学校の管理下における熱中症は、小学校・中学校・高等学校等を合わせて毎年5000件程度発生しており、平成30年度には7000件を超えました。特に部活動が盛んに行われている中学生以上では、熱中症の発生件数が非常に多くなっています。
学校で子どもが熱中症にかかった場合、学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。適正額の損害賠償を獲得するためには、お早めに弁護士へご相談ください。
今回は、学校で発生した熱中症事故の損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
(出典:「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」p9(環境省・文部科学省))
学校現場における熱中症事故の防止に関して、学校側は「安全配慮義務」を負うと解されています。安全配慮義務に基づき、学校側は熱中症予防に必要な措置を講じ、児童・生徒の安全に配慮しなければなりません。
学校現場における事故防止につき、学校側は安全配慮義務を負います。
安全配慮義務とは、児童・生徒を危険から保護し、安全な学校生活を送れるように配慮すべき法的義務です。したがって、熱中症が起こり得る環境においては、その環境に応じた活動内容を設定することや、児童・生徒の体調に配慮し十分な水分補給・休憩を取ること、体調が悪くなった場合には直ちには必要な処置を取ることなどが求められます。
学校における熱中症事故について、学校側の安全配慮義務違反の有無は、以下の2つの基準によって判断されます。
学校側に対して熱中症事故の損害賠償を請求する際には、予見可能性と結果回避可能性の両方を立証する必要があります。
環境省と文部科学省は、共同で「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」を策定・公表しています。
同手引きでは、熱中症に関する基礎知識が解説されているほか、学校側が講ずべき熱中症の予防措置や対応のポイントなどが示されています。
学校側には、児童・生徒に対する安全配慮義務を果たす観点から、同手引きに従った予防措置や対応を行うことが求められます。
学校で子どもが熱中症になった場合には、学校側に対して損害賠償を請求できる場合があります。
損害賠償請求の相手方と法的根拠は、通っている学校が国立・公立学校であるか、または私立学校であるかによって異なります。
国立・公立学校における熱中症事故については、以下のいずれかに該当する場合に、設置者である国または公共団体(都道府県や市区町村など)が国家賠償責任を負います。
一方、国立・公立学校の教職員は、熱中症にかかった児童・生徒に対して損害賠償責任を負うことはありません(最高裁昭和30年4月19日判決)。
ただし、熱中症の発生について故意または重大な過失がある公務員に対しては、児童・生徒に対して国家賠償責任を負う国または公共団体が求償できます(同法第1条第2項)。
私立学校における熱中症事故について、教職員に故意または過失がある場合は、教職員が児童・生徒に対して不法行為責任を負います(民法第709条)。
さらに、教職員の選任・監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても熱中症の発生が避けられなかったときを除いて、学校の設置者(学校法人など)も使用者責任を負います(民法第715条)。
また、熱中症の発生が学校設備の設置・管理の瑕疵(かし)に起因する場合は、設置者が児童・生徒に対して工作物責任を負います(民法第717条第1項)。
参考
学校における熱中症事故が問題になった裁判例として、以下の2つを紹介します。
公立高校のテニス部員が練習中に熱中症にかかり、心肺停止に伴う低酸素脳症によって重度の障害が残った事案です。
熱中症にかかった生徒が練習していたのは日差しの強い時間帯で、さらに定期試験最終日明けの練習で、生徒には睡眠不足の可能性がある状態でした。加えて大阪高裁は、生徒本人はまじめな性格であったことも指摘しています。
大阪高裁は上記の事情を踏まえて、顧問教諭が練習内容の軽減や水分補給の指導など、生徒の健康状態に配慮した指示や指導を怠ったことを認定し、学校の設置者である県に対して2億3000万円余りの損害賠償を命じました。
私立高校のバスケットボール部員が熱中症にかかり、その後健忘の症状が生じた事案です。
大分地裁は、熱中症の危険性と予防対策の重要性は体育教育関係者の必須知識であることや、バスケットボールは走ることが基本となる、運動量の多い球技であり、特に夏は体育館内の温度が上昇するため、熱中症に対する配慮が必要となることを指摘しました。
また、生徒が倒れた当時の気温は38度であったところ、大分地裁は「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(財団法人日本体育協会が1994年に発行)を引用し、気温が35度以上となる場合には運動を中止すべきとされていることを指摘しました。
そのうえで大分地裁は、バスケットボール部監督について以下の注意義務およびその違反を認定しました。
結論として大分地裁は、学校の設置者である学校法人とバスケットボール部監督に対して、約360万円の損害賠償を連帯して支払うことを命じました。
子どもが学校で熱中症を発症したことにつき、学校側に対して損害賠償を請求する際には、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は、熱中症の発生状況を踏まえたうえで、学校側の損害賠償請求の成否や賠償金額などにつき、その見通しをアドバイスいたします。
損害賠償請求権の立証において、どのようなポイントが問題になるかについても丁寧に検討したうえで、その対策を十分に整えます。
学校側との交渉や裁判手続きについても、弁護士が代理人として全面的に対応いたします。熱中症事故に関する損害賠償請求は、お早めに弁護士までご相談ください。
参考
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子どもが学校で熱中症にかかって療養が必要になった場合や、何らかの障害が残った場合には、学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
請求の成否や損害賠償金額などについては、具体的な事情に応じて検討する必要があるので、弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、学校事故に関するご相談を随時受け付けております。熱中症などが発生した状況を丁寧に検討し、適正額の損害賠償を獲得できるように尽力いたします。
損害賠償請求に当たって実際に必要となる準備や手続きも、弁護士が全面的に代行いたします。特にストレスの大きい学校側との交渉や、訴訟など法的手続きへの対応についても、弁護士にお任せいただければ安心です。
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・子どもの治療に費用を要した方
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