭った場合、本人は多大な精神的ショックを受けてしまいます。状況によっては通院が必要になったり、転校を余儀なくされたりして、多額の支出を強いられるケースもあるでしょう。

いじめ被害者が受けたこのような損害については、加害者本人・加害者の親・学校の設置者の責任を追及できる可能性があります。

  1. (1)加害者本人

    被害者が損害賠償を請求できる相手:加害者本人

    いじめ加害者は被害者に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。

    たとえば被害者が暴力を受けた場合、ケガの治療費や慰謝料などが損害賠償の対象です。ケガの後遺症がある場合には、逸失利益(ケガや後遺症が生じなかった場合、本来得られるはずだった収入)を含めて高額の損害賠償を請求できます。
    侮辱や仲間外れにするなどの精神的な攻撃についても、被害者が受けた精神的損害に対応して、加害者に慰謝料の支払いを請求できます。

    さらにいじめについては、以下の犯罪が成立する可能性があります。

    ① 傷害罪(刑法第204条)
    暴力などによって他人にケガをさせる行為があった場合に成立します。法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

    ② 脅迫罪(刑法第222条)
    何らかの害悪を告知して他人を脅迫する行為があった場合に成立します。法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    ③ 強要罪(刑法第223条)
    土下座を強要するなど、脅迫・暴行を用いて他人に義務のないことを行わせる行為があった場合に成立します。法定刑は「3年以下」の懲役です。

    ④ 名誉毀損(きそん)罪(刑法第230条)
    公然と事実を摘示して、他人の名誉を毀損する行為があった場合に成立します。法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。

    ⑤ 侮辱罪(刑法第231条)
    事実を摘示せず、公然と他人を侮辱する行為があった場合に成立します。法定刑は「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。

    ⑥ 恐喝罪(刑法第249条)
    他人を脅して財物を交付させる行為があった場合に成立します(いわゆるカツアゲなど)。法定刑は10年以下の懲役です。

    ⑦ 器物損壊罪(刑法第261条)
    他人の物を壊す行為があった場合に成立します。法定刑は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。

    など

    いじめの加害者は、いじめ行為の内容に応じて、上記の犯罪などについて刑事責任を問われる可能性があります。

  2. (2)加害者の親

    被害者が損害賠償を請求できる相手:加害者の親(保護者)

    被害者に対するいじめの損害賠償責任は、加害者本人が負うのが原則です。

    ただし、未成年者が自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、いじめについて損害賠償責任を負いません(民法第712条)。つまり、加害者本人が自分の行った行為の責任について理解できない場合には、責任無能力者としてみなされ、本人は損害賠償責任を負わないということです。責任能力の有無について明確な基準はありませんが、おおむね10歳から12歳程度が責任能力のボーダーラインと解されています。

    いじめの加害者本人が責任無能力者である場合には、被害者は加害者の親に対して、監督義務者の責任に基づく損害賠償を請求できます(民法第714条第1項)。
    加害者の親は、子どもへの監督義務を怠らなかったこと、または監督義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを証明すれば監督義務者としての責任を免れますが、そのハードルはかなり高くなっています。

    なお、いじめの加害者が未成年者であっても、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えている場合には、加害者本人が損害賠償責任を負います。この場合、被害者は加害者の親に対しては損害賠償を請求できません。

    ただし実際には、未成年者である加害者本人が、いじめの損害賠償を自分で支払うのは困難であることが大半です。その場合、加害者の親が損害賠償を支払うこととなるでしょう。

  3. (3)学校側|国・自治体・学校法人・教師など

    私立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:教師・学校法人
    国立・公立学校の場合に被害者が損害賠償を請求できる相手:学校の設置者(国・都道府県・地方自治体など)

    教師がいじめに加担した場合や、いじめをやめさせることなく放置した場合には、学校の設置者も被害者に対して損害賠償責任を負います(国家賠償法第1条第1項、民法第715条第1項)。
    国立学校・公立学校であれば国や自治体、私立学校であれば学校法人などが学校の設置者にあたり、損害賠償責任を負担します。

    また私立学校の場合は、いじめに加担し、または監督義務を怠った教師個人に対しても損害賠償請求が可能です(民法第709条)。
    これに対して、国立学校・公立学校の場合は、教師(公務員)の個人責任が否定されているため、教師に対する損害賠償請求はできません

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2、いじめの加害者や学校側を訴える方法

いじめの加害者や学校側を訴える方法としては、民事訴訟と刑事告訴の2通りがあります。

いじめで加害者・学校側を訴える方法は民事訴訟と刑事告訴の2種類
  1. (1)民事訴訟

    民事訴訟は、裁判所の公開法廷において法律トラブルの解決を図る制度です。
    加害者や学校側との間で損害賠償請求の示談交渉がまとまらない場合には、民事訴訟を提起して強制的な解決を図ることができます

    いじめの被害者は原告として、裁判所に訴状を提出し、損害賠償請求訴訟を提起します。一方、加害者や学校側は被告として、原告の請求に対して反論します。

    裁判所は原告・被告双方の主張を聴き取り、損害賠償請求権の発生要件が満たされているか否かを審理します。審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡します。

    損害賠償を命ずる判決が確定すると、被害者は裁判所に対して強制執行を申し立て、加害者や学校側の財産から損害賠償金を強制的に獲得できます。

  2. (2)刑事告訴

    犯罪に該当するいじめの被害に遭った場合は、検察官または司法警察員(警察官)といった捜査機関に対して刑事告訴をすることができます(刑事訴訟法第230条、第241条第1項)。

    刑事告訴を捜査機関が受理すると、捜査機関には捜査に着手する義務が生じます。その結果、いじめに関する捜査が行われ、加害者が刑事訴追される可能性が生じます。
    悪質ないじめについて、加害者の処罰を強く希望する場合には、警察官などに対する刑事告訴を検討することができます。

3、いじめ被害で訴える場合に考えておくべきこと

いじめの被害で訴える際には、以下の事柄について事前によく検討することが大切です。

  • ① 子どもの意見をよく聞く
  • ② 転校なども併せて検討する
  • ③ いじめの証拠を十分に確保する
  • ④ 長期戦になることを覚悟する


  1. (1)子どもの意見をよく聞く

    いじめ被害への対応については、子どもの意見をよく聞いて対応するのが大原則です。
    たとえばいじめの程度が深刻でないケースで、子ども自身で解決できそうであれば、訴えることは控えて子どもの力で解決することに期待するのも選択肢のひとつでしょう。

    しかし、子ども自身が「親に迷惑をかけたくない」などと考えて、なかなか助けを求めることができないケースもあることに注意が必要です。
    特にいじめの内容が悪質な場合や、子どもの様子がおかしい場合には、親が主導して対応する必要が生じる可能性もあります。

  2. (2)転校なども併せて検討する

    いじめについて加害者や学校側を訴える場合、学校に在籍し続けるのは子どもにとって負担になるケースが多いです。

    親としては、子どもとよく話し合ったうえで、状況によっては転校させることも併せて検討すべきです。転校を決めた場合には、民事訴訟などの準備と並行して、転校に必要な手続きについても調べておきましょう。

  3. (3)いじめの証拠を十分に確保する

    民事訴訟で損害賠償を命ずる判決を得るには、いじめの有力な証拠を提示できるかどうかがポイントになります。

    <いじめの証拠例>
    • いじめ現場を撮影した写真、映像
    • いじめ現場の音声が記録された録音データ
    • 医師の診断書(暴力を受けた場合など)
    • 本人が作成した日記
    • 友人の証言
    など

    実際に民事訴訟を提起する前に、いじめの証拠をできる限り豊富に集めましょう。

  4. (4)長期戦になることを覚悟する

    いじめの損害賠償請求に関する民事訴訟は、1年以上の長期に及ぶケースも少なくありません。
    民事訴訟が行われている間、転校を含めたさまざまな方法を検討して、子どもの学習環境や生活環境を整えるように努める必要があります。

    また、長期間にわたって粘り強く民事訴訟を戦うためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします

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4、いじめ被害に遭ったら弁護士に相談を

子どもがいじめの被害に遭い、加害者や学校側に対して損害賠償を請求する際には、弁護士へのご依頼をおすすめします。

弁護士は被害者の代理人として、いじめの証拠収集・示談交渉・民事訴訟・刑事告訴などの各対応を全面的にサポートいたします。また状況などに応じて、弁護士が表に立たずに、ご依頼者さまの後方支援という形で加害者や学校側とのやり取りをサポートすることも可能です。丁寧な事案の分析・検討に基づき、法的根拠にのっとって、加害者や学校側の責任を厳しく追及いたします。

弁護士によるいじめ問題解決の後方支援のイメージ
学校におけるいじめ被害にお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

学校でいじめの被害を受けたら、加害児童・生徒やその親、学校側に対する損害賠償請求を検討することができます。犯罪に当たるいじめを受けた場合は、加害児童・生徒について刑事告訴も検討すべきです。

ベリーベスト法律事務所は、いじめ被害を含む学校問題全般に関する相談窓口を設け、ご相談を随時受け付けております。
いじめ被害について、加害者や学校側に対する損害賠償を請求したいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立 2010年12月16日
連絡先 [代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-187-059
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL https://www.vbest.jp/
  • ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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